〜 FEZ Erotic Lv.4 〜



「よぉし、一発入れたな? 叩いて良いよなっ?」
「うん、お願いっ」
 頷くと同時に、軽い牽制を浴びせたゴブリンからあっさり飛び退る。
 ――と、入れ替わりに。ゴブリンの背後から迫っていた一人の男性スカウトが、鋭い刃を振り上げた。
「アギィッ!?」
 驚きと怒りの叫び。
 不意打ちで頭に血を上らせたゴブリンは、マナのことを簡単に忘れてしまっている。
 がら空きな背中にアイスジャベリンを放つのは、実に簡単な作業だ。
 揮うのも昨日までのビギナーワンドではない。王国御用達のオフィシャルショップで扱われる、『錫杖』だ。放つ魔法の威力が違う。
 そして、彼女よりもよっぽど鍛えられた腕で瞬く間に命を削られた魔物には、そのもう一撃が致命打に充分なのだった。
 都合、たった魔法二発分の精神力。それだけがマナが一匹のゴブリンを仕留め、彼の隠し持っていた宝箱を入手するのに要したコストだった。
 にんまりと笑みがこぼれる。
(これなら、ぜんぜん楽勝じゃない♪)
 ゴブリンはまだ何頭も群れているが、以前は脅威そのものだった頭数の多さも、今の彼女には多いほどありがたい獲物たちにしか見えない。
 マナは頼もしい相棒にウインクを送ると、続けて次の獲物に取りかかった。

『手伝いはいらないかい?』
 首都ベインワッドからすぐ北の、ソルダッド遺跡。苦手なゴブリンのうようよするエリアを、やむを得ずおっかなびっくり探索していたマナに声を掛けてきたのが、彼だった。
 体つきは敏捷そうな、見るからに斥候向きの細身のシルエット。着込むのは、シックな茶色地仕立てながら翻る長い裾がいっそ気障にも見える、ストライダージャケット。だのに顎髭の手入れは手を抜いている、どこかだらしなさそうな顔。そして、皮の指ぬきグローブで左右に構えるのが、蟻の顎を模した二振りの短剣、アントリオン。
 彼は手練れだった。
 駆け出し兵士のマナにとっては危険地帯であるソルダッド遺跡も、既にアントリオンを使いこなすほどの腕前に達している彼には、自宅の庭先を行くのも同然。
 マナ一人なら引き返すしかなかったゴブリンの溜まり場も、彼の同行を得ることで安全に突破することが出来た。
 腕に見合う狩りをしようというのなら、本来ならもっと凶悪な魔物の潜むエリアを選ぶべきなのだ。
 だのにの上にしかも、彼はビクトリオン大陸の民ではなく、海を隔てた隣国エルソードの人間だった。
 何故と訝しげな表情を隠しもせずに問うた少女に、彼は無精ひげをさすりつつ、ビクトリオン産出の稀少鉱石、タンタル石が欲しいのだと答えた。
 タンタル石は高く売れる。お金が無くってねと、体裁悪そうに告白してきた男に、マナは同じ貧乏人のシンパシーを覚えてしまった。
 分かる、分かってしまうわ……! と。貧乏なればこそ、無理を押してこんな危険地帯に踏み込んでいたのだから。
 それでも、何かと仲の悪い隣国の兵士。警戒心は拭えぬと一定の距離を保とうとしていた彼女だったが、何度かの魔物たちとの戦いを楽勝にくぐり抜ける内、すっかり肩肘張るのも馬鹿らしくなっていた。
 それほどに彼のサポートは至れり尽くせりで、助かるという一言に尽きて、そして旨味があった。
 宝箱の権利は全て譲ってくれる。
 彼の加減した斬撃が魔物の体力をマナにも楽々とどめを刺せるレベルに削いでくれるお陰で、サクサクと狩りを進めて経験を積み、路銀を奪い取る事が出来た。
 本来ならば入り込めないほどの危険地帯の深くへも、一度のピンチもなく踏み込んでこれた。
 おかげで、である。
