肉体決済 〜レイが全てを売り渡した放課後〜



10.肛姦予告囚少女が見た明日

「……誰、だれなの……!」

見開かれた瞳を飾る睫毛が、信じられないと震えを帯びる。
らしからぬ狼狽を見せるレイは、知らず後退っていた。

どういうことなの?
はっと顔を巡らせれば、彼女の隣で口の端をつり上げたケンスケが。
眼鏡に薄く天井の蛍光灯を反射させて、馬鹿だなと。
その嘲笑が、暗幕を被ってゆらと並び立つ少女、この“誰か”の見えない顔の位置にも重なってレイの瞳には映る。
笑われている――
頬を灼熱させた羞恥に、白皙の美貌が歪んだ。

(見られて、いた……)

全裸を晒すことに恥じらいはない。
目の前の少女も、それを言えば変わりはないのだ。
外套のようにすっぽり暗幕を被った下には、白さが余計に際立つ素足が太腿以下すらりと覗いている。
ケンスケが彼女の腰の辺りに手をやって前へ進ませ、なにやら自慢げに披露する様子でこちらにと―― その拍子に揺れた隙間からは、太腿と繋がった白さの肌が胸の近くまでも窺えた。
あれは自分と同じだ。下着さえ履かされないでいる。
だが、

「……ああっ」

レイは震える両腕を回して、己を庇った。
腹部を隠し、胸元を覆ったのは、桜の色に上気した肌を恥じたからだった。
粒になってびっしりと浮いた汗はまだ乾ききっていない。
せせら笑う少年に嬲られて、声を上げて悶えさせられた名残はまざまざと未だレイの裸に残されている。

(この人、さっきも見ていたの……!?)

ふらふらと後退しながら、身を縮こまらせる。
少しでも視線を避けようと。
腰の引けた不恰好な姿は、なによりも肛辱の痕跡を濃く刻んだヒップをこそ恥じるが故だった。

見られたくない。
この無様を、どうか見ないで欲しい。
頭も完全に覆う暗幕には覗き穴の類は見付からないが、たしかに彼女の顔はレイを向いている。
ただそこに誰かが居るだけで、居たというだけで。レイはこれほどの恥辱に苛まれたことはなかった。
―― 同じではないのだ。
共にこの卑劣な少年のしつらえた場にあって、衣服を奪われた姿。彼女もまたおそらくは屈辱的な取り引きを重ねた果て、良識からどれだけかけ離れた要求であろうとも、黙って従わざるをえない立場へ零落れたのだろう。
しかしレイは、素肌を見せる以上に、まさにケンスケに屈服した瞬間の情けない姿を目撃されたのだった。
尻穴への執拗な姦淫に歯を食いしばった忍耐さえ、終いにはあえなく喘がされていた―― 敗北の姿を晒したのだった。
見世物にされたも同然のこちら。対しての彼女とは、観客であったあちらという絶対的な違いが存在する。

(隠れて、見ていたのね……!)

逆恨みにも似て、恨めしく口を尖らせたくなるのだった。
その暗幕で顔を隠してしまいたいのは、よっぽど自分の方だと。

「なに恥ずかしがってんだよ。らしくないなぁ」

ニヤニヤ言って、ケンスケはまぁいいやと改めて物言わぬ少女を示した。

「ほら、こちらさんだってノーブラ、ノーパン。マンコ丸出しでお仲間じゃん?」
「…………」

少女は、暗幕の裾を持ち上げられてしまっても一言も漏らさない。
自然、レイの目は露呈させられた下半身、秘部に向かった。
しみ一つない初々しい肌の下腹部がふっくら膨らんだ丘には、この年頃になれば有って当然の恥毛が僅かとも認められない。
まるで童女のように、足の付け根からやわらかく切れ上がる割れ目が一筋、そこに熟しきらぬ性器の存在を主張するだけだ。

