〜 FEZ Erotic Lv.2 〜
「私の純潔はあの森で終わってしまったのよね。ううっ、残念無念……って、アホなこと言うのはやめよ」
呪わしい記憶の舞台となったロックシャンク山麓の森を、念入りに遠く離れた別の草原から望んで、マナは引きつった笑いをおさめた。
現実逃避をしても仕方ない。処女を失ったのは事実だが、誰だっていつか無くすものなんだからと思えば……。
「―― ふ、ふふ、相手がゴブリンって人はそう居ないと思うケドね……」
あ、やば、また鬱ンなってきた、と。マナはまた野っ原に一人、しょぼくれて蹲った。
数日を回復に費やし、傷も癒え、へこみきったモチベーションもなんとか前向きに戻したが、それでも思い出して気分の良いものではない。
体がなんとか元通りになるよりもずっと、心の傷には時間が掛かるのだ。
「あー、ダメダメ、ネガティブ思考は排除排除。このことは私の記憶から削除してしまおう、そうしようっとね。ぽじてぃぶしんきんぐ、バンザ〜イ」
フフフのフ……と乾いた声を漏らしつつも、とりあえずは気を取り直して、狩りを再開させる。
勿論、ゴブリンに手を出すつもりはカケラも無かった。
「ともかく、囲まれちゃ駄目。数の暴力には勝てない。ウォリさん達と違って私みたないサラは痛すぎて何もできなくなっちゃうし」
逆に考えれば、囲まれさえしなければ良いのだ。接近しなくてもサラは敵を倒すことができる。攻撃を受けることもなく。
「理屈は分かってるんだけどねぇ」
現実となると、である。
難しい難しいと呟きつつ、
「よし! 次はあまり数の居ない敵を狩ろう!」
そう思い立ち、マナは群れない種類の獲物を探すことにしたのだった。
◆ ◆ ◆ 道すがら目についた蜘蛛を片っ端から狩り倒し、調子にのってチクチクと、生かさず殺さずでいじめていたところに出現した、蜘蛛達のボス格大型種―― アクス・ヴェノモスに涙目にされて追い回されて。そしてまた、マナは半泣きで坂道を転げ下りていた。
「こないで、こないで、こないで〜!」
全力疾走の理由は、いかにも恐ろしげな吠え声で彼女を追い立てる狼型の魔物、ブラッドウルフだった。
見付けたときは、たった三匹、楽勝じゃない……かな? と思ったのだ。
はじめて見かけるタイプの魔物だけに、痛い目を見たばかりのマナは多少警戒したのだが、兵士になろうと決めて蓄えた中に有ったとある知識が、彼女の背中を押した。
倒した後は解体して、携帯食料の肉片にするぐらいしか利用法のない狼にも、希に貴重なアイテムをもたらす個体がいると。
街の錬金術師たちも血眼になって入手しようとする、その『野獣の血』。
手に入れさえすれば、高くで売り飛ばすも良し、噂に聞く錬金術で、強力な召喚獣を喚ぶために使うも良し。
(にへへ、い〜っぱいお金があれば、私だってこんな只同然の安物カジュアルシャツじゃなくて、色っぽいイヴビスチェや、大人っぽいマダム服を手に入れられるかもしれないよね)
杖だって、ローズロッド、スコヴィルといった国家御用達のブランド物が高望みでなくなるかもしれない。
そうすればぐっと狩りも楽になるし、念願の戦争参加の日も早まろうというものだ。その時だって、威力のある召喚アイテムがあれば新人だからと言わず、すぐに大活躍できる。
そこまで考えて、(よし!)と。
(楽勝……、かな?)という、微妙に自信喪失していたあたりも吹き飛んだマナだった。欲に目が眩んだともいうが。
「たしか、あれって……」
古い建物の名残だろう石柱に身を隠して観察。うろうろと歩き回る狼の姿に目を凝らして、記憶を漁る。
「ええと、ゴブズ・ジャッカル、よね? うん、今の私にだって、多分大丈夫」
なんだ、さっきまで狩ってた蜘蛛と同じくらいか、ほんのちょっと強いだけの魔物じゃないかと、
「よしよし良ぉ〜し、狩っちゃるもんね〜。めざせ野獣の血ゲーット!」
勢い込んで、『行くぜ、行くぜ、行くぜ〜!』と、新品のビギナーワンドを振りかざし―― そしてしこたま噛み付かれた。
