〜 FEZ Erotic Lv.3 〜
ブラッドウルフを倒し、意気揚々ベインワットに引き上げてきたマナだったが、依然として財布も薄く、装備も安っぽい初心者向け一式から変わらないままでいた。
思い描いていたように豪遊としゃれ込もうにも、その前段階で躓いていたのである。
要するに、彼女的に誇らしい戦果であったはずの野獣の血の換金に、ことごとく失敗していたのだ。
「ううっ。まさか、20ゴールドしか払えないよだなんて言われても……」
まず、高価買取り確実だと聞いていた錬金術師が見付からない。ならばと持ち込んだ道具屋では二束三文の扱い。魔物退治の依頼を取り扱うという衛兵に街で会ったついで、話を聞いて貰ってもみたのだが、ナタンという彼には『ファントムウルフならともかく、ブラッドウルフ程度で』と笑われてしまった。
しょぼくれて<黄金のほったて小屋>で腐っていた数日。そろそろ宿屋の女将、ジュンの白い目が痛く感じられていたその午後、唐突にマナは探していた錬金術師に出くわしたのだった。
「あ、あなたが……ほんとうに?」
「なんだアンタ、オレに文句があるってのか?」
「……や、だって……」
柄の悪い目付きで『ああん?』とガンを飛ばしてくる彼女は、アンと名乗った。
ショートボブにまとめた赤い髪が実に似合っているそのまま、攻撃的な性格をしているご様子。だが、錬金術師なのだという。
研究者をやっているよりよっぽど兵士向きなんじゃないかと思う気立ては置いておくにしても、
「そ、そそそ、そのっ、だったらなんでメイドさんの格好なんてしてるのよ〜!?」
まるでそれっぽくない。これならよっぽど、黒衣のローブを好んでいるジュンさんの方がらしいじゃないのよと。マナは、やたらとイメージからずれていた錬金術師像に、探し回った数日間の無駄骨ぶりを思い、うなだれた。
「まさか、宿屋のすぐそばにいただなんて……」
「格好なんてどうだって良いだろ? アンタ、舐めてくれてるみたいだけどこの服、これで金出しゃ着れるような見てくれだけのとはワケが違うんだからな」
「ううっ、仰るとおりです」
『馬鹿にすんなよな』と言って不機嫌そうに鼻を鳴らしたアンは、よく見れば微かに頬を染めていた。
確かに彼女の着込むメイデン服は、最高位レベルのベテラン兵士でないとまともに入手できないレア物である上、買おうにも値段も目が飛び出るほど高価だったはずだ。つまり、そんな服を普段着にしているらしいアンは、見かけによらず腕の立つ兵士、いやさ錬金術師なのだろう。
とはいえ、
(オレ、なんて言ってるわりに少女趣味なんだ……)
目は口ほどにモノを言い、という。うっかり生暖かい――微笑ましい感想をもらしそうになったマナは、また目付きを険しくしかけたアンに慌てて首を振って見せた。
「ななっ、何でもないよ! うん、ほんと、アンって私と同じくらいの歳に見えるのに、凄いのねってさ。はは、あはははは……」
ただでさえファーストインプレッションが宜しくなかったの出会いなのに、これ以上機嫌を損ねてはかなわない。必死に愛想笑いを浮かべるマナを胡乱げに眺めて、呆れた風にため息一つ。アンは『で?』と本題を促した。
「え? ああっ、う、うんっ。コレなんだけど」
「おう、懐かしいな。野獣の血じゃねぇか」
「さすが錬金術師サマっ。知ってるなら話は早いわ、物は相談なんだけど――」
このレアアイテム、引き取っては貰えまいか。出来れば素敵レートで。
嬉々として取引を持ちかけようとしたマナであったのだけれども、
「懐かしいのなんのって、昔、伝説の合成獣キマイラの研究をしていたんだが、ラボが閉鎖になっちまってな」
「……は、はあ」
「もう少しで成功しそうだったんだが……」
愚痴愚痴とボヤきはじめたアンは人の話をまるで聞こうとしない。
(キマイラって、噂の強力召喚獣のことなのかしらん。ああ、でもっ、その研究してたってならやっぱり、この娘が正解? 取引相手で正解? さっさと買って貰って、ばっちこいゴールドって――って、って……)
いつ私の話を聞いてくれるんだろう?
ボケっとしている間にも立て板に水、アンはまくし立てる勢いで自分の言いたいことだけを愚痴りまくり、
「で、その本があればまた実験を再開できそうなもんだがな」
「……はい?」
「だから、本だよ。聞いてなかったのか?」
ちらっと、意味ありげに横目をくれる。
――つまり、取ってこいってこと? 私に?