「分かる? へへ、こいつのは綾波のツルマンとは違ってさ、剃ってもらってんの」
「剃った、……何故?」

ある意味素直に聞き返そうとして、いやそうではないと首を振る。

「……それより、モデルというのは何のつもり? 誰かを呼ぶなんて、聞いてないわ」
「そう怖い顔すんなよ。急に口数、出てくるし」
「…………」
「さっきはあれだけ頑張って、だんまりを続けてたくせにさぁ」

ケンスケは、レイが一番苦しむ乳首やアヌスといった場所を責め立て投げかけ続けた、卑猥な質問のことを揶揄した。
淫らな感覚を鋭く生む場所をねちねちと愛撫され、出したくもない声を上げさせられてしまった悔しさを、嘲弄しようというのだろう。
レイはきゅっと唇を引き締めて、そんなこと聞いていないと、眉間をきつくさせた。

「……このことは、誰にも言わないという約束だったわ」
「秘密は守るって、綾波。大丈夫、大丈夫だよ」
「なら……!」

顔を隠し視界を塞いでいるのなら、せめて言葉に配慮してさえくれれば……。
だのにそうして綾波、綾波と、馴れ馴れしくことさらに名前を呼んでくるものだから、

「……この人はもう、知ってしまっているのでしょう。私と……あなたのこと」

首筋にかかる色素の薄いショートカットをゆっくり振りつつ、零す。
とがめる言葉も萎れていき、俯き加減にしたその顔は、怜悧な普段よりも尚凍えた気持ちに強張っていた。

「…………」

暗幕の彼女はなにも答えない。
俯いた目元を見え無くさせる前髪の間から一度、彼女の黒い佇みようを険しく見やった後は、レイの眼差しは足元へとうな垂れた。
ズック靴を脱いだ黒のソックスは、写真部室の掃除もろくにしていないのだろう撮影ブースに上らされ、埃に汚れている。

「もう、知られてしまったわ……」
「噂になる、碇にもバレる。だからお終いだ〜って?」
「…………」
「おやまぁ、しょんぼりしちゃって。鉄面皮だの冷血優等生だの言われてるってのに、綾波も可愛いよな」
「……っ!? ダメ……!」

落ち込んだ隙を突いてさわさわ、デリカシーに欠けた手付きをヒップに回され、レイはカッと眦をつり上げた。
どこまでも……! その憤りがしかし、ケンスケの薄笑いを貫けない。

「あっ、つうっ」
「良いオッパイだよなぁ?」

強引なケンスケは、レイの胸を庇おうとする腕もこじ開ける。

「うちの学校だと三年の先輩達とか、意外なところじゃ委員長なんて揉み応えのある女の子が揃ってるけどさ。綾波のも好きだぜ?」
「やめ……」
「可愛いサイズだけど、形はきれーだし。特にこの、乳首の――
「ッ、ううっ」
「透き通ったピンクとか、綾波の雪みたいな肌にさ、組み合わせまさにどっかのお姫様かよっつーか。写真映りなんか最高じゃん。すっげ〜良く売れてたんだぜ? 着替えン時のポロリとかなぁ〜」

左胸をしっかりと捕まえてしまって、指先を立ててギュッギュッと握り込んでくると。まだまだ蕾、芯に硬さを残した乳房には、赤く男の手形が刻まれてしまう。
―― この胸は、もうお前の持ち物じゃないんだからな?
言葉にせずとも寧ろより明確に。乱暴に愛でるその手が、契約という抗いようのない戒めを彼女に突きつけてくる。
それだけで、レイが滾らせた反抗心はへし折られてしまった。

「……っ、うっ、うう……」

勝ち誇った目付きで双乳を交互に翻弄されても、好きにさせるしかないと手はだらりと下げて、かすかに息を詰まらせるばかり。
可憐な乳頭をくりくりと摘んでいじられると、胸を晒すだけでは物怖じしないレイも顔を真っ赤に変えてしまう。
せめて、居合わせる彼女からその顔だけもと、背けるのが関の山。