「いやぁぁ〜ん、話が違うー」
想像と違う。むしろ思いこみと違った。まるで違った。
蜘蛛とどっこいどころか、ゴブリンよりも素早い動き。呪文を唱えている暇がない。
無理して足を止め、詠唱をはじめようとすると、
「うわっ、わあっ!?」
あっという間に距離を詰められて、囓られる。
遠くからちびちびと光弾で削ろうにも、その攻撃を受けない距離というものを稼がせてくれない。
逆に常に、狼のリーチ。狼達のターン。
タタッと勢いよく迫ってきて、吠え立てる。
必死に揮った杖をかろやかに躱して、更に吠え立てる。
辛うじて隙と呼べそうなものは、その吠え声と共に攻撃を放つ瞬間ぐらいだが、それとて二連撃で放ってくる衝撃波の早いこと痛いこと。
そもそもマナは、敵の見定めに失敗していた。狼の種類を間違えていたのだ。
彼らはゴブズ・ジャッカルよりも上位の種族、ブラッドウルフだった。
ここらのゴブリンの殆どより、確実に強い。
そんな厄介な魔物が三匹も、三匹も群れているのである。
「……ふっ、ふふっ。新米兵士の眼なんて、所詮こんなものだ―― ってことよね」
クールを気取って反省している場合ではなかった。
『ひいっ』と噛み付かれそうになってたじろぎ、そこに衝撃波で『あぷっ』とダメージをくらい、のけぞったところを『あぷっ、あぷぷぷっ!? っぷぁぁぁ〜っっ!!』と、三匹掛かりの連携攻撃でサンドバッグに。つまり、フルボッコ。
這々の体で逃げ出したが、ゴブリンからも逃げ切れない足で、ブラッドウルフの追撃を振り切ろうというのが、どだい無理なのだった。
◆ ◆ ◆ 「分かった、分かったから……。降参っ、仲直りしましょ。ね? ねねっ、ね?」
杖を投げて、愛想良く笑ってみた。
『ガウッ』と、無碍に吠え噛まれた。
またしても獲物は私、私が獲物です状態。
腰を抜かした格好で狼達の目を見上げてみて、だめ押しに、
「う゛っ、魔物って……魔物って……」
みんなこうなの? と、マナは笑うしかない気分を味わされた。
彼らもまた、一度優位に立って見下ろした人間の雌に、あからさまな欲望を見せていたのだった。
「お、おちんちん勃ってる……」
その通りだと言わんばかりに、また狼達がマナに吠えた。
まるで、促しているかのようだ。
負けた以上はひれ伏すんだ。敗北者らしく許しを請え。命だけは助けてくださいと、哀れっぽく媚びてみろ―― と。
(ううっ、もう痛い目に遭うのは嫌だし……)
ごくりと緊張に唾を飲んで、マナは頷いてみせた。
……そうだ、考えようによっては、これも作戦と言えるのではないか。
油断させておいて隙を探す。そして反撃。
(そうよ、それしかないもの)
面従腹背というやつかしら、と思い出しつつ、マナは自分の服に手を掛けた。
狼達はまだかまだかと、ぐるぐるその周りを回りながらご機嫌に尻尾を振っている。
(ははっ、私って逆境でもクレバーな女の子よね。ま、まさに……未来の軍師向きじゃない? ないかな? ……って、ううう〜)
強気を自己暗示して誤魔化そうにも、やはり嫌なものは嫌なのだった。
スカートをまくって下穿きに手をやり、いざ下ろそうかというところで情けなさに視界が滲み出す。
自分はまた魔物なんかに犯されるのだ。
それも、情けなく命乞いするために、自分から狼に尻を振るみたいな真似まで……。
「い、いいもん。明日の栄光のために、今日の屈辱に泣くんだもん」
真っ赤な顔で覚悟して、一気に引き下ろし、両脚から抜く。また破られて買い直す羽目になるより、ずっとマシだ。
脱いだドロワーズは汚れそうにない岩の上を探して、そこに置いた。
殆ど全裸で街までの道を辿った先日ほどではないが、魔物によるレイプ体験を持った今、足下に荒い息を吐いているブラッドウルフがいる前で下着無しになるというのは、すぅすぅと股間が涼しい以上に悲壮にならざるをえない気分だった。
悪夢の処女喪失でされてしまった行為諸々がいやが上にも思い出され、胸元を解く手もカタカタと震える。