「よ〜し、よし、よぉ〜し。アクス・ヴェノモス、はけーん♪」
 ソルダッド遺跡南部の高台にお目当ての大蜘蛛を探し当てて、マナはご満悦だった。
「あれを倒して、で、卵を手に入れるってのがお嬢ちゃんの狙いなんだったな」
「そうなのよ」
 無精ひげの彼に彼女は説明した。
「私らの街の衛兵にナタンっていうおっちゃんがいるんだけど、このおっちゃんがね、色んなモンスターを倒した証拠と交換でお宝や賞金をくれるの」
「なるほどね。それでアクス・ヴェノモスの卵、ってわけかい」
「そゆこと。何でも、最高の武器をくれるっていうのよね。きっとそれってあれよ、うちの国特産最強斧、ヴリトラ!」
 高く売れるわ、と目をぎらつかせるマナはわりと切実だ。
 先の狩りの成果でもってと当て込んでいた買い物がまるっきり出来なかった上、アンと約束した錬金の秘法も入手せねばならない。
 思わぬ展開で、過ぎるくらい親しくなってしまった錬金術師少女は色々と彼女を心配して、昔使っていたという『錫杖』を貸してくれたり、戦場で効率よく成績を上げるコツなどをアドバイスしてくれたりと親身になってくれているが――。
 やはり、先立つものを稼がないことには、どうにもならない。
 武器は不相応なくらい良いものを使えているものの、後の装備は駆け出し向けのカジュアルシャツのまま、カジュアルスカートのまま、カジュアルブーツのままだ。
 とても戦争には参加できないし、かといって錬金の秘法の探索に出かけるには、兵士として経験不足がすぎる。
 お金が要るのだ。
 腕を磨くためにも。磨くために戦争に参加するにも。なによりまず、先に。
「ちまちま稼ぐしかないかな〜って、思ってたんだけどさ。腕っこきの用心棒もいることだし」
「ははっ、俺のことかよ」
「うん、あてにして良いんでしょ? でっかく稼ぎたいのよね」
「おーけぃ。任せておけって、ちょろいもんだな」
 低い背から見上げて窺うマナに、『親切だぜ、俺は』と彼は請け合った。
 ニカッと笑う精悍な顔は、確かに嘘をついているようにも思えないのだが。
「……いちお、聞くけど。あのボス蜘蛛と戦ってる最中に、一人だけハイドで隠れて置き去りにしたりなんて……しないよね?」
「しないしない、考えたこともない。ンなことやるくらいなら、今までずっとチャンスはあったわけだろ?」
 心外だなぁと、男は顎の無精髭を撫でた。それが彼の癖であるらしい。
「悪ふざけでお嬢ちゃんにモンスターけしかけるつもりだったってぇなら、ここまで面倒見てやったりはしないさ。もういくらなんでも時間掛けすぎだって」
「そ、そうよねー。あはっ、あははは」
 ぽろっと口を突いて出た、拭いきれなかった不安の最後の一欠片。
 いやいやいやと、誤魔化すように手を振って。気を悪くされては堪らないマナは『心配しとかなきゃいけないのは、それぐらいだったわけだしっ』と、口早に継いだ。
「一応ほら、敵同士なわけじゃない? 戦争中じゃないから、兵士同士で戦うのは御法度だけど」
「ま、たまにやるやついるしな。しかも、そういう真似するのに限って俺みたいな短剣職のスカウトが多いし」
「でしょ、でしょ? いや、私って駆け出しだから、先輩さんとかから頭に入れとけ〜って言われてるだけなんだけどねっ」
「いやいや、大事な知識だぜ、それは。良い先輩さんじゃねぇか」
 あっはっは、はっはっはと、ぎこちないくらい朗らかな笑いが期せずして重なった。
 そんなぎくしゃくとした空気を払うようにして。簡単な打ち合わせで示し合わせた二人は、周りに小型の蜘蛛を幾匹も従えて太い脚を蠢かせるアクス・ヴェノモスに躍りかかっていった。