かつての人類守護の勇士、綾波レイは、処女を失ったあの日から―― 確実に弱くなっていた。
少女たちの気高い魂を貶める手管に異様に長けた級友、相田ケンスケ。彼が仕掛ける罠、牝奴隷化のプログラム。泥沼のように続く日々が、たしかにレイの清冽で凛とした精神に腐食を及ぼしていたのである。
それを良い事にケンスケは、美しい同級生の裸身を好き勝手弄ぶ。
自分の胸に抱き寄せるようにしてフンフンと少女のかぐわしい体臭を吸い込むと、先程から追い散らせぬままその肢体に宿っていたアヌス責めの熾り火に、再びねちっこい愛撫を注ぎ込んでいくのだった。

「乳首、また固くなってきたな。感じてきた? こうやってクリクリぐりぐり、痛いって手前までしてやるの好きだよな?」
「…………」
「ああ、だんまり再開なわけね。ま、いいけどさ。綾波のだんまりは気持ち良いですって言ってるのと同じだし」

―― あんあん可愛い声を上げてくれるまで、しばらく離さないから。
そう耳元に囁いて青褪めさせると、哀れな虜囚が嫌がるのも構わず、視界を封じられた目撃者たる暗幕の彼女の方へと運んでいく。

「だ、だめ……」

デスクの傍まで引き戻され、とうとう間近に向き合わされて、か細い悲鳴を上げてしまった。そのレイの声に反応したのだろう。
目隠し状態にあって茫洋とただ佇んでいた黒衣の頭部が、はっきりと彼女に振り向いた。

「……!!」

既にこれまでの声から粗方は掴まれていようが、それでも聞かれたくない。
綾波レイが、この自分が上げる、かくも惨めな声は――

「ははっ。暴れんなよ、綾波ぃ」
「ッ、ダメッ……っッ!」

ぐにりと乳首を潰された痛愕を、堪えきれず仰け反ってしまう。
逆らうなとケンスケは言っているのだ。
そうして時に痛みで、家畜を躾けるように。
今度は胸を扱われても、抗議はする前から封じられてしまっていた。

「見られたく、ないんだろう?」

レイは必死に首を頷かせた。
従ってみせねば、きっと次は“彼女”の目隠しが取り払われてしまうと匂わされたから。

「大人しくしてれば……、今日は最初に言ったみたいに綾波の方が観客だからさ、まずは」

ケンスケはレイを抱いたまま、片腕でデスクの上からバイブを拾い上げた。
ほらとその模造ペニスを暗幕の少女に押し付けると、布同士の合わせから伸ばされた手が覚束なく受け取って、

「じゃ、はじめろよ。モデルさんらしく頼むぜ?」

命令し慣れた声を合図に、遂に彼女が動きを見せたのだった。



◆ ◆ ◆



先程は、肛辱の味を教え込もうと指を使うケンスケにレイが啼かされ続けた撮影ブース。
どこからか持ち込まれたスタンドで照明が明るく何本も立てられたそこからは、間に挟んだデスクが余計に濃く影を落とす窓際。その床に、今から腹這いになろうとする彼女の、品良く引き締まった尻朶が揺れていた。

元来が光源に乏しい部屋の、さらに隅だ。
明かり採りの窓もカーテンを引かれた上で、影に沈む彼女は、目の前と言っていいこの近さであって正体を掴むのを難しくさせている。
相田ケンスケが目を付けるのだから、同年代の中でも整った顔立ちをしているのだろう。
伏せた背中をずると暗幕が垂れ落ちれば、足りない裾丈からはみ出す、素裸の下半身。
容貌の美醜に関心を寄せないレイだ。赤い眼は特別な価値を見出すことはなかったが、彼女の腰高にスマートなヒップラインと、きめ細かな肌は、特筆に値するものだった。
彼女が校内の者なら、候補はそう多くあるまい。
このスタイルなら、ティーン向けのファッション雑誌等で容易にモデルの座を掴めよう。
見るからにすべすべとした双臀は、白磁の白さ。アルビノの外見を持つレイにも引けをとらない。
唯一の衣装として裸身の半ばまでを覆っているのが、暗がりに溶け込む黒布であるせいか、そこは余計に際立って真っ白く。もぞもぞと低いドッグスタイルで蠢く臀丘の様子を、ぼうっと浮かび上がらせている。
こちらが顔を熱くさせたくなるほどに、なまめかしかった。