それでも上着の前を開いて、乳房を晒した。
「さあっ、犯したいなら犯しなさいよ!」
ぽ〜んと大の字に寝っ転がって、彼女は狼達に啖呵を切ってみせたのだった。
―― しかしマナの精一杯の強がりは、ブラッドウルフの咆吼であえなく『ひいっ』とひび割れた。
「な、なによぅ……。好きにすればって、言ってるじゃない……」
返答は、また一喝の吠え声だ。狼達はギラギラとした目付きで睨み付けて、マナの口答えを叱りとばした。
「ごめんっ、ごめんなさい。謝るから許して、何でもするからぁ……」
すっかり竦み上がった少女に、尚も『ガルル……』と低く、示したままの不機嫌さ。
唸りを三匹で重ねながら、いつでも殺せるんだぞと衝撃波を放つそぶり。もたげた顎に並ぶ鋭い牙が、少女を脅す。
マナは必死に頭を回転させた。
何が気に入らないと言うのか。レイプしてやると言うから、犯しやすいように下着も脱いだというのに……。
「―― ま、まさかっ?」
はっ、と気付いて、マナは狼達を見た。
「あんた達、わたしに……人間の私に、あんた達と同じような格好をしろって。……そ、そうなのね?」
震え声で確認を取る。その言葉が通じている筈は無いが、そうだと頷いているとしか映らない彼らの顔付き。
マナは真っ青になるしかなかった。
「こ、こんな格好で……イヌみたいに……」
うっ、ううっと、結局堪えられなかった涙がこぼれる。
マナは狼達の前で四つん這いになっていた。
そうして下着を脱いだお尻を高々と掲げて、お尻の穴から何から丸見えの陰部を晒す。
股の間に薄桃色の粘膜を垣間見せるラヴィア。純潔を失った恥ずかしい部分を、どうぞと差し出す。
俯いているうなじが真っ赤だった。頬が火照るというどころか、あまりの屈辱感に、耳まで燃え上がる風だ。
ぎゅっと瞑った目蓋の下なのに、今にも失神してしまいそうな目眩がやまない。
(く、くやしいよぅ……)
けれども、今一番の恐怖として少女の全身を震わせているのは、バックスタイルの股間に突き付けられた、狼の鼻頭だった。
もうその意味を知ってしまっているだけに、始まってしまうのが恐ろしい。
想像する材料すら乏しい処女と、具体的なイメージ源に事欠かなくなった身の悲しい差だ。カタカタ、カタ……と瘧に掛かったかの腕は、ともすると崩れ落ちてしまいそうだった。
(ああっ、あそこに……)
内腿に生暖かく吐きかけられる獣臭、狼の息を感じる。
クンクンと秘められているべき場所の匂いを嗅がれ、やがて舌を、女の花弁に見舞われだす。
「あっ、やぁっ、あっ、あはぁっ」
ピチャピチャと、犬がミルクを啜るのに似た音が続いた。
(ほかっ、他のこと考えて―― )
敏感な器官を責められる少女は、どうにかして意識を他に向け、耐えきろうと試みたが、叶うものではなかった。
一本の筋を形作る可憐な姿を取り戻していた性器は、獣の舌で解され、ピンク色の蕾じみて開花しつつある。
皮をかぶったままのクリトリスも、ひっそり隠れた尿道も、膣口も、全てがベロベロと這い回すブラッドウルフの愛撫の下。
別のことを思い浮かべかけたところで、感覚神経の集中する陰核をはじめとしたその敏感な器官は、細大漏らさず加えられる全てをマナの脳に伝えてしまうのだ。
まだ殆ど無毛で幼いのに、女の急所とはよく言ったものだった。
「あはぁっ、あっ、あーっ!」
好意の欠片も抱けない魔物の愛撫でも、それでも愛撫は愛撫。
刺激を受け続けた少女の核が、ゆっくりと充血して膨らみだす。伴われるものは、ジンジンという疼きだ。
おそろしいことに、そこには甘い感覚が確かに存在していた。
「やだっ、なんでっ!? ……っッ、ひっ、あひっ、いやぁぁ〜」
女に生まれた、残酷な宿命だった。
様子の違う動揺を勘良く嗅ぎ取って、獣は尻尾を振る動きを盛んにさせた。同時に、マナの蜜花を嬲る舌にも力が増す。
(嘘っ、うそうそうそ……! 気持ち良いなんて、そんなことっ。だってイヌっ……っ、いや、狼のベロなんだよっ!?)