「足止めるぞ? いいなっ」
「うんっ」
 確認をとった軽快な足捌きが、ストライダージャケットの長い裾を勢いよく翻す。
 逆手に握ったアントリオンは腰だめに。低い位置から素早く軸足を回して蹴りこまれた男の踵が、蜘蛛の胴を吹き飛ばした。
 ざわりと八本の脚にたたらを踏ませて。大蜘蛛はそのキックにたじろいだ次の瞬間、自身のそれとは異なる蜘蛛の糸に絡め取られていた。
 スカウトの兵士が会得する特殊スキル、レッグブレイクの効果だ。
 魔物の足取りを蜘蛛の巣そのままに捕らえる技を喰らい、アクス・ヴェノムはただの的と化す。
 回避もままならず、間合いの広いソーサレスと弓に持ち替えたスカウトへ効果的に攻め寄ることも出来ず、後はなぶり殺しだった。

「やった、やった〜ぁ♪ 楽勝、楽勝♪」
 大蜘蛛の遺骸から目当ての卵を手に入れ、マナは歓声を上げた。
 心地よい達成感を全身で表して、ぴょんぴょんと飛び跳ねる。兵士だソーサレスだといっていても、そこらの町娘と何も変わらない、少女らしい感情の発露だ。
「よしよし、念願のお宝ゲットってとこだな」
「うん、ありがとうねー。一人じゃ絶対――っと、ちょ〜っとだけ厳しかったかもしれないし。たしかに、ここまで結構かかっちゃった。時間、取らせちゃってごめんね」
「なぁに」
 マナの礼に、男は手をふってみせた。
「こっちも、丁度だ。間に合って良かったな、お嬢ちゃん」
「……うん? 丁度って?」
「ひよっこが随分背伸びして頑張ってたみたいだからなぁ。倒しきる前に目の前でこいつが消えたりしたら、さすがに可哀想ってもんだとひやひやだったぜ」
 大きな手のひらの上でくるくると弄ぶように回されていたアントリオンが、ぴたりと動きを止めていた。
 何気のない、自然な笑顔のままでマナの真正面に立つ。
「狩りの成果がこっちだけってのも、フェアじゃないからな。だろ? 相棒」
 なにかを撒く仕草で不意に掲げられた、男の腕。
 『――え?』と反応する余裕もあればこそ、不意に視界を覆った黒い闇に、マナは完全に思考能力を奪われてしまっていた。
「えっ、ええっ、なにっ!?」
 何が何だか、咄嗟には分からない。そんなパニック状態に陥った彼女に『落とすなよ、卵』とからかい声が掛けられて、続いて波間の小舟のように翻弄する衝撃が、左右に彼女を打ちのめした。
「きゃっ、ッアア」
 蹴られた? 斬りつけられた!? ただ痛いばかりで、それも突然で、何をされたのかもすぐには理解できなかった。
 暗闇の中では何ひとつ分からない。
 落とすなよと言われたから、卵だけはしっかりと手に包んで。地面に転がされても割るまいと、マナは必死に守り続けた。
「ヴォイドダークネスは初めてか」
「なにっ、なんでっ? わ、わたし……攻撃されたのっ!?」
 戦争中でもないのに、そんなこと出来るはずが。遅まきながらに裏切りを悟ったマナは、平時の絶対の法である、兵士同士の不戦協約を叫んだが、返されたのはいかにも馬鹿にした指摘だった。
「気付かなかったのか?」
 ようやく晴れだした暗闇に浮かび上がったにやけ顔が、少女を見下ろしている。
「もうここは戦場だよ」
「う、うそっ」
「だいたいな、海沿いでもないネツの内地に俺みたいなエルの兵士が居る時点でおかしいだろ?」
 本土攻めだよ、と。
「本隊が宣戦布告に動いてたんだが、お嬢ちゃん全然気付いてなかったからなぁ。いつ気付いてくれるかと楽しみにしてたのにさ。それどころか、おあつらえ向きにこんな外れまで連れてきてくれるもんだから、吹き出すのを堪えるのに苦労したぜ」
「だ、騙してたのっ!?」
「ばぁ〜か、敵国の兵士同士で騙すも何も無いだろ。いくら駆け出しでも、そんなとぼけたこと言ってるのは恥ずかしいな」
 地面に倒れ伏す少女にのし掛かりつつ、敵国のスカウトは嗤った。
「いやっ、何するつもりなのよっ」
 言いながらも、マナも流石に気付いている。男は人気の全くない僻地をいいことに、ここで自分をレイプしようというのだ。
 たしかに戦場となれば兵士同士の戦い、殺し合いは解禁される。腕の差はここまででたっぷり見せつけられていた。まともにやって、勝てる相手ではない。
 しかし、逃げなければ。
「放し、てっ。バカぁ」
 大事に卵を抱えた反対で、錫杖に意志を込める。
 抑え込まれたなら、凍気放出のフリージングウェイブで吹き飛ばすしかない。その隙になんとか――。
 だが、
「な、なんでぇ〜?」
 マナはやっと気付いた。
 高位魔法発動のため、ブーストとして唱えていた詠唱の効果がすっかり消え失せてしまっている。
 補助魔法たる光のリングを身にまとっていないでは、ウェイブどころかアイスジャベリンすら発動できない。それどころか、四苦八苦して詠唱を再びと試みる端から、力の源泉たる精神力が次々と抜け出していく感覚があった。
「呪文が……!?」
 青ざめて喘ぐマナを完全に組み敷き、シャツの胸元を引き千切る男がまた嗤う。
 『パワーブレイク』、詠唱の効果を打ち砕き、精神力の充実を阻害するソーサラー職にとってはまさに忌々しい限りのスカウトスキルの名は、さすがの新米シーサラーとて承知している。
 嫌味ったらしく告げたパワーブレイクの技名に続いて、マナの乳房を我が物顔に取り出していた男は、やわらかな膨らみを揉み確かめる傍らで『そして』と、短剣の片割れを振り上げていた。
「これがアームブレイク、な」
「ああっ」
 一瞬にして、頼みの錫杖が吹き飛ばされた。
 もはやマナは徒手空拳。
 呪文が武器のソーサラーだ。いくらか鍛えてはあっても少女の細腕では、兵士暮らしを続けた男の暴力に抗おうなど、とてもとても。
(あ、ああっ、これじゃ……。なっ、なんとか逃げ……っッ!?)
 地面を掻きむしるようにして、押し倒された体を逃がす取っかかりを求めたマナは、上手く動かない己が腕になんでと目をやって、愕然と顔を歪ませた。
 今見たばかりの蜘蛛の糸。それが自分の手足に絡み付いているのを見出してしまえば、既に詰んでいたのだと悟らざるをえない。
「さっき、目つぶしされてた間に……!」
「ご明察。と言うか、こっちはスカウトなんだぜ? 天敵ってのはこういうもんだって、知っとけよ」
 ここまで全部で、一度に叩き込めばつまり通称『ブレイクダンス』。
 精神力を削ぎ、武器を奪い、足を殺す。抵抗させない、逃がしもしない、何一つさせてやらない。短剣を握ったスカウトの戦い方だった。