「え、ええっ!?」
冗談ではない。マナは慌てふためいて、ぶんぶんと手を振った。無理、無理ですっ、と。
「この血、ブラッドウルフから取ってくるだけで命がけだったんですよ〜」
そんな、いかにも難易度高そうなクエスト持ちかけられても。相手見て言ってくださいよ。つか、それよか、この血買ってください。
機嫌を損ねぬよう、愛想笑いだけは必死にキープしつつ。下手すると押し切られそうなこの依頼、頷いたら負けだと食い下がる。
「そんな服着てるくらい強いんだったら、自分で取ってくりゃ良いじゃないですか」
「オレは実験だけしてたいんだよ。そんな暇ないな。時間が勿体ない」
「ううっ、そーゆー我侭なとこはほんっと学者っぽいっていうか。ちなみにそれ、どんなモンスター倒せばゲットできるんです?」
「ホブリンだな」
「……え゛?」
アンはいかにも軽く、さらっと答えた。
マナの出来たてで間が無いトラウマにしたたかの一撃をくれる、その名前を。
「もしくは、ゴブリンの中でも強ぇーやつ」
「む、無理ですっ! ゴ、ごご、ゴブリンなんて……ゴブリンなんて……」
さあっと血が引いていく音は、無論アンには聞こえなかっただろう。ただ呆気にとられる彼女が目にしたのは、引きつった笑顔を浮かべていた少女がビキリと硬直し、一瞬にして真っ青になると、虚ろな目で泣き叫びはじめた姿だった。
「も、もう嫌ぁ〜っ、絶対イヤぁ〜ッ! 犯されるのはいやぁぁぁ〜っッ!!」
「――わ、ばか、オマエっ。こんなところで、なに人聞きの悪いこと、しかも大声で……!?」
「掘られる、犯されるぅっ。助けて、助けてお母さぁ〜ん!」
ガクガクと震えながら突如パニくりだしたマナに慌てたのはアンだ。
「だから落ちつけって、叫ぶなよ! まるでオレが変なことするみたいじゃねぇか。オレにも世間体ってもんが――」
<黄金のほったて小屋>と言えば、ベインワットでも銀行前に次いで人通りの多い方である。白昼――とはいえ、ネツァワルの首都は常に薄暗い地下の街だが――上げられた少女の、それも犯罪性を匂わせた穏やかならぬ悲鳴に、周囲からはたちまち怪訝な視線が注がれる。
その中には、宿屋の主であるジュンのものもあった。
「誰かと思ったら。アンちゃん、あなたまた……」
「な、なんだよジュン。オレじゃないからな? 良いな? オレじゃないぞ」
よく見知った者同士が通わせる視線だけの会話に、呆れと抗議を交わしつつ。半泣きになってしまったアンは、『部屋っ、借りるからな』と言い捨てて脱兎、収集の着かなくなったその場からマナを引き摺って逃げ出したのだった。
◆ ◆ ◆ 「……ごめんなさい、大変申し訳なく思っております」
床に土下座、ベッドに向かって深々と頭を下げるマナである。
「当たり前だ。どんだけオレが迷惑したか、分かってんのかよ」
ベッドの上には、どっかと腰を下ろして胡座、腕組みでそっぽを向くアン。メイド服でそんな格好をすると、フリルひらひらのスカートがめくれ上がって酷くはしたないのであるが、それを指摘できる空気とは違う。
恐慌状態からやっと正気を取り戻したマナは、ひたすら恐縮して詫び続けるしかなくなっていた。
野獣の血を買ってくれと頼むどころではない。泣く泣くではあるが、アンが必要としている『錬金の秘法』についても、どうにか工面してくると約束せざるを得なかった。
「当然だ」
「ううっ、せめてもうちょっと強くなるまで勘弁してください。すぐには無理ですぅ〜」
豪遊の夢も泡と消え、なぜか金持ちになるのとは逆に厄介な負債を抱えこんでしまったような。へこむより他にない駆け出しソーサラー、マナなのだった。
寒い限りが悪化する一方の懐具合に、さめざめと泣く。
そんなマナをちらっと窺って、そろそろ一時からは機嫌の悪さもマシになってきていたアンは、さてとと思案した。
無論、ただですますつもりはない。えらく憤慨させられたのだから、穴埋めをして貰わなければ割りに合うまい。いうなれば、精神的損害への慰謝料を。
もう一度ちらっと、床に平服する少女を見た。
涙目で見上げる童顔に、正直ぐびっとそそられた。
(へへっ、どうせジュンのやつはもう、早とちりしちまってるし。だったら遠慮いらねぇよな)
腹を決めてしまうと、気分は逆にワクワクと。旧知のジュンならば、また悪い病気が出たわねと評したろうか。とにかく、舌なめずりしつつ『おい』と声を掛けるのだった。
「オマエ、済まないって思ってるなら、とりあえず迷惑料払えよな」
「えらいすみません、お金無いんです。貧乏なんです。持ってるのといえば……、ううっ、この20ゴールドの野獣の血くらいなんですぅ」
「いらねーよ。使い途オレ知らないし」
「噂じゃレアアイテムだって話だったのにぃ」
「泣くなって。……だったらまぁ、ほらさ、あるじゃねぇか? 他の払い方が」
急にもじもじとしながら、怒ったようで実は違う口調で言うアンはかなり不審だ。しかし気付くマナではない。
「……?」
きょとんと首を傾げる彼女は、まさかこのボーイッシュな、そして意外と根は少女趣味らしいアンの口から聞くとは思ってもみなかった言葉に、唖然とすることになる。
「か、カラダで払えってことさ」
――ぎにゃー!?
マナは一気にずざざっと、部屋の反対側まで飛び退った。こっ、このひとヘンタイだ!
そんなマナに『ああ、うん、勘違いするなって』と。ベッドの上からなだめるかで手を伸ばし、アンはいかがわしげに真っ赤となった顔を無理矢理にこやかにさせて、早口を繋いだ。
「ちょっと実験に付き合ってもらおうかと思ったんだよ。うん、そういう意味。ご、誤解すんなよな」
「実験? ……つまり、実験台?」
「そう。簡単な実験、ほんとに簡単な実験にさ、ちょっと付き合ってくれりゃ、それで迷惑料ってことにしてやるからさ」
懐から取り出した薬瓶をほらと示す。
「毒は無いって確かめてあるから。安全、そうぜんぜん安全だって。――な? ちょっと飲むだけ。飲んで感想教えてくれりゃいーんだよ」
「飲むだけ?」
「そう、飲むだけ」
「毒じゃない? 無害?」
「死んだりしないし、むしろ元気になるし。……体の一部的に」