大部分の苦しみの中の、ほんの一握りの快感として紛れているのなら良かった。
しかし一度でも自覚してしまえば、その存在感は認めがたいが故によけい巨大となって、マナの意識下に鎮座ましましてしまうのだ。
ひょっとすれば、魔物による輪姦陵辱で女にされてしまったマナの体が、急速に官能を成熟させることで苦痛への防衛体制を整えんとしたのかもしれなかった。
そうすれば少なくとも、苦しみが紛れる分のダメージは軽減できると。一面の事実だけを捉えて、少女のナイーブな内面を無視した本能の働きだった。
「あうっ……っぁ、あはゥぅっ、ッ。ど、どんどん……お、おかしくなってる。わたしっっ」
もはや顔を背けていることは不可能だ。
トン、とドッグスタイルの背中に狼の前足がかけられ、覆い被さった彼の獣槍を突き挿れられた時も、
「はあっ、あはぁぁぁ〜っ! だめぇっ。だめ、だめだから……ダメになっちゃうから、入れちゃ駄目ぇっ、抜いて、抜いてよぉ……」
お願い、お願い……と口にする理由は、ゴブリン達に与えられた痛みとは別種の、むしろ自分への恐怖ゆえにだった。
ずんずんと、野生に満ちた抽送が開始された。
舌責めがまぶしたものと、自ずと淫花に湧いたものとの二種の分泌物で濡れそぼつ中を、ぐちゃぐちゃに攪拌しはじめる。
卑猥に歪んだ肉の扉がこじ開けられ、まだ処女の硬さを残すにも関わらず、痛みにも似た肉悦が―― 官能が炸裂した。
狼の屹立は全体的にずんぐりと太いが、先端一箇所にはトゲに近く変化した鋭さもが備わっていた。斜めに平べったくなった亀頭の先で、トゲだけがちょんと尖っているのはある種、乳首の眺めにも似ていたか。ともかくこれが、強かにマナの膣襞を抉り抜いた。
「ん……んふっ、んひゃぅッ、ひっ、ひゃぁァァァー、あ! あはぁっ」
この時たしかに、少女は甘ったるく啼いていたのだった。
◆ ◆ ◆ 「あぁむ、ン……ンンむぅ……ぅ、んむぅンンン……」
そしてそれは、順番待ちの一匹と鼻息を交わしつつ舌を絡めている真っ最中の1シーン。
「うンんん……ッ、っあ、ああっ? アッ、ああっ!? あああ……っ」
あわわと目を剥いてマナは、動物相手に操を許しているこの状況下、これより何をと首を傾げるような、露骨な狼狽を露わにした。
(これっ……これ、これは……)
一匹目がたっぷりの時間をかけて満足を得、二匹目との交尾が開始されて暫く。最初のインサートを迎え入れてからの合計では、相当な長さが経っていた。
なにしろ、狼の精力は人間とは事情が異なる。ほんの一時で忙しなく射精することもあれば、時計の長針が一巡りしても、まだ飽きずにカクカクと、つがいの膣内で肉欲に槍を巡らせている場合もあるのだ。
それだけの間、狼達に激しく愛され通していたマナのラヴィアは、じゅくじゅくと泡立つ愛液と精液の混ざり合いにすっかり加熱させられていた。
ピストン運動に四つん這いで一人と一匹、息を合わせるたび、ふるんと揺れる可愛らしいバストも。丸出しのお尻も。どこもが見事に朱に染まった、体の火照りよう。
合間合間には、まだおずおずとであれ、『あん、あんン……』と悩ましい喘ぎも混ざる。
喘いでまた揺らされる乳房の頂では、小粒の乳頭が分かりやすく明確に、興奮に尖りきっていた。
怒りとか、戦いへの高揚がもたらすものとは別種の、破廉恥な熱情への囚われであった。
だからこそ、マナはその恐慌に直面したのか。
「ンンッ、んんーっ! 嫌、いやぁぁ……! 放してぇっ」