(ああっ……)

捕まえられたまま胸肉を揉みしだかれているレイは、その無残さに顔を背けた。
服従を表すのにも似て手膝を床に突いたポーズで、いよいよ―― 泣く泣くの覚悟を決めたのか。
それとも、唯々としてケンスケに従っていた姿から漠然と己がこの先を恐れさせられたように、もう泣く泣くでは無いのだろうか。長く嬲られ続けて、抵抗の意思など磨耗しきっているのだろうか。
表情の窺えぬ彼女は、黙ってポーズを取りだしたのだった。
うつ伏せをとって、まるで隠さないヒップを見せ付けたのは序の口。ごろと身体を転がして右を向いた側臥に姿勢を変えた彼女は、そのまま左膝を起こして胴の横に折り畳むと、バイブを持った左腕をふくらはぎと腿裏の間にくぐらせ、しっかり引き寄せてしまったのだ。
そうやって割り広げてしまえば、本当に隠すものは無くなってしまう。女の羞恥の源泉が、丸出しだ。

「なんか、イヌのしょんべんポーズとか思い出さない?」
「…………」
「もっともあれって、足を上げてするのはオスだけで、メスはしゃがんでするって話だけどさ」

くつくつと楽しそうにおどけるケンスケが、レイはひたすら不快だった。
性器から肛門から、なにもかもがぱっくりとさらけ出されている。
そして、ぬめぬめとひくつく内部構造までくつろげられたこのデリケートな部分には、淫猥な写真とビデオでさんざん“教育"されてきたレイになら、今はすぐにそうと分かる性交痕が明らかであったのだ。

(男の人の……)

誰がと言えば、それを放ったのはケンスケ以外に居るものではない。
何時のことなのか。きっと、レイを部室に呼んで新たな「略奪」を行い、手にした乳房と尻肉とを弄ぶに及ぶ、その前にだ。

(匂い、……気付けなかった)

戦慄きながら赤い瞳が見開かれた。

(この部屋にくるといつも嗅がされていたから……。慣らされていたのね、私)

連日の写真部室通いを強制されるようになり、ケンスケの手淫を手伝わされて、時には顔にびちゃりと噴き上げたものを引っ掛けられもして。いつも表情にこそ出さなかったが、不快な臭いだと嫌っていた。
ところがいつしか、部屋に漂う濃厚な痕跡であったのに、特別な警戒が働かなくなっている――
レイは愕然とする思いだった。

ファーストチルドレである彼女の過去を思えば、時に刺激臭も伴う薬品漬けの被験者生活があった。
生臭いLCLに文字通り身を浸すドグマで、エントリープラグで過ごす時間が長かった。
人並みの暮らしを知らなかったとはいえ、決して快適だった筈はない。
そんな日々に生きてきて、鈍磨という形でレイの嗅覚が見せていただろう適応。それがここにまた、ケンスケとの日々に発揮されていたという程度、だったやもしれない。
しかし最悪のロストバージンを迎え、ともすれば自身を穢れたと思い悩む彼女には、恐れていた精神の磨耗の兆しにすら思えたのだ。

「い、いや……」

ケンスケの言葉に人形か奴隷のように従い、他人の目がある前で犯されたばかりの股を開いてみせる。
今や怯えるべき未来の具現となった彼女を、レイは瞬きを忘れて見詰めた。
私もこうなってしまうのかと。
そうして気付いてしまえば、練乳めいて襞粘膜のあわいにてらつく、精液。それは、アヌスのすぼまりからさえ垂れ落ちようとしていた。

「…………」
「分かるよな? ビデオとかで見せたことは無かったけど、頭の良い綾波のことだから、もう簡単に想像が付くだろ?」

抱きすくめる肩越し、頬に口を近付けた生暖かい息と共に囁かれた。

「アナルセックスって、言うんだぜぇ?」

また汗ばみだした乳房を揉みこねていた指先がとんとんと、胸の中央に。胸肉が薄く、一際華奢な感触を返す膨らみの谷間に『分かったかい?』とでもの小突きを寄越した。

「ああっ」

では、わたしは……、やはり――
レイは己の無知を呪った。
肛門性交、その知識さえあれば、と。
決して軽々に行った決心ではなかったが、それにしても。知ってさえいれば、ケンスケとの取り引きに尻を売るだのと言い出しただろうか。