目を背けてぽそっと洩らす。
「……何か言った?」
「いやっ、いやいやいやっ、何でもねーよ」
そうして、リジェネートやパワーポットに次ぐ新しい戦場薬品の開発サ、などと説明されたマナは、結局は首を縦に振った。
負い目があるのは事実だったし、安全だというのならそれで許して貰えればと思ったのだ。
◆ ◆ ◆ そして結果として、薬が実によく効きまくった現状がある。
「なによ、これぇ〜!?」
薬を飲んで静かにベッドに横になり、待つこと暫し。かっかと体が火照りだしたなと思っていたら、あれよあれよという間に熱が下半身に、お腹の下に集まっていく感覚があり、股の間がムズムズとしだしたと思ったら――。
「お、おちんちん!? コレっ、生えてるのっ、どう見てもおちんちんだよねっ。な、なんで〜?」
自分のスカートをめくり上げ、下穿きをずらして確認。そこに間違いなく鎮座まします――男のアレ、と同じ形のナニ。
パニくりまくるマナを余所に。ベッド脇にワクワクと経過を見守っていたアンは、密かにぐっと、拳を握り締めていた。
「……よしっ」
「今、よしって言った? よしって言ったー!?」
「いや、いやいや、ンなこと言ってねぇって」
聞き逃せない快哉を洩らしたアンを問い詰めようとするが、やけに嬉しげな錬金術師は白々しく空っとぼける。
「いやぁ〜、まさかこんな形で効果が出るなんて、予想外だなぁ。……うん、ほんと、思いもしなかったぜ」
「治して!」
「心配すんなって。リジェネートやパワーポットと同じだって言ったろ? 効果が切れれば元通りだな」
「ほんとなんでしょうね……」
嘘だったら泣くから。マナはそう疑わしげな目を向けずにはいられない。
当のアンには全く通じず、じっとりと睨んでいるのにむしろ、締まりのない顔でニヤニヤされているのが癪であるのだが。
「――さって、と」
そうする内に、仕切り直す風なことを言って。アンは彼女に向き直っていた。
「予想外っちゃナンだけど、一応効いたには効いたからな」
実験結果、確認させてもらうぜ? と。言っている内容はもっともらしいものの、彼女の表情が言葉を裏切っている気がしてならない。
笑み崩れそうなところを、努めて真面目そうに取り繕ろおうとするとこうなりそうな――唐突の顔面神経痛を引き起こしたかの、微妙な面持ち。
得体の知れない迫力でにじり寄ってきた彼女に、マナは躰で払えと言われた時と同じ危機感を感じずにはいられなかった。
同じ女の子相手なのに、何故か男に見られでもしたかの怖気が湧いた。
「み、見ないで下さいっ」
咄嗟にソレを、シーツで庇う。
覆い隠したのは、露わにしていても女の子として恥ずかしい股の間ではなく。珍妙にもにょっきりと『オトコノコ』な、いきり立ちだったのだけれども。
しかし構わず、アンはにじり寄る。
ギシリと、小柄な錬金術師の体重を受けたベッドが軋みを立てた。
「……な、ななな、なにを……確かめるん、デスか?」
「決まってるだろ、そのご立派なチンポの具合だって」
「ちょっ、ちょっと〜!?」
逃げる余裕もあればこそ。
さして広くない部屋。その隅にぴったりと寄せてというベッド位置が災いして、すぐに背を壁にとられてしまったマナは、気が付けば股間に手を突っ込まれてしまっていた。
「うひぃっ」
未だかつて経験したことのない感覚だった。隠したばかりのシーツを払われて、そこをむんずと握られる。思わず変な悲鳴を上げてしまう。
「お、なんか敏感な感じ? びっくんびっくん言ってんな」
「で、出来たてですから……、なんていうか、ち、知覚過敏?」
「ほうほうほう。感じやすい、と」
「い、いやらしい意味じゃなくって――!」
本当ならさっさと手を振り払うつもりだったのだが、マナには出来なかった。
ずり下げた下着の端から息苦しかったとばかり、にょっきり鎌首をもたげた元気なものを掴まえられて、グニグニとしごく感じにされてしまうと、一気に力が入らなくなってしまうのだ。
(さ、さすが、男の人の弱点って言われるだけのことは……ぁ、あああ)
ま、マズイってと、猛烈な焦りが背筋を駆け抜ける。同時にそれに、すでに手遅れだわよと言い添える醒めた声も。
なにしろ今のマナは、むんずと『急所』を掴まえられてしまっているのだから。
「なんかよ、見かけだけじゃなくて機能もしっかりオトコのと同じなんじゃね?」
「なんのっ……こと、かな? はは、あはは……」
隠すなよと下品に口元を歪めて、アンが告げた。
「とりあえず、この邪魔っけな皮、剥いてやろうか? ……ま、生えたてのチェリー君なわけだし、とりあえずは勘弁しとくとして。やっぱ童貞チンポなら皮オナニーからだよなっ」
言われた意味はマナには理解できなかったとはいえ、言辞の不穏さだけは通じていた。
そうしてその直感が伝えていた通り、アンの手つきが妖しく蠢きだした後には、彼女は息も絶え絶えにのたうち回るしか出来なかったのである。
「いひっ、ッあうっ、あっ、あっ、ああっ」
「おうおう、ちょろいもんだなー、オマエ」
いかにも呆気なく引き出せたマナの悶えに、アンがにんまりと。
してやったりの顔。そして、猫目気味にややつり上がった瞳を爛々と輝かせる、火の着いてしまった貌だった。
悪戯に励む手元が、いよいよ淫靡に踊り始める。
幹を掴んだ手の中で親指だけを立て、指の腹に挟んだ包皮でもってマナに生えた先端を刺激する。男のペニスと全く同じであれば、敏感極まりないその部分を小刻みに擦るようにして。
「そっ、それ……それはだめぇぇ〜」
たちまちこみ上げる、甘い疼き。ビクビクと腰を波打たせずにはいられない――紛れもない快感が迸る。
反応は鮮烈だった。
包皮に半ば覆われた亀頭は初々しいピンク色をしているに過ぎないのに、アンの施す手淫によってマナが切ない喘ぎをあげた途端、むくむくと膨らみ、若茎は完全な勃起を迎えていた。
反り返った姿はまさに、怒張と呼ぶに相応しかろうか。
皮もめくれ、露出を増した亀頭にいやらしく喜悦の目付きをくれると、アンは一旦放した手を自分の口元に運んで、
「ふふふ。天国、見せてやろっか?」
これみよがしに、唾を指先にまぶしだしたのである。