◆ ◆ ◆

「……うっ、っッ、ううっ、うう〜」
 呻いて、顔を背けようとする。けれども、自由になるのが殆どその首だけでは、突き付けられた嫌悪の根源からマナが逃げられるはずがない。
 ぐいと頬に迫った男の性器が、これ以上ない至近距離で彼女の唇を脅かす。
 屈服させられたマナは今、剥き出しにされた左右の乳房同士をごつごつとした手付きに揉み上げられるのと同時に、その谷間にエルソード兵のペニスを挟まされていた。
 マナの大事な両の乳房を、浅ましい性欲を振り立てたペニスをマッサージする道具に使われているのだ。
 笑顔で見事に裏切ってくれたその男は『パイズリ』などと卑猥な名で呼んで、またマナを物知らずだと馬鹿にしていたが、
(こんな、技だかなんだか知らないけど――知ってて堪るもんですか!)
 憎まれ口の一つも叩きたいものの、それをしてはすかさず開いた唇を狙う心算なのだろう。
 若々しい張りの輪郭をぐいぐいと変形させられる谷間には、はみ出した男の亀頭が嫌になるほど充実しているのが窺える。
 必死に歯を食いしばって、耐えるしかなかった。
「おやおや」
 渋面の少女を絶対的立場で従えつつも、ささやかな反抗を男はあえて咎めずにいる。
 ゴブリンやブラッドウルフたちの陵辱のように、少しでも気に入らなければ脅しつける、というのとは違うが。けれどもどうせ、こいつも最後にはさんざん殴って言うことを聞かせるつもりなんだろうと、マナは捨て鉢に覚悟していた。
「なんだ、お嬢ちゃん。見かけによらずこんな立派なもんぶら下げてんのにさ、ガキみたいな膨れっ面してないで楽しまないと損だぜ? どうせなら」
 そんな態度さえ面白がっていると知れる声色が腹立たしい。こんな本性も見抜けずに、なんで私は一度でもこいつを頼もしいなんて思ってしまったのか。
 男は、指ぬきのグローブ越しに、しっかりと両手それぞれに握りしめた豊かな胸をいじくって、『一人前なのは、このオッパイだけかな』と目をにやつかせる。
「穴蔵暮らしだからかねぇ、ネツの女は肌が白いのが良いんだが、お前さんはわりと健康的だな。……男はもう知ってるのか?」
 いやらしく蠢かせる指が沈みこむそうになるほどやわらかな乳房に向けて、嬉しくもない賛嘆を交えつつ訊いてくる。
 マナは答えなかった。答えなかったがしかし、恥辱に顔中が熱くなった。
 肌を許したはじめて人間の異性というものがこいつかと自覚すると、自分の男運の無さ――色恋事についてのとことんの不幸を思わざるをえない。
(兵士になっちゃったのが……間違いだったっての?)
 弱気にもなろう。兵士になった初日こそが、マナが悲惨なゴブリン輪姦で処女を喪った日だったのだから。
 挙げ句の果てに狼相手に獣姦を経験し、この間には同性とベッドを共にするまでに至った。自分にはレズの気なんて無いと思っていたのに。
 だが少なくとも、アンの愛撫は優しく、そして思いやりが込められていた。
(こんな卑怯なやつに比べたら……!)
 胸を跨がれた下から見上げて、憎々しげに睨む。
「なによ、下手くそ。アンタなんて、私が相手してあげた男共の中でも最っ低ぇ〜の下手っぴだわ。楽しめるわけないでしょ」
 ぺっと唾を飛ばしてやる。
 精々の強がりの証は、童顔からは思いもよらず熟れ実っていた果実に細められていた目を、すうっと乾かせるほどの効果には届いていたようだった。
「へへぇ……?」
 ふざけた調子はそのままに、声色の質が変わる。
 無精髭の頬を手の甲で拭い、緊張の息遣いに上下する裸の胸にペニスを置いてそのまま、暫し男は言葉を漏らさなかった。
 抗えない者と、殺すことも出来る者の間に張り詰めた緊迫感は、マナがかつて夢想した戦場の空気に近い。
 たとえ、半裸に近く剥かれたか弱い女として、股間を硬くさせたレイプ魔にのし掛かられているに過ぎない現実だとしても。それにしても、何度もいやらしく陵辱されるくらいなら、戦場の兵士に相応しく刃物を突き立ててくれれば良いとさえ思えた。
「やりなさいよ、エルソードの短カス野郎なんかに殺されたって、全然怖くないんだから!」
 再びの挑発を吐く。
 男は明らかに機嫌を損ねているのだから、そのままレイプしてやろうというお遊び気分なんか無くしてしまえとばかりに。
 そうして男が胸を放し、マナの細い首に手を伸してきたときには、蛮勇に類されるべき試みを成功させた、やぶれかぶれな勝利感さえ錯覚した。
 殺されるかもしれないが、まだマシだ。こいつの、穢らわしい『つもり』だけは台無しにしてやった、と。
 果たして、翳されてきた手には、おもちゃを弄ぶのとは違う種類の害意が漲っていた。
 歓迎すべき殺意以外の何者にも思えない。
 喉を過ぎて顔を覆うようにされ、そのまま頭を吹き飛ばしでもされるのかと――結局は虚勢も限界に引きつった、次の瞬間、視界がまた黒く塗り潰された。
「……っッ!?」
 一面の闇。ヴォイドダークネス。
「なんのつもりよっ」
 完全に抵抗力を奪ったマウントポジションにのし掛かっていて、今更なんで隙を作る必要があるのか?
 馬鹿にして……!
 組み敷かれた下で無意味にもがくマナに、その無様さの分だけ余裕を取り戻したかの嘲笑が浴びせられた。
「ガキが、いっちょ前に下手くそなんて口を大人に向かってききやがるからな。とことん教え込んでやるって、決めたぜ?」
「な、なにをよ……」
「短スカ様なりの、ヤり方ってやつをさ」
 ――悦がるくらいは許しといてやるぜ。そう告げられて、マナの悪夢が始まった。