屈服させていた雌が急に顔を嫌がらせたことに、甘い唇を楽しんでいた狼は眉間を顰めさせた。
彼らの不興を買うことをまず恐れていた筈のマナだったが、今は媚び取り繕うどころではないとばかり、
「ここっ、これ……ダメっ。これはダ……ぁぁッ、ッッ、フッ、フグゥッ! ッ、ンンンゥ〜!!」
只ならぬ動揺と共に歯を食いしばり、目蓋を硬くつぶって、うなじを出した細い首を力ませ、打ち揺する。
交合の激しさにびっしょりとなっていた剥き出しの胸元だが、優美に膨らんだ谷間に今たらりと流れたのは、極度の焦りによる脂汗だ。
(に、逃げなきゃ……)
薄い肉唇にずっぷりと打ち込まれた杭から逃れだそうとも藻掻いたが、微塵も抜ける気配は無い。
理由は、狼のペニスの特徴にある。
人にまだしも近しいゴブリン種族と比しても明白な差異。それは先端のトゲだけではない。
ブラッドウルフの牡性器には、雌の膣内に入り込んで後に本領を発揮する武器が、凶悪に備わっているのだった。
根本に膨らむ瘤である。
狼のペニスを根本まで受け容れたが最後、この瘤が膨らむことで容易な抜去は叶わない。
射精の後も暫くは保たれ続ける勃起と繋がりながら、雌は萎えて抜け出していくのをじっと待たねばならぬ。
マナの小作りな膣肉に、殊更みっちりと詰め込まれた感触があるのも、これが元凶だった。膣奥よりも、入り口の陰唇近くがより太い挿入感を味わうのである。
「ひぃん、ぃン、いぅんンンン……」
戦術としての屈服の域を越えて半ば以上、青い性の暴走に自ら堕ちかけていた―― 。
そんなソーサラー少女が、いま再び闘志を奮い立たせねばとせっぱ詰まった様。それも、こうも禍々しい瘤付きペニスにきつく繋ぎ止められてしまっていては……。
「だめ、だめ、だめ……だめよ……っ」
唱え聞かせているのが自分にであれば、この苦悶は何者か己の内に潜むものと戦う姿であった。
だが、せめぎ合いの結果は傍目にも明らかだった。
ずん、と数えるのも馬鹿らしくなった狼の腰遣いが、飛び散る火花を喚んだ。膣内をねっちり延々とこそぎ抜いていた振動が積み重なりとなって、致命打に至る道を付けていたのだった。
たとえ相手が獣でも、一度目覚めた若い性は哀れなくらいに素直でしかない。
貫かれたなら濡れる。突かれていれば悦ぶ。かくも浅ましい宿命をマナへ伝えるべく、沸々と滾った子宮は咽び泣きつつ陥落した。
「うぁ、あああああ……っ」
前触れにぞわぞわぞわ―― と、背筋から全身の産毛が逆立った。予感に少女は慄いた。敗北の、決定的な堕落の予感だった。
ほどなく遅れて到達した波濤じみた感覚が熱く、五体を溶かすほどに包み流してゆく。紛れもないエクスタシー。
真っ赤な顔をくちゃくちゃに歪めて。哀れな泣き声を漏らしながらマナは崩れ落ち、突っ伏した。
突っ伏しても尚、瘤ペニスによって繋がれ、恥ずかしく尻朶を掲げさせられている結合部分には、小水と見紛うほどの蜜汁が漏れ流れた。
快感のあまり遂に内に留められるだけを越えた喜悦が、刹那に増したマナの締め付けと共、結合の隙間から溢れ出たのであった。
坂道に吹く風以上に、ピストン運動に揺らめかされていたスカート裾に、べったりとした染みが増える。
つまりは、
「……い、イっちゃった……」
あはは、はは、ははは……と、擦れた声で改めて口にしてみる。
生まれて初めて、マナが他者によって遂げさせられた肉悦のクライマックス、絶頂。