「……ま、まひゃかっ。あっ、ああっ」
この歳になれば知らないわけでもない一人での秘め事に、これと通じるやり方が。そう思い当たってしまえば、恥ずかしい危機を予感してしまう。
本格的にマズいよと、涙目になってマナは焦った。
「まって! まって、まって、待ってよー!」
切羽詰まった懇願は、やはり綺麗に無視される。指先にたっぷりの唾をまぶされ、準備を済ませた手が戻ってくる。
ぬる……と、敏感な亀頭部分にも優しいタッチが先触れで。次の瞬間には唾液をオイル代わりにした指の腹が、くりくり、くりくりと、鈴口の辺りをなぶりだしていた。
「あひゃっ!? あっ、あふぁあああーっ」
果たしてそれは、女の子の真珠をこっそりと慰めるのとどちらが甘美な刺激であったか。屹立から広がる愉悦に、身を捩らせて翻弄されるばかり。
(腰っ、痺れちゃう……)
姿勢を保つ力さえ失ったマナは、壁に預けていた背中もくたくたと崩れさせるしかなかった。
抵抗力を失った股の間にたちまちメイド衣装の錬金術師が位置を占め、童貞少女のペニスをより容易く玩弄すべく――痴女そのものの手並みで支度を整えていく。
ペニスをしごかれる一方、もう片手だけで下着のドロワーズがお尻から剥かれ、引き下ろされていった。
あっという間に足首までずらされ、抜き取られ、ぽんと部屋の向こうに放られると、すべすべとした素足を晒した下半身は、ぐいっと大きく開かされる。
これでもう、本当に無防備。さわさわと空いた手で太腿を撫でさすっている変態少女に、何をどこまでされてしまうやら。
「あっ、あうっ。な、なんで……」
いかがわしい薬物によって生やされたペニスなぞ、どうせ即席後付けの不自然な器官に過ぎないのに。なんでこう、気持ち良くて仕方がないのか。
切なく喉を喘がせつつも、マナは必死に訊いた。何故、と。
「あなた女の子なのに、なんで……っ、ううっ、こんなやらしいこと、するのぉ……?」
「ん〜? 最初に言っただろ、実験だよ、ジッケン」
「う、嘘っ。だったらこんな……ッア、アアッ、あ……、あ、エッチなことまで、しなくてもっ」
「だったら趣味かもな」
ボーイッシュな面差しを、目元を蕩けさせた淫らなものに一変させていながら。それでも軽く、アンは答えた。
「ほら、オレってこんなカッコしてるわけだろ? ……ご奉仕、してやるぜってな」
少し声が上擦って聞こえたのは、こんなことまでしていてもやはり照れが入るセリフだったためか。
いずれにしても、マナには悪い冗談である。
であるが、アンのセリフは悪い意味で本物だった。
「メイドの奉仕つったら、定番は……分かるか?」
「い、いいえっ。分かんないけどとにかく、結構ですぅっ」
追い詰められた者が常に最後に見せる足掻きでマナは首を振りたくったが、捕食者の立場にたったアンは、当然のように意に介そうとはしない。
「言ったろ、天国みせてやるって」
告げるなり、顔を伏せていったのだった。
「――あっ、あ゛あ゛っ!? あ゛あ゛あ゛あ゛っッッ!!」
下半身を襲った未体験の感覚に、意識を一瞬で浚われそうになって。女性の身に生まれいずる筈のない欲望器官を備えたマナは、自分がぱっくりと同性に咥えられてしまっていることを、すぐには理解できなかった。
熱い。そしてヌルヌルとした堪らなく気持ちの良いものに、股間から生えた部分が包み込まれている。
全方向からの濡れた感触がソフトな密着感をくれて、ニチュヌチュと上下していく――たびに、蠢きがどれだけ僅かでも、脳裏は沸騰しそうになった。
(あえへっ、ふぇぇぇえっ? えっ、えええ〜っ!?)
快感が背骨を軋ませる。あまりに気持ちが良すぎて、歯を食いしばりながら涎を垂れ流した。
ともすれば意識の支配を飛び抜けて、ベッドのスプリングに後頭部をバウンドさせ、揺れ回る天井をだけ眺めていることになりそうな瞳を、なんとかそこへと向ける。
アンの赤い前髪が垂れているのと、それに合わせてお仕着せのフリルカチューシャが揺れているのが、まず目に入った。
『ふン……ン、フンンッ、ふっ、ふぅっ』と、色っぽい鼻息が踊っている。
(ッ、ッっ!?)
そこはどこだ。アンが顔を伏せて、頬をすぼめつつ吸っているのは、
「しゃぶっ……っッ、って! なにっ、なにして……え? ええっ!?」
――おちんちん、しゃぶられちゃってる!
理解はつまり驚愕であり。また加えて、耳たぶまで灼熱する火照りと、目眩がしそうなほどの興奮が刹那で加速させた、鼓動の早鳴りだった。
「あ、あああ、あああああっ、っッ」
忘れてしまったかのごとく、言葉が出てこない。
同性に襲われる戸惑いも、禁忌感も、抗おうとしていた全てを吹き飛ばされて、一瞬でマナは陥落していた。
「んちゅ……ちゅ、ちゅ――。っふふ、どうよ? オレの口は」
ぱくぱくと馬鹿みたいに口を開くだけで、つぶらな瞳を肉欲にどろりと濁らせてしまった少女は、答えらしい答えを返せなかった。
凜とした少年の雰囲気をも持ち合わせた美少女のフェラチオ奉仕に、完全に酔いしれていたのである。
(吸われ、ちゃ……)
マナは意識の希薄化を錯覚した。思考する力がまるで、唇に捕まえられてしまった場所から抜け出していくかのようだ。
「あひ、ひっ、ひぃぃっ。いっ、いひぃぃ……い、いいっ。いいよぉ……」
快美に蕩けきった喘ぎで、涎もつぅっと次から次に口元をだらしなくさせる。
同様に、クリトリスが変化した勃起の下では、マナの少女のままの場所がトロトロと蜜を吐いていた。
錬金術師の細い指が入り口から挿し入れられて、愛撫のついで、濡れそぼった中を確かめる。
「お? なんだオマエ、ガキのくせに、もうここでオトコ咥えたことあるのかよ?」
「あっ、ああン。そっちまでぇ」
敏感な粘膜をまさぐられてまたマナは悩ましく鼻声を上げたが、同時に、破られて間がない処女の名残がピリッという痛みをも訴えていた。
先日に受けたばかりのブラッドウルフの陵辱に、傷付いていた分もあっただろう。
苦悶というほどのこともない軽い皺が、眉根によせられた。
「……ちげーか。なんか、ついこないだまで膜、あったみてぇだしな」