◆ ◆ ◆

「うぁ……ぁ、ぁ、ああっ……」
 熱にうかされ、身をよじる。
 既に、全身が生汗にまみれていた。
「どうだ? 覚悟が出来ない、どこをヤられるか分からないってのは、堪らないだろう?」
 何度も何度も、効果が切れそうになる度にヴォイドをかけ直された間、執拗に両胸を揉み続けていた皮グローブにも、じっとりと汗が染みこんでいる。
 固い皮手袋に何重にも手形を刻まれ、マナのまばゆい双乳は痛々しい赤に染まっていたが、覚えているのは最早苦痛ではない。
 寒さに見舞われているわけでもないのに、明白に別の理由によって胸の先端がツンと、言い訳の出来ない硬さに変じてしまっているのだから。
 丁寧すぎる按摩師に揉んで貰ったのとそう変わらない火照り、体温の上昇。そこには、乳房の芯からほじり出された官能が滲んでいた。
「答えろって」
「あっ、ああっ」
 スカートをまくられていた股間へ突然に、指らしきものが突き入れられる。
 下着すらとうに無く、情けなくぬかるんだ秘部に直接加えられた甘美な一撃は、文字通りの不意打ちとなってマナを仰け反らせた。
 なよなよと剥き出しの肩をよじらせて、哀れっぽい啜り泣きを上げねばならなかった。
 はっ、はっ、と鋭い性感に脳裏を飽和させられた息苦しさが、溺れかけるのと同じ喘ぎをマナに強いる。
 その無防備になった唇を襲うもの。それさえ、突然に舌を押して押し入って来た段で、備えのない対応を迫られるのだ。
 男が胸に挟ませているペニスなのか、それとも……。
 噛み千切ってやるという反撃の目論見は、幾度か噛みしめてみてただの短剣の柄だったと知り、嗤われるだけに終った。
『ハズレだ』
 そう嘲笑うと、今度は逆に閉じることが出来なくなった隙間に、柄の横から突き付けてきた本物のペニスで、男は無慈悲な仕置きを加えてきた。
『飲めよ。飲むしかないよなぁ? 目一杯咥えちまってるんじゃ、閉じるのも吐き出すのもタイヘンだろう? 自業自得さ』
 と、小便を口の中に注ぎ込まれたなどというのは、ゴブリンの精液を顔に掛けられるよりも屈辱的な経験だった。
 汚れに濡れた顔を乱暴に拭ったものも、下腹に薄く芽吹いた草むらを暴かれる時、奪われたばかりの彼女の下着だ。
 こんな酷い真似を思い付くのは、なるほど人間だけだろう。
 魔物たちは自分の性欲を満足させるのに愚直なほどストレートなだけだから、そうして只々相手に汚辱感だけを与えてやろう、誇りを汚泥にまみれさせてやろうというサディスティックな発想を持ったりはしない。
 人間こそが、どんな魔物よりもおぞましい邪悪たりえるのだ。
 マナはそれを思い知らされた。
「んぁぁ……ぁ、はむっ、むっ、むふぅ……」
 故に、こうしてペニスが突き付けられてきたなら、首を起こして舌を出し、奉仕するしかないのである。
 視界が閉ざされている分鋭さを増した鼻にむぅっと異臭を漂わせる牡槍の器官に、うやうやしく小さな舌を這わせて。ぴちゃぴちゃと苦く吹き出す汁を、舐め取って仕えるしかないのである。
 男はやわらかい双乳に剛直の幹をしごかせる他、大きく腰をピストンさせたタイミングには、亀頭にじゅくじゅく泡吹く先走りの液を舐め取れと教え込んでいた。
 物知らずの駆け出しお嬢ちゃんに、首都のトレーナーじゃ教えてくれないような戦場のルールを伝授してやるよと言って。それで、マナの拙い舌の感触を、ペニスの先で愉しんでいた。
 その間も、童顔とは裏腹に手のひらに余る量感が備わっていた胸の隆起を、ぐにぐにと揉み続け、頂点の尖りを乳輪ごと転がし続ける。
 すでに、マナの乳房は汗の他、男が漏らした先走りや白濁、そして彼女自身の唾液とに、のど元までドロドロにぬめってしまっていた。
「お前はなんだ? うん?」
「わ、わたひは……」
 乳房にしごき上げるペニスの昂ぶりを気配だけで捉えて、大きく口を開けて待つところに浴びせられたさっきの射精の名残り。べったりと口元を汚すザーメンミルクが絡まった舌を、口舌奉仕で呂律も怪しく疲れているのに必死に動かして。少女は覚えさせられた惨めな口上を繰り返す。
「わたひは、むぁ、負け犬です。強い強いエルソードのスカウト様に身の程知らずに逆らおうとして……うっ、ううっ、情けなく打ち負かされた、ば、馬鹿な牝豚です」
「負け犬の牝豚がすべきことはなんだ?」
「わたしがふべっ、っぐ、ふべきなのは……」
 マナは泣いていた。
 泣きながら、それでも続けるしか無かった。
「まけっ、負け犬らしくひれ伏して、スカウト様のお慈悲にすがることです。牝豚のお、オマンコで……スカウト様に罪滅ぼしをすることですぅっ。うっ、ううっ……」
 光を奪われた虚ろな瞳が、屈辱感に真っ赤に腫れつつ泣いて媚びる。
 自分の精液に汚れた少女の可愛らしい顔が、くちゃくちゃに歪んで言いなりになっている。
 それがこの上なく男の嗜虐性を満足させるのだ。
 『よし、飲め』と。うら若いソーサラー少女の乳房を堪能して噴き上げられた迸りを、生温く口の中いっぱいに溜め込んで、許しを得るまでは飲み込むことも出来ずにいた精液に、やっとで喉を鳴らしていく。
 吐き出すなど、とんでもないことだった。
 しかも、最低最悪の屈辱感に胸を押しつぶされていても、散々に時間を掛けて弄り回された躰は燃え上がってしまっている。