力の抜けきった躰は指先までビリビリと、痺れに似た心地よさに浸かっているのだけれども、
(ど、どーぶつに、狼に……)
逝かされちゃった、と。ショックは大きく、結局は有り触れた年頃の少女だということに尽きる彼女を、ひどく打ちのめしていた。
「ウォンッ!」
「っあ? ま、待って。まだ、わたしっ……!?」
やはりこの獣にも気遣いはなく、傷心に俯くマナの心中を慮るようなデリカシーにも無縁だった。
そもそも、そんな上等な機微を解する生き物であるものか。ただストレートに、己が欲求をのみ優先させる。
―― まだ自分は満足していない。
それだけの思考の元、マナが恥汁にまみれた無惨なオーガズムを遂げさせられてしまう前後とも変わらず、ひたすらペニスの抜き差しに励んでいるのだ。
腰の引きにずるりと獣のペニスも続き、その太さと、なによりも瘤に引き摺られる媚肉の花びらが、少女の股間に捲れ返る。
次いで、ふやけた泉の底をノックする、逞しい突き込み。
「……っは、ハッ、ハッ……はは……はぉぉぅ」
堪らず、マナは喉を呻かせた。
ずぼずぼ、ずぼずぼと、容赦なく引いて突き、引いて突く。延々と繰り返されるピストン運動だ。
内股を地面に突いた膝近く、さながらオイルを塗ったかの有様にぬらつかせてしまったからには、いよいよ小気味良い音が『パンパン』と、可愛らしいヒップを叩き出す。
「はぉ……っッ、ッアアっ、アソコが、アソコがああッ!」
アクメを迎えた直後。いよいよ感じやすくなっている女の孔をほじられるマナには、追従して共に腰を振るしか残されていなかった。
かくかく、かくかくと。
「もう……許して……。し、死んじゃうよぉ」
悩乱の只中にあるソーサラー少女が、弱音を訴える。
「あそこが……ぁ、私のっ、い、いやらしいアソコが……おかしくって、き、気持ち良くって……死んじゃうからぁぁ」
とうとう、彼女は自分の見出した快感を正直に口にしていた。
悔しげではあるがまた、形の良い眉をハの字によじらせて喘ぐ面持ちは―― 色っぽいピンクに酩酊して、果てしなく心地良さそうでもあった。
長く、そして心ならずも熱く営む獣との一時の間に、地に伸びる影は位置を変えている。
傍らの斜面にくっきりと落ちたシルエットには、背後から四足の獣を跨らせた下半身をのみ残し額ずく女の、淫らな尻振りダンスが映っていた。
直面すれば、消え入りたくなるばかりの卑しい姿だ。
「あ、ああ……アアッ、あ、あん、ああん……」
悦楽の火花に白黒としっぱなしの目に入ってしまうたび、マナは恥辱に身を捩った。痛切の息を漏らした。
(あんまりだよ、わたし……)。
矜持というのをどこかにやった、だらしない我が身。戦いの場に颯爽とあるべき理想を裏切る自分自身を、罵って、哀れむ。
―― 正気じゃないよね。かっこ悪いにも程があるわ。あんまりみっともなくて、見てらんないじゃない……。
そうして同時に、(は、恥ずかしい……)と。
恥ずかしくって、恥ずかしくって……芯まで痺れてしまいそうだと、生け贄の少女は朦朧夢うつつ、伏して喘ぐ口元に涎を垂れ流した。
未来の名軍師を気取る勇ましさも、ネツァワル兵士として人生を踏み出した意気込みも、獣姦セックスに翻弄される面影には、微塵も残されてはいない。
「あっ、あっ、あああ……! ああ! またっ、また……どーぶつちんちんで、わたしっ、イっちゃうよぉぉ―― !!」
叫びと共に再び、きゅ、きゅぅっと、少女の秘肉が締め付けを増した。