まだ充分にきつい締め付けを奥にさぐりながら『そうすると……』と、アンは事情を察したらしかった。
「ああ、だからかよ。道理でオレがゴブリンって言った途端、泣き出しちまったわけな」
「い、言わないでぇ……」
「その感じだと、はじめての相手がゴブリンだったってわけか。ま、駆け出しの兵士にゃよくある話だよな。いいぜ、慰めてやるよ」
嬲る言い方は嗜虐の響きを帯びていて。男の部分と女の部分、官能に目覚めた股間の両方をねぶられ、かき混ぜられるマナの咽びには、惨劇の甦りによる涙までもが入り交じった。
(ああっ)
努めて陽気に振る舞い、呪わしい体験については思い出すまいと務めているマナであっても、ゴブリン達に受けたつい先日の輪姦陵辱は悪夢そのものだった。
ふとした折りに思い出してしまう魔物の体臭、息遣い、指や舌の感触、そして肉蛇の滾り。拭おうには鮮烈すぎる記憶に苦しめられて、嗚咽を堪えねばならなかったことも多い。
(私ってば、また……)
吹きさらしの屋外と宿屋の一室という違いはあれど、意志に反して躰を開かされている事実を再度認識したとき、少女の心は嘆きに閉ざされ、逆に肉体は燃え上がった。
スイッチの入ってしまった官能はまさに肉体の叛乱であり、呆気なくマナを翻弄する。意志と裏腹の反応に何故と疑問を覚える余裕すらなかった。
お腹の底がカッと熱くなり、股の間にヌルヌルとぬめる染み出しが広がっていく。更には、
「はぁう……!」
ビュクン、と。小水を洩らしかけるのと似た感覚。
熱い滾りが僅かに漏れかけ、そそり返った先端に噴射させる機能が備わっていることを、実感としてマナは知った。
幹に力みかえって血管が浮き上がり、びくびく脈打っているのが自分で分かる。
――いや、激しく脈打っているのはペニスだけではない。胸はブラッドウルフに追われた坂を全力疾走したのと変わらないほどの動悸で上下しているし、体中の血管から鼓膜のすぐ側だと勘違いしそうな力強すぎる脈動が、『ドクン、ドクン……』と鳴り続ける。
全てが彼女に、そのまま衝動に身を委ねてしまえと唆していた。
(だだっ、だめっ。だめだよぅ)
トイレを探したくなるのと似た感覚だけに、我慢をやめてしまえば実に爽快に気持ち良くなれるのだと察しは付く。
しかし、どうだろう? 衝動に任せて漏らしてしまえば、それは人の口の中でということに……。
「は、放してっ。このままじゃ……。ぁ、ああっ……」
「ンふっ、ふっ、んふふ……」
小悪魔な唇でマナを咥え込み、ねっとりと舌を巻き付かせる口技をあらん限り。ぴちゃくちゅ音を立て続ける愛撫の合間、悪戯な上目遣いを注いでいたアンが、サディスティックに目を細めた。
「いいへ、いっひまえよ」
「はひっ、ひひぃっ!?」
濃厚なおしゃぶりを止めもせずの言葉。だが、この短時間でアンという錬金術師の淫らな面を間近にしたマナには、聞き返す必要はなかった。
「いやぁ……ぁ、いやぁぁ……」
「嫌じゃねぇだろ? マンコまでこんなヌレヌレにさせてよ」
ちゅぽん、と音を立てて一旦ペニスを解放した彼女は、『いいから、一回気持ち良くイっとけ』と残すと、素早くまた蹂躙フェラチオを再開させ、激しく吸い立てた。
「ふぁっ、あっ、だめぇぇぇ〜」
どこまでも柔らかい舌触りなのに、過敏になった亀頭部分をねぶられてしまうとまるで、理性にゴリゴリとヤスリが掛けられるようだ。
堪えようにも、どう堪えれば良いのか見当さえ付かぬまま、一気に押し流される。
「あひっ、ひッ、ひぃいひぃぃ……!?」
激しく喘いでしまうのも抑えられない。だって、ほんとうに気持ち悦いのだから。
嫌だやめてと言っていたのに、股は歓びを露わに大きく開いてしまっていた。正直に欲しがって、もっともっとと。
根本に痙攣じみた愉悦がこみ上げ、膨らむ一方。
やるせなく身をうち揺すり、ベッドを軋ませたものの、僅かにも遅らせる助けにはならなかった。
「ンちゅっ、くっ、くふふっ、ムふぅ――」
カリ首をこそぎ、尿道をねぶる舌技の乱舞も加速している。アンの頭が忙しなく上下する動きもまた同じく。
(漏れちゃう、も、もも、漏れちゃ、もれちゃうぅぅ〜!)
爆発はあっという間に訪れた。
「やうううッッ、っッ、っツ……!!」
ぎちぎちに力み返った肉竿の芯の部分を、灼熱のマグマが通過していった。押さえ付けられても、あれほどはね除ける力が篭らなかった腰が、ひとりでにガクガクと跳ね上げられた。何度も何度もペニスが痙攣して、漏らしてしまった。
――アンの、熱い口の中に。
「あはぁ、ぁ……ああ、出ちゃっ、てる。れちゃってぅ、よぉぉ……」
みっともないアヘ顔で泣き言をこぼすマナの射精初めは、喜悦の極みといった貌のアンが、こくんこくんと最後の一滴までを飲み干してくれた。
自分の体から出たものながら、或いはだから余計に穢らわしいと思える白濁液を、(う、そ……ぉ。どうして……?)とまるで理解できないような熱心さで。うっとりと目を瞑って堪能し、口元から飲み残しをとろりと零す、淫蕩な仕草で。
やがて脈動は収まっていった。
すぼめた唇でちゅうちゅうと尿道口を啜っていたアンも、気の済んだ風でペニスを解放してくれたが、だが未だ、屹立はそそり立った姿を健在とさせている。
射精後の気怠さと、収まらない体の火照り。何も考えられなくなっていたマナは、漠然とした中でこれで終わりかと安堵を感じていたのだけれども、
「さすがだな、オレ」
口元を拭った若き錬金術師は、それでこそと大きく頷く。
彼女にはこれで終いにするつもりなど、露ほども無かったのだ。
「……ぁっ、あ、アン、さん……」
くたくたに脱力したマナの体は、大きな人形を弄ぶのと大差が無くて、アンは簡単に服を脱がせていくことが出来た。
見かけはそう変わらない年頃なのに、意外に映る腕ずくぶりで、ひと一人の体格を裏にしたり、表にしたり。今度こそ本当に抵抗する余力が無かったにせよ、殆ど同じ背丈のマナを持ち上げるのにも、苦にした様子は見られない。
脱力した人間の体は、かえって重く感じるものではなかったのだろうか? それとも、これがメイデン服を手に入れるほどのベテランが備えた実力なのだろうか……?