 裸の胸の上に跨られて、大切な将来の母性をこともあろうにレイプ魔のペニスに奉仕する道具とされていた間も、不意を突いてはいたずらされていた下半身だ。
 ズポズポ、ズポズポときついラヴィアの隙間に指を使われてしまっている内、少女のもう一つの唇さえ、馬鹿のような喜蜜を垂れ流してしまっていた。
「おまけにこのお嬢ちゃんときたら、仕置きされて悦んでやがるたぁ、とんだマゾ豚だったみたいだな」
 淫猥なミルク飲み奴隷にあつらえられた彼女の、自分でもどうにもならない興奮の様子から見破って、男が嘲笑する。
 神聖であるべき処女喪失の刻から、マナの性をおぞましく塗り潰してきた被虐の汚辱が植え付けていた、悲しい性癖だった。
 可憐な桜唇を不潔な陰茎からの排泄物で便所代わりに汚されてしまっていても、惨めに犯される自分を自覚すれば自覚するほどに秘唇は潤い、『牡』をスムーズに受け容れる準備が進んでしまうのだ。
 なればこそ、
「あ、はぁぁンンん――!!」
 太腿を抱え上げられて挿入された瞬間の叫びは、悩ましい喜悦に濡れきっていた。
「ダ……ダメッ、あんッ。あんッ、あんッ。ああンッッ」
 ぐん、ぐんと男の腰が打ち付けられる。
 ただでさえ肩の露わなトレンドシャツが文字通り千切られはだけられて、こぼれだした二つの桃果実が、荒々しい腰遣いに合わせて上下に揺さぶられる。先端に、完成されたセックスを悦ぶ乳首をコリコリとしこらせて。
「ふぅん。こりゃあんまり使い込んでもいないみたいなのに、随分とヌルヌルにして咥えやがるじゃないか」
 とんだ阿婆擦れだぜ、と侮辱されてもマナは言い返せなかった。
 未だマナの視界は闇に閉ざされている。トロンと虚ろに蕩かされて、あらぬそこらに首ごと揺さぶられるまま見渡すのは、躰が伝えてくる淫らな繋がり合いの感触だけ。
「やだっ、やだよぉ……」
 睨み付けてやりたい男の顔も見えず、なにか逆転の機会を探して気を紛らわせることも叶わない。
 そんな状態故に、
(おちんちん……男の人の、おちんちん……)
 入っちゃってる、ぶっすぅって挿入ってきちゃってると、そればかりが意識に迫り来る。
 膣を割り広げて押し入ってきた肉柱の硬さ、ゴツゴツとしたかたち。他には何も無かった。
 幼い鼻先から『あぅん、うフゥンンん……』と、媚びるような悶えを漏らしてしまう。
 地面を掻きむしる指先は、奪われた錫杖を探しもせずにただ下半身をグズグズを爛れさせる結合感に耐えているばかりものだ。
 男の体重を一点に掛けられた股ぐらの中心が恥ずかしく熱く、濡らしてやがると言われればその通りだと。暗闇の脳裏に数少なく残されている中に、お漏らしをしてしまったのと似たびしょびしょの感触が仲間入りを果たす。
 疼いている。
 自分で分かるほどに――いや、男がそう告げたから余計意識してしまうのか――愛液を垂れ流してしまっている。
「そらっ、そらっ。ネツの牝ガキが、まだ毛も生え揃わないガキマンコで、今までどれぐらい咥え込みやがった?」
「し、知らないっ、知らないぃぃッ。あっ、ああう!」
「生意気なクチを叩くなよ。お前なんかにゃ勿体ない、ベテランのセックスってやつを教えてやってるのに。なんだその口のきき方は、ああん?」
 灼け付く膣壁に『そらっ』と、カリの張った怒張が抉り抜きをめり込ませる。
 魔物の無理矢理なだけの交尾を知ったばかりとは違う。アンという同性の愛人との爛れた密会を重ねた少女の媚肉は、開発された膣感覚に好物と化した杭打ちをくらい、びりびりに痺れて歓喜を上げているのだ。
 重く子宮口に届くピストン。エラの張ったカリ首は、引き返す折には穢れのないバージンピンクを保つ花びら粘膜を、ずりゅずりゅと引きずり出していく。
「いひっ、い、いぁはぅううう……!」
 襞の一枚一枚の内に滲んでいた蜜潤滑を、快美な摩擦と共にかき出していくのである。
 男が一度腰を引く都度に、ヘアもまばらでツルツルとしたマナの股の間には、夥しいぬめりが溢れ出す。
 少女の内腿は、べったりと濡れてしまっていた。男の、履いたまま前を開けるに留めていたストライダーボトムにも、移った染みが広がっていた。
「ああっ、あはっ、あっ、い、いいぃッ、いいよぉ……!」
 マナはただただ汗まみれの身をよじらせて、悦がり啼いた。
 もはやプライドも意地もなく、心底に骨抜きにされるかのエクスタシーに乱打される、甘美な拷問だった。
 男はそれからもしきりにマナの感じやすさを嘲り、少女を淫らに開花させた性体験これまでを聞き出そうとネチネチいたぶったが、
(それだけっ……それだけは、ぁ、ああああ……!)
 汚らしいゴブリンたちに、しかもどの一匹に与えたのかも分からない輪姦で処女を無くし、そして忘我のセックスは狼相手の獣姦で覚えたなどとは、とても口にできたものではなかった。
 マナ自身、身の上に起きた事象をなぞり捉えてはいても、意味するところ深くまでを理解しているわけではない。
 あくまでも『気持ちの良いセックス』を覚えたのは同性の愛人アンとの情交でだと考え、それすら口外し難いと恥じているのである。
 しかし、マナの性体験の導入に深い爪痕を残したゴブリン、ブラッドウルフとの屈辱的な体験こそが、彼女の性癖を決定づけていたというのが真実であった。