―― 犯される。
あのペニスを刺し込まれて、今度こそ他でもないこの相田ケンスケに、犯されてしまう。
たとえ使われる場所が本来の性器ではないにせよ、寧ろ肛門などという正気を疑う場所で行うというからこそ。
レイの脳裏には、規則正しい揺れに包まれた電車で自分の中に硬くもぐり込んできた、あのおぞましい感触が蘇っていた。

(今度は……、彼の、あれが……?)

無理だわ。先刻、指一本を突き立てられただけでそこは一杯だったというのに、と。

「そんなこと無いよ。可能可能、全然大丈夫。綾波にもちゃんと出来るように準備してやるし」

ケンスケは『準備』という部分に特に楽しげな声色を込めて言った。
勃起した強張りを、背後からズボン越しに擦り付けてくるのが忌まわしい。

「ま、こいつのケツ見てればさ、そんな必死に首を振って嫌がらなくっても良いって、分かるって」

だから、“モデル”なのだと。
今からその模造ペニスを使って、実演してみせるからと。
信じられない思いで、見えもしないのに思わず黒覆面状態の表情を窺ったレイは、決して彼女も平静ではないのだと知った。

(あなた……!?)

暗幕で覆われた口元に、ぎゅっと食い縛った口の形が浮かび上がっていたのである。
彼女は、レイに気付かれずに部屋に潜む目的で、そして今は素性を隠す覆面に被っている暗幕の布を、この瞬間、耐え切れなくなった感情が迸るのを殺すため、きつく噛み締めていたのだ。
そうまでしての屈服で、同性の目に無様な肛孔挿入オナニーを演じてみせろというこの役割に、従っている――
なるほど確かに、顔を隠しでもしていなければ、死にたくなるとはこのことだろう。
レイも最早、やがて尻からケンスケに組み敷かれ、彼のペニスでもって犯されること、逃れられぬ運命であると悟らざるをえなかった。

「あ、ああっ……」

牡臭に馴染んでしまっていた自身に怯え、他人事ではない彼女の飼い慣らされてしまった有様に震え、悄然と。
立ち尽くすばかりのレイはしかし、少女としてより恐怖を抱くべきであったもう一方での変事に、気付けていなかった。
或いはただ、目を背けていたかっただけなのかもしれない。
我が身自身の、忌まわしい変調であったればこそ。
だが、だ。

「……っは、はっ、はぁっ」

熱っぽく胸を喘がせる吐息である。
その可憐に盛り上がった先端では、小粒ながらぽっちり膨らみ勃った乳首。
そこをケンスケの指先に圧し転がされ、ピンクの乳暈も指同士の間に絞り挟まれて、優美に張り出した全体の形さえ、残りの掌にゆっくり変えさせられ続けている双つの白鞠。
それら胸元全体に、紛れもない官能による紅潮が、目にも鮮やかな昂ぶりとして顕われているのである。
ましてや、より如実に表してしまう顔はと言えば。

「んぁ……、ぁ、ああ……」

そうやって胸乳全て余さず執拗に愛撫されていれば、何食わぬ振りを貫きたいレイであろうと、とてもとても叶わない。
真っ赤の顔を傾け傾け、『……ぅ、ンンン……』と男には堪えられぬ鼻息をこぼしだす。
ケンスケが押し当てる強張りを嫌がり、男の腕に拘束された煩わしさのため、それだけだと本人は捉えたがっているのかもしれない身じろぎも、傍目には違うのだ。
疼く一方の性感ゆえと、もどかしくてならない腰のくねりだと、そう映るものでしかないのである。
攻略不能の無愛想さで幾人にも歯噛みさせてきた綾波レイは今、事実、手もなく、ケンスケに喘がされてしまっていたのだ。