好きにされている自分を他人事のように、ぼんやりと考える。
その間にマナは、すっかり裸にされてしまっていた。
「さって、と」
ベッドの上に、初夜を待つ花嫁めいてしどけなく横たわりながら――しかし、初々しい発育のヌードにただ一点、股間から天井を向く牡槍が異容を放つ。
なだらかな肩のライン。ふっくらとした純白のバスト。女の子らしい柔らかな肌が、絶頂の名残りに染まっている景色。
先の一点を除けば、どれもが覿面に異性の欲情を誘うだろう供物となったマナを前にして、同じ女の子であるアンが吐く息はやはり熱っぽい。
「……アンさんって、レズのひと?」
思考が曖昧になっているせいか、少女の質問はストレートだった。
目の縁を婀娜っぽくピンクにさせたアンは、違うと応える。
『じゃあ?』と不思議そうにするマナを、言葉に反して可愛くて堪らないと目を細めつつ、男言葉の少女ははっきりとした答えを返そうとしなかった。
「オマエさ、背中に爪痕があったぜ」
「…………」
「獣の血、ブラッドウルフから取ってきたって言ってたけど……」
言わんとするところは分かる。気怠さに浸っていた頭に、冷や水を浴びせられたに等しい。
マナは黙って頷いてみせた。
「女で兵士なんてやってりゃ、そんなもんさ。錬金術師だって似たようなもんでよ。とくにオレ、キマイラの研究してたって言ったろ?」
「……うん」
「冒険に出たり、戦争に参加したりしなくても一緒だな。このベインワットの街だって裏にちょっと回れば碌なもんじゃねぇよ」
口の端を歪めて見下ろすアンは、陰鬱な影を落としている。
同い年くらいなのに、キャリアは遙かに上の錬金術師。メイデン服を着込んだちょっと少女趣味の、なのに自分のことをオレっていう女の子。それがマナの目に映った彼女だったのだが。
将来はメルファリアに鳴り響く名軍師になってみせると意気込んでいても、失敗ばかりしている自分と違って、なんて凄いんだろう。そんな引け目さえ感じていた。
けれど――似たような失敗をしたり、辛い目に遭ったりしていたのかもしれない。
奇妙なシンパシーすら、胸に募った。
潤んだ目で仰ぎ見るマナに大きく頷いて、
「そこら辺中、嫌なことやエグいもんばっかりさ」
だから、と。アンが口にした締めくくり。
「オレはよ、可愛いーもんが好きってわけさ」
ニッと笑う。と共に、彼女は自分のドロワーズを背後の床に投げ捨てていた。
マナとしんみり、真摯な言葉を交わしている間にもいそいそと。相手を裸にしたのと同じく自分の準備も進めて、邪魔な下穿きは脱ぎ去っていたのだった。
「可愛いぜ、オマエ」
「ぅえ? え? ええっ?」
膝でにじり寄ってくる。
同時に確かめる手付きで彼女自身のスカートの下をまさぐると、くちゅりくちりと充分に発情した音がマナの耳にも聞こえた。
男の象徴が生えるなんて薬を飲まされ、吸茎の愛戯でアクメさえ遂げさせられていれば、何をそれぐらいでと言われそうではあるものの。それでも、目の前で自分と同じ女の子が秘部をいじくっているのだと知ると、かぁっと気恥ずかしさを覚えずにはいられなかった。
ほれと捲って見せ付けられると、太腿の内側から鼠蹊部にかけてテラテラと濡れ光るしみ出しが。
更には源泉たる姫割れが、卑猥な息遣いにヒクついている。
アンのほっそりとした指に割り広げられたそこに、目が吸い寄せられた。花弁に挟まれた鮮紅色の粘膜が、まるで涎を垂らしているかの淫靡さでマナを幻惑するのだ。
その眺めがまた居たたまれない半面、ズキズキと股間に充血を喚んでしまう。
「はぁ、ぁ、あっ、ああっ……」
とんでもない淫らがましさ。なんていやらしいと目を見張るのと合わせて、息はハァハァと上擦っていた。
(わたっ、わた、わたし……。女の子に、よくじょー、しちゃってる……?)