窮屈に折り畳んだ白い腹には、激しい痙攣が現れてびくびくと波打つ。
ようようにして埒を開ける気分になっていた狼も合わせて、その膣奉仕を歓迎して脈動を破裂させた。
「あっ、熱い……ぃ」
子宮口をドロドロに洗う射精を浴びて、二度目の絶頂はマナを更に高く吹き飛ばす。
耳元には、遠吠えに似た狼の満足が。
(こっ、これ、ほんとに気持ちいい……)
めろめろに打ちのめされた官能に酔いしれていれば、狼が漸く萎えさせた逸物を抜いていく刺激さえ、甘い鼻息に繋がってしまう。
赤黒く血管の浮いた幹が最後まで引き出されると、トゲより糸を結んだ粘液が、犯された秘唇の中心から地にねっとり滴った。
トサッ。軛たるペニスの引き抜きに、やっと只一箇所の―― そして強固極まりなかった拘束を解かれた尻肉が、這い蹲っていた上半身に続いて重力に引かれる。
ごろりと横倒しに脱力して、ぼんやり辺りを漂ったマナの瞳がこの時、考えられないチャンスの存在に見開かれた。
「―― ッ!」
真っ赤に充血した泣き跡に、暫くぶりに黒曜石の輝きが取り戻される。
三匹で一群のモンスター達、少女の柔肉を堪能した二匹の内、先の一匹は発情を解消したおかげで興味が逸れたのか、もっと坂の下に離れた水場へ行ってしまっていた。
今の一匹もトコトコと、腹立たしい軽快さの足取りで仲間に寄っていくところだ。
残るは一匹。
荒い鼻息をハァハァと、横たわるマナのお尻の辺りに嗅ぎ回り、やっと巡ってきた順番で気が急いて仕方のない様子。
彼女のことを屈服させ済みと油断しきって、普段でさえちっぽけな頭の中が助平一辺倒になっているのなら、
(こいつさえ殺れば……。後はあっちで、しかもバラバラ!)
連携さえ無ければ、個別撃破なら―― やれる!
密かに伸ばした手に、捨てた杖を取り戻した。
尻を向けろと小突いてくる狼に唯々諾々のふりで差し出しながらも、巧みにヒップを左右へ逃がし、恐るべき肉瘤が挿入されるまでを稼ぐ。
口の中では、素早く詠唱をだ。
(バァ〜カ♪ 気付きなさいよね)
輝きが生まれる。完成した呪文がマナの周囲に光のリングとして、高位攻撃のための補助魔法陣を浮かび上がらせた。
三匹目の挿入が完成する寸前、間に合ったのだ。
「死んじゃえ、このスケベ犬!」
体をひねって、半分だけ潜り込んでいた獣肉を引き抜く。と同時に、振り上げた杖からの一撃を見舞う。
「フギャッ、ギャッ、ギャンッ!?」
アイスジャベリン……! 氷の槍が狼の柔らかい腹部を串刺しに、続けざまの光弾が毛皮を真っ赤に染め上げた。
怒り心頭のマナだが、憎々しさに任せて一匹に呪文を使い果たしはしない。
遅まきながら事態に気付いた二匹が駆け戻ろうとしている、そこへそれぞれ、
「凍って、順番待ちにっ、おとなしく……!」
配分を考えて割り振った精神力を注ぎ、アイスジャベリンを疾らせる。
「えへ、えへへへ……。今度はネ、わたぁ〜しがネ、ぶっ……挿してあげる、番なのよっ!!」
貫かれ、凍え付き、氷像と化した狼達は煮るも焼くも自由自在。
嬉しすぎて目つきのおかしくなったマナは高らかに笑って―― 思いを晴らしたのだった。
事が済んで水場で一浴びすませたマナは、全くの無事だった下着に左右の足を通して身に付けると、スカートのポケットに収めた小瓶をご機嫌に確かめた。
『チャプン』と揺れる中身には、採取したてのブラッドウルフの血が満たされている。
「野獣の血、ゲットだぜ……っとね。うふふ♪」