「ガキがっ、キュウキュウ締め付けやがって……てめぇだってヨガりまくって、嬉しいんだろ? え?」
「ちひゃっ、ひゃっ、ちひゃううう〜。ちがぅ、の、ぉぉぉ……!」
 自覚せず、愛蜜にべったりと濡れた内腿が男の腰を求めてしまう。しっかりと両脚で絡めるように腰を捕まえて、深く深く繋がったままにしようと貪欲さを見せてしまう。
 細首を健気に捩らせて、あんあんと喘ぎを零す。
 マナの見せる痴態は彼女の強気さならうそぶいただろうという、擬態のものではなかった。止めようもなく官能の極みへ近付いていくのを感じる、真性のものだった。
(こ、こんなに……い、イイなんて……!)

 ――それはアンとのセックスと比べてすら?
 唯一、倒錯した同性愛であることへの背徳性に悩みながら、しかし素直に心地よかったと振り返ることの出来るセックス。アンとの行為を、思わず比較対象にたぐり寄せて考えてしまう。
「やらぁっ、そんな……そんなのありえ……っひゃ、ひゃははぅ!? ッ、それっ、深いぃぃぃ」
 ぐじゅ、と子宮口を痛打する突き込み。
 男に絡まろうとする脚を逆に捕まえられ、挿入される角度を変えた深さを追求する――恥ずかしいV字開脚を強いられつつのピストンへの移行が、アンの悩乱をいや増しにさせる。
 甘美な性愛の波濤に振り回される意識はそれでも、溺れつつある浅ましい本能が、睦み事を囁き交わした情人とのセックスをレイプ魔のそれと同じ次元に置いて比較しようとするのをやめさせようとしていたが、けれどもそれも限界なのだった。
「あふっ、ふぁっ、ふぁぁぁっ」
 全身をのたうたせ、ばらばらに暴れる乳房のそこらから生汗が飛び散っていく。
 口元からのだらしない涎も同様にで、さらにその喉が振り絞っている嬌声の量ときたら、夥しい限り。

 どうして? とそればかりに戸惑う。
 どうしてこんなに、気持ち良くなってしまっているのだろう?
 どうしてこんなに、おかしくなりかけているのを我慢せねばならないのだろう……?
 
 意識の表層に交互に浮かび上がろうとする思考は、マナの相反する心理のもたらすものでもある。
 今まで通りの自分のまま、兵士として強くなっていこうとするマナの自意識。そして、汚泥に塗れた現実に押しつぶされて変貌しつつある肉体に、より明確に引き摺られつつある、弱さ。
 二つの間のせめぎ合いでもあるのだった。
(……あ、ああ、あれっ? わたし、なに () () () () () () って……)
 ふっと我に返って、耐えようとする理由すら見失いかけた現状に、震え上がる。
 薄々と、無意識の領域では悟っているのだから。素直に快楽を快楽であると認め、男のくれる肉柱の逞しさに降伏してしまえば楽になれると理解しているのだから。
 いっそ苦しいほどに悩み、翻弄されるのは、結局は比べてしまって――アンの指より、こいつのアレにお腹の中えぐられる方が、と答えを出し出しかけては否定し、否定しかけ、やはり最後には認めざるをえなくなる、この酷い感じぶりというものだった。我が事ながらただごとならぬ、悦がりっぷりというものだった。
「分かってきたぜ、お嬢ちゃんの好みってやつがさ。ここだろ?」
「あっ、ああっ、だ、だめっ」
「言ってもまぁ、ずいぶんと分かりやすいエロ顔になってるじゃないか。どうだ、俺のこいつで……天井こそいでやると――」
「ひゃふっ、ふぁっ、ふぁぁ! ふぁぁぁぁ……ッッ!!」
 ジュッ、ジュプッと音がして、愛液がぼたぼたと地面に跳ねた。
 さらに男の激しすぎる腰使いに、お尻と腰の打ち合う音が、辺りに大きく響き始める。
 乳首の先もビンビンにしこりきっている。
 アンなどはマナを愛撫してやりながら、しきりにその桜色乳首をそそり立たせてしまう分かりやすさ、感じやすさを、からかったものだ。
 ゆえに、己の胸にコリコリとした充血が起こっているのを自覚させられるのは、マナにとっての手ひどい事実宣告と化していた。
 そして今まさに、男のざらつく指の腹、または指と指の狭間による挟み付けが、くじける寸前のソーサラー少女の乳首を好きに転がして遊んでいる。
 まるで晴れる気配もなく重ね掛けされているヴォイドダークネスのせいで、視界を奪われているのが余計に致命的だ。
 つまみ上げられた時から、乳房全体を揉み遊ばれる間中、常に突き転がされ、圧し潰されている乳首の感覚は、電流のように痺れてしまう官能として、存在感も巨大に盲目の眼前へ鎮座しっ放し。
 つまりは、マナは否定できなくなっていたのだった。
(こ、こんなに……感じさせられ――)
 そしてまた、舌を突き出しての絶叫に喘ぐ。
 途切れ途切れ。繰り返させる途絶と、高波にさらわれた頂点でのホワイトアウト。
 思考する力、それ自体が薄れ、消え、ただただ翻弄され、一時としてもうまともに考える余裕が無くなっているマナが、びくびくと背を痙攣させつつやっと辿り着いた現実認識、
「も、ももう……だめっ。わたっ、わたひぃぃ……ぃ、感じひゃっ、かんじひゃって、ふぅぅぅ〜ッッ」
 それはつまるところ、客観的にはなにを今更の、追認でしかなかった。
 ――被虐こそが、最も深い快楽の底へ、マナを突き落とす。
 嫌がれば嫌がるほど、彼女が望むわけがない最悪の陵辱の中にあってこそ、余計にその躰はマゾヒスティックな悦楽を得てしまう。
 そんな、救いようのない性癖。理解してしまえる程度の判断材料は、レイプ一色だった合間にアンとの甘い一時が挟まれただけに尚更明確に揃ってしまっていて。なんて酷いと自嘲に項垂れはしても、一度もう自覚してしまったなら、泣いて認めるしかないマナなのだった。