これでは自分も変態だ。同性のアンに欲情している己を気付かされるのは、いかにも情けないけない思いがセットになる。
「そういやオマエ、なんて名前だったっけ?」
実に今さらの質問。不穏で不審で、答えない方が良い気しかしない。
渋ろうとしたマナの抵抗は、だが刺激に弱い――弱すぎるペニスをぎゅっと捕まえられては、所詮無意味に尽きた。
「あひぃっ、いっ、マナ……マナでふぅっっ」
「よぉし」
「答えた、答えたからっ。おちんちん、ぎゅっとするの……グリグリってするの、許してよぉ……!」
ベッドのシーツを掻きむしって悶える獲物をマウントポジションから睥睨し、満足そうに。うっすらと綻ぶアンの唇の間には、ちろちろと赤い舌が揺らめいていた。
「じゃ、マナ。オマエの童貞、もらってやるよ」
「ふぇぇっ!?」
握った屹立を操って、自身の潤滑された花びらへ馴染ませるかの触れあいで二度三度、槍頭にクレヴァスをなぞらせて。
少女錬金術師は一気に腰を沈めてきたのだった。
「はぇああっ!? や、やだ、あたひぃぃぃ――!?」
つるつるとしたアンの肉土手が、白濁した液を吐く亀頭を咥え込んだ一箇所から、ぐにりと割れ目を押し広げられていって。丁度、縁に息づいていたクリトリスの真下へ潜り込むかたち。
マナの脈動する肉の杭は、蜜滴る熱源粘膜の洞へ引きずり込まれるように、ずにゅちゅぶと全てを包まれていった。
「分かるか? 繋がってンだぜ、オレたち」
小悪魔な少女は、インサートの瞬間をしっかり見届けさせてやるため、スカートをたくし上げていたから。一時的な両性具有者とされたマナは、一時始終をその愕然と見開いた瞳に目撃した。
「はぁっ、あっ、ああっ……」
根本を飲むまで腰を下ろされてしまうと、しっかりと二枚のラヴィアの間に食み挟まれたペニスは、ちょっとやそっとで抜けるものには見えない。あまりにしっかりとした、結合だった。
――食べられ、ちゃった。
そう脳裏に浮かんだのがもっとも相応しい。
牡として、女性の部分を犯し貫いているのはマナに違いないけれども。ベットに横たえられ、馬乗りで膝の間に腰をしっかと捕らわれて。交合から腰引いて逃げるもならず、振り落とす余地すら巧みな体重操作で押さえ付けられ。後はアンが好きに尻をめぐらせるばかりとされていれば、牡の役に相応しい優位性なぞ欠片もありはしない。
「あ、アンさぁぁ……」
ただただ状況に押し流されて目を白黒と、ふるふる睫毛を震わせているマナに向かって、
「堪能してくれよな、オレの抱き心地ってやつをさ」
アンは正気に戻らせる余裕など一時も与えないつもりの宣言をくれた。
「だだだ、だめっ。動いたら――これ以上、ちょっぴりでもされちゃったら、わたし……!」
こうしているだけでも、息衝きに同期した膣肉の蠕動で、たまらなくペニスが気持ち悦いのに。
しかし、アンは心からの善意だと言わんばかりの素敵な笑顔で一顧だにせず、跨ったヒップを勢いよく踊らせたのだった。
「んっはああぁっ、アンさ……っ、アンさぁぁんん。わたひ、わたひぃぃぃ」
溶けちゃう、気持ち良すぎておちんちん溶けちゃう、と。アンは呂律も怪しく叫び啼いた。
精通の衝撃的な快感を覚えさせられたばかり。オトコ歴一時間にも満たないマナが受けるには、本物のセックスは過ぎた悦楽だ。
犯された経験はあっても、犯した経験なんて勿論一度たりとも持ち合わせていないのだから、ぬるぬるとした女性の花園にペニスを遊ばせる――全てが鮮烈すぎる初体験の、そして未曾有のエクスタシー。
ゆるゆると腰を使われると、たまらず喉を晒して喘ぎ悶えた。
「あひっ、ひっ、ひぃぃぃ」
理性の最後防壁だったかもしれない童貞包皮さえ事前の手淫でめくれ剥け、今はアンの素晴らしい締め付けに上から下まですっぽり包まれている。
性感の集中する亀頭部分を直に粘膜同士ぐにゅにゅると愛撫されると、ペニスが丸々弾け飛びそうな、快美の電流がつんざいていく。
官能の稲妻は、脳裏をも貫いた。何度も何度も。
軽いアクメは、挿入が成った瞬間から、ひっきりなしに繰り返されていた。
アンが腰を跳ねさせ、秘唇に飛沫を散らせたピストンの動きを続ける度に、ふつふつと玉の汗をかくマナは、裸の乳房を激しく揺さぶらせて、のたうち回るのだった。
「あおっ、おっ、おえぁおおお……」
「怖ぇな、オマエ。あんまり必死に叫んでると、窒息しちまうぞ? へへ、目ぇ剥きそうになって感じまくりたぁ、オレも女冥利に尽きるぜ」
余裕のある彼女と比べ、マナは既にまともに語るのも困難。唇は常に、肉悦の賛歌を迸らせることに開かれていた。
「こんなにぃ、ぃ、こんにゃに……きもちいひ、なんてっ。なんてっ、えぇぇぇ……!」
骨も肉もずるずると溶け出していきそうかと錯覚する勢いで、腰が全て気持ち良い。
これがセックス。男の人がする、おちんちんのセックス。なんて、凄いんだろう――。
大して触られもしない乳首もピリピリと痺れ、ひとりでに硬くしこり立つ。
淫ら極まりない秘肉にずっぽり歓待されている肝心の部分では、それどころですらない。ドロドロにぬめっていながら、ザラザラと絶妙な感触で溺れさせてくる膣襞ときたら、
(気持ち良い、気持ち良い、気持ち良い、気持ちいいっ。きもちイイよぉぉ〜)
まさに歓喜の極み。
ソーサラーの道行きの入り口に立って、魔物達にも立ち向かった凛々しさなどは、面影も残らず消し飛んだ。
ベッドシーツに栗毛のショートカットが乱れきるのも構わず首を暴れさせ、暴走する性感に涎を撒き散らしているのでは、ただの淫乱娘にしか映らない。
「あは、はっ。可愛いオマエにそんなに悦んでもらえると……。んんっ、んっ。オレも、感じちまうな……」
騎乗位に腰を上下させて思う存分貪っていれば、いくら童貞少女のマナ相手であっても、充分に高まっていくのだろう。
ふっ、ふっ、と弾む息のアンも、額にはりつく前髪に汗が濡れている。
形の良い顎を伝う、一雫。リズミカルに上体をくねらせると、汗は玉になって散った。