「見てろよ、綾波……。ほぅら、おっ始めるぜ」
「はぁっ、あっ、あ……」

そして遂に、下肢を割り開く腕をそのまま股間に伸ばし、逆手に握ったバイブをアヌスに添えた彼女。白濁に濡れる後肛のすぼまりへ、侵入を開始させようとする暗幕の彼女を、見詰めながら、

「あぁ……、あ、あぁ……」

レイは次第に悩ましい鼻息をそよがせて、よじり合わせる内腿をしっとりと、ぬるぬると―― 湿らせていっていたのだった。



◆ ◆ ◆



頼りなくまとった暗幕は、床の背中に敷いて今はみすぼらしいシーツでもある。
丈の足りなさからはみ出す腰より下は、薄汚れた暗灰色のリノリウム床で直にヒップを寝かせねばならない。
清潔さに一際気を遣う思春期の少女であろうに。尻朶が触れた冷たい床の感触に対しては、彼女は新たなたじろぎを示しはしなかった。
―― 這わされ慣れているのだ、この床に。
そうレイは考えた。
側臥からがばと割り開かれた一対の真白い脚線は、斜めに崩れた歪なM字を宙に描く。
引き攣りそうな震えを美しい腿肌に細かく帯びっぱなしでいるのだから、付け根の姫割れを浅ましく暴いているのは、決して彼女の本意ではないのだろう。

「……ッ、ウゥッ……」

布を噛んだ口元からも、呻きに近い息遣いが漏れる。
しかし動きに遅滞は無い。
膝裏に腕を差し入れて、この媚肉展翅を固定する。と共に、逆手で保持するバイブレーターを己が羞恥の源泉に滑らせていく。
そのなめらかな動きが、レイの先の推測を補強するのだ。
この無残な淫らさを、やはり演じ慣れている。
当然、真っ当な女子中学生の覚える仕草ではないのだから、ケンスケが教えたに違いない。
繰り返しの強制をもって訓練したのに、違いない。
丁度、この部室に通わされたレイが幾度も「手の代わり」だと言って手淫を手伝わされたように。
椅子に腰掛けたケンスケが傲慢な態度でズボンの足を開いてみせれば、黙ってその間に跪き、白い繊手でジッパーを下ろして取り出してやる一連の奉仕に、慣れさせられてしまったのと同じように。

「…………」
「フッ、フッ、……フウッ」

ケンスケのものと思しきスペルマが垂れる秘淵に、彼女がバイブの切っ先をヌルヌル上下させている。
潤滑油のつもりでまぶしているのか。黒い樹脂に、少女のスリットをぬかるみにしていた白濁液がねばついていく。
性具の径は、レイの純潔を破ったような成人男子のものに比べれば細身。そう目検討は付いたが。であっても、懸命な身じろぎにつれて息づく後孔の、ひっそりとした佇まいにはどうだろう。
しかし黒衣の彼女は、スリットからポタポタと澱んだ滴を垂らした先端を、そのまま下へと移してぐっと力を込めたのだ。

(……受け止められる、ものなの? そんな……!?)

何度目になるか、何事にも無関心、無感動で鳴らしてきた綾波レイの顔には、まさかという驚きが広がっていた。

「ッッ、フゥゥッ!」

彼女と自分はほぼ同じ体格に見える。同じ年頃だ。だのに、信じがたい呆気無さで、ずぶり深々と。
菊の蕾めいてすぼまった排泄孔へ迎え入れるための力みが、少女のすべすべとした腹部を波打たせる。
樹脂製の亀頭を飲み込んだアヌスは、くぐもった呻きを伴奏にして―― やがてリズミカルに抜き差しさせるまでに、彼女の躯の柔軟さを見せ付けはじめた。