◆ ◆ ◆

「――ッ、ッハ、カハッ、ハッ……! はぁぁぁ……ッッ」
「またイキやがったか……。どうだ、ありがたさってもんが分かったろう? お嬢ちゃんみたいなひよっこが、俺らベテランから手取り足取りこうやってアドバイスを貰えるってのは……ははっ、滅多にないくらいのラッキーなんだよ」
「ふぁっ……あっ……あっ……」
「普通、部隊の後輩でもないやつに、いちいち構ってやることなんて無いんだからな」
 既に一片の抵抗力もなく、ぐったりと力が抜けきってお人形さん状態のマナに『嬉しいだろう?』と。勝手なことを吐く男は、もう返事が返ってこようが来まいがどうでも良いのである。
 この卑劣なレイプ魔にとっては、こうやって満足行くまで犯してやった獲物たちというのが、最後には呪い言はおろか、泣く余力さえ絞り出せぬボロ切れと成り果てるのは、見慣れた常というものであったのだから。
 犬か何かのように従わせ、傲慢な言葉に服従を返させるのも楽しみの内だが、最終的には自分がだ腰を振ることにのみ没入していく。
 女の躰を使い、その膣を使用してはいても、オナニーとなにも変わらない。
 付き合わされた犠牲者たちが何度逝ったか、どれだけのアクメ地獄にのたうっているかは、最終的にはどうでもいいことなのだった。
「ふぁあ!」
 マナは体を跳ね上げた。
 ―― ドクン!
 そして突き上げられた股の間から、仰臥のマナを二つ折りに畳むように両腿を抑え込まれつつ、溜めに溜められていた多くの精へと新たな追加分が注ぎ込まれる。
「ふぐぅ……ふぅん……うん……ああ……」
 彼女の股ぐら、肉蛇をぶち込まれ割り広げられた結合部から、飲み干しきれなかった余りが逆流と共にびちゃにちゃとこぼれ落ちた。
(ああ……)
 愛液と精液のまじり合わさった大量のものが、水面に音を立てて落ち、跳ね上がる。
 そして――。
「う、ぁ、あ……」
 うん……と、彼女は身をよじった。
 もう、幼さの残るその端正な顔だちに、苦悶に類するものは残ってはいなかった。
 全てが洗い流されたような茫洋とした白痴と、既に光を取り戻したことさえ無関係な虚ろさに弛緩する眼差し。ただそれだけ。
「おふ、ふ、ふぅっ」
 ぶるぶると腰を震わせ、最後の一滴までを注ぎ込んだ男は、抜け殻となった彼女を気に掛ける様子もなく一人だけ始末を済ませて、立ち上がった。
「今日の本土攻めもそろそろ頃合いか。ま、久々に活きの良いネツ女も堪能できたし、次はホル民の娘でも食いに行くかねぇ……」
 一顧だにしない足取りで立ち去ろうとして、ふと、
「そういやぁ……」
 さんざん遊んだ後に、まだ振り向くような興味が残っていたのは珍しい部類だが、それも気まぐれと同じ程度。
 軽く思い付いた最後のお遊び道具を、巡らせた視線の先に見付けて、男はにやにやと拾い上げた。
「そら、お嬢ちゃん。せっかくのお宝だぜ? なくしたりしないように、大事に咥え込んどかなくちゃなぁ……?」
 屈み込んでひとしきり手元を動かし、最後にじゃあなと言い残して去っていく。
 残されたのは、陵辱された姿を無惨に草むらに転がすマナと、その白濁まみれの股の間に半ば程まで埋め込まれたアクス・ヴェノムの卵だけだった。



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Remarks:ぶっちゃけイメージは加持リョウジ。