繋がりあうため、下穿きはフリルスカートの中から抜いているが、腕は手首まで、首筋も全て覆うメイドスタイルのドレスは崩していない。
男と女の睦み事をなぞる、変則的ながらのレズビアンセックスに励んでいれば、上がった体温は全身を汗みずくに変えていく。
情熱的な乱れ姿を晒すに至っているのは、ヌードの全身をしどけなく寝そべらせるマナだけではなかった。
「あふっ、ふっ、すっげ。さすが、キマイラの秘術……流用した、チンポかよっ」
「はぁぁ、ああ、アンさぁん。アンさんの、お、おお……おおおっ」
少女同士の恥丘を密着させる股の間は、溢れさせた愛液で双方お漏らしも同然のぬめり一面。剥き出しの二人の股間が、オイルを塗ったようにテラついている。
ずっぷりと嵌り込むピストンで、結合部分に見え隠れするマナの肉幹の上。こじんまりと寄り添うアンのクリトリスは、裏を激しくペニス抽送に刺激されながら、充分にしこり勃った姿を見せていた。
「こんな可愛い顔したやつに、させてるってのに――お、オレの、マンコの中、パンパンだっ」
こぼれる、淫らな感想。
確かめる風に、マナが埋め込まれている下腹のあたりを、メイドのお仕着せの上からさすり回す。
「これくらいいっぱいだと……突き破られっ、そうな……。ははっ、あはぁぁ……ぁ、あいつらにだって、滅多にいねーって」
感に堪えないと目をつむって、熱い息が吐き出された。
手慣れた様子の子宮にも、充分に肉欲の火は灯されていたのだ。すぐに甘い鼻息が本格的に入り交じりだし、少女の上げる聞き心地のいい悦がり啼きは二重奏となった。
「いっちゃ……あああ、いっちゃう! またっ、またわたし、イっちゃうよぉぉ。アンさぁぁぁんんん!!」
「い、いいぜっ。イケよ、マナ。イッちまえよっ」
可愛らしくも蠱惑的な悲鳴に、いよいよ少女錬金術師の秘肉は締め付けを増した。すなわち、マナの痴態を愛でるアンの官能が、負けず劣らず加速していっているのだった。
元より、成人男子の平均より随分と逞しく生み出された剛直に、狭隘な狭間を熱烈に突き解されていれば、子宮が滾らないわけがない。たとえその突き上げが全て、自分から腰を動かしていったものだとしても。
むしろ、大胆なグラインドに蜜壺と牡槍と擦り合わせ、刺激させる場所を選んでいったのは、アン自らの好みでだ。
己のツボは自分自身が一番心得ている。いわば、マナという少女に生やさせた限りなく本物と等しい男性器を使っての、自慰行為と呼べたか。
分泌された悦びの徴たる愛液は、内腿をシーツに突いた膝までヌルヌルにしていた。
濡れた地面を踏むかの、チュグッ、チュブッ、ニチュッという音が、果てしなく勢いを強める。
同様にマナが喉から絞る悦がり声も、憚り知らずのあられの無さを増していった。
「アンさんっ、アンさんっ、アンさんっッ」
漏らしちゃう……!
小水のそれと綯い交ぜにして覚えた射精感を、はじめて知った男としてのセックスに溺れるマナは、ストレートに口にした。
妊娠を、オトコとしてさせてしまうかもという本来あるべき恐れ。それについては、いくらなんでもペニスを生やしてすぐに思い至れというのが無理な話だろう。
「いいからっ、お、オレの中に……腹いっぱい、オマエのミルク……注いでくれよおっ!」
「い、イッちゃう……出ちゃう、出ちゃう、出ちゃっ――ッッ、っぅううう〜!!」
アンがあっさり許しを与えたのを良いことに、一瞬の躊躇もなく、こみ上げたままに解き放つ。思い切り注ぎ込む。
全身の収縮が背を弓なりにさせ、抗おうとしていた時にはかなわなかった事だが、跨るアンを下から大きく揺らがせた。
と同時に、したたかに突き上げた格好の牡槍は、これまでの最高の深さでもって、膣腔を串刺しにする。
二度目のマナの射精は、騎乗位の少女の子宮口へ挿さるほど堅い結び付きにおいて、引き金が引かれたのだった。
「アンさ……あ、あああ……」
「あっ、熱っ、あふぅぅッ。うっ、キくぅぅ〜」
ペニスの身震いはびゅくびゅくと何度も筋を力み返らせて、とば口を開けたオーガズムをアンの性器に飲ませていった。
少女錬金術師もうっとりと目を潤ませ、膣奥がビシャビシャと浴びせられた熱射精に、腰をわななかせる。
男として犯す側に立ち、同性の少女を相手取ったという倒錯した状況も、経緯も、何もかも忘れて。マナは恍惚の只中にあった。
きつい締め付けの中に包まれながら、思いっきり吐き出す心地の良さといったら。
(死んじゃいそうなくらい……きもち、いひ……)
かすかに思い浮かんだのは、自分という獲物を手中にした途端、喜色満面に組み敷き、次から次に満足の雄叫びを上げていた魔物達、獣達だった。
(――そっか、そうだよね……)
当然かな、と。共感めいた理解だった。
女の子の股の間にペニスを突っ込むのが、これだけ気持ちの悦いことならば。牡に生まれた以上、彼女を見るのに欲望まみれになった目となるのも無理はないか。
牡の本能というものが、彼女ら『雌』を犯すことを幸福と欲求させるのだろう。
実際、アンの淫肉を味わうのは、目が眩む思いの快楽だった――。
欲情の炎は未だ冷めやらない。
蕩けきった視線を、白い濁りを溢れさせる結合部分からゆっくりと持ち上げていくと、心得た顔のアンが弾む息もそのまま、頷いて返す。
「次はオマエがさ、オレを尻から犯してくれよ」
「アンさん……」
腰を持ち上げて引き抜く動きと一緒くたに、一度くてんと、彼女はベッドへ横倒しになった。
添い寝の距離から間近に、つり目気味のボーイッシュな美貌が、娼婦じみたセリフを吐く。
息を飲むマナを今度は四つん這いになって誘い、持ち上げたヒップからスカートをめくり上げて、しっぽを振る猫のように――クネクネと揺らめかせてみせて。
自分がたった今迸らせた獣液が滴る秘唇の眺めに、マナは3度目の射精への道へ、息も荒く溺れていったのだった。
Remarks:NPCもエヴァキャラの名前にしよかと思ったものの、適当な『オレっ娘』がいないのでそのまま。