「……ッフ、ンゥゥウッ、ンオッ、ォッ」

肛門の中心を黒い幹が穿つピストンの度、皺を引き伸ばされた入り口に、あらかじめ注がれていた精液がグチャグチャと泡を立てる。
堪らず、首をのたうたせる彼女。
押し殺した声は、擬似的な肛門性交が続けられるほどに妖しさを増していった。
胸の前で暗幕を押さえつけていた握り拳も、今やギュッと力が込められているのは別の意味合いからだろう。
疑う余地はない。
悩ましい咽びを振り撒くその少女は、排泄器官を通じた変態的な性感にはっきり悦んでいる。
直腸粘膜を力強くこそいでいくカリ首に、躯の内側深くからの官能をふつふつと炙られているのだ。
つられるように、瞬きを忘れさせられたレイも息が上がっていく。圧倒されていく。

「……はっ、はっ、はっ……んンぁ―― は、ああっ!?」
「どうだい、納得した? 女の子はケツでも充分イケるって、これが証明だよな?」

激しいアナルオナニー上演にすっかり魅入られていたと、気付いていただろうか。
レイの熱っぽい吐息の繰り返しを驚き詰まらせたのが、再び尻のあわいを脅かされた不意打ちだった。
さわさわと青い林檎のようなヒップラインを撫ぜてくる、手。
汗ばんだ頬にシャギーのほつれ毛を貼り付かせ、ぎくりと振り返けば、ケンスケの胸にすっかり抱き包まれてしまっている。

「そ、さっき綾波も大悦びしてアンアンよがってたココだよ」
「や、やめっ……」
「いまさら全然感じませんよ〜って、そんなの嘘だよなぁ?」

胸はドキドキと高鳴って、いつの間にか妖しい感覚を宿らせてしまっていた。
淫らに尖りきったニプルの先端は何だ。まるでケンスケの指先に悪戯されていたのを嬉しがっているかの有様ではないか。
そして、ぬめる感触を膝近くまで垂らしてしまっていた内股は――
(私、なんてこと……)と、その自覚に湧き上がった最大限の羞じらい。そして、失念から引き戻されて改めて再認識したケンスケの荒い鼻息との距離への焦りは、同時だった。

「カラダ、暖まってきた?」

しっかりと腕を回して抱きしめて、右手はゆっくり乳房をこね、左手は尻肉の谷間に差し伸べられている。
傍目にはさながら情熱的な恋人たちの抱擁だ。それも夜の時間を始めようとする。

「あ、あっ……」
「綾波もエロい身体になったよなぁ?」

気付かれていた!?
レイはかっと頬を燃やし、ケイスケは口元をいよいよニヤつかせる。

「当然だろ? 綾波の手コキ指導から貫通式のプロデュースまで、一から開発してやったのは俺だからさぁ」
「あなた……!」
「怒ってみせたって、ね」
―― ッア、ああうッ!」

『で、今はケツ穴絶賛調教中ってわけさ』と嘲笑して、小ぶりの尻肉をこじ開けた指先で入り口浅くを抜きつ潜らせつ。
悩乱してもがくレイは、貧弱に見えてそれでもの男女の性差、男の腕力というものを思い知らされた。
―― 逃げられない。
ただ、兎のような色をした目で惑乱しつつ腰を暴れさせ、『あ』、『ひっ』、『はぅ』と、ケンスケを喜ばせるピンク色の悲鳴を上げるばかり。
撮影中の執拗なアナルマッサージが目覚めさせた、それだけだとも思えない過敏な反応、A感覚の鋭さだ。
ただただ翻弄される一方。
良いように弄ばれて悔しいと思うのに、どうにも女の胎が熱を宿す。加熱させていく。
秘肉の縦溝からトロトロと、蜜を漏らしていってしまうのである。
そのBGMには、バイブを操りつつ駆け足で絶頂に登りつめようとする暗幕少女の悶え啼きが、低く、重く、響き続ける。

「フゥォッ、オッ……ンォオオオ! ンーッ! フゥゥーッッ!!」

アヌスを思うさま、狂おしげにほじくり回している。彼女の悦がりぶりはといえば、布地に噛み殺そうにも到底足りていないといった、派手な勢いだった。

「ンッ、ンゥッ、ンゥオォォォ……!」

口を塞ぐものが無ければ、きっとそのあられもない咽び泣きだけで、今の狼狽するレイの心を打ちのめしただろう。
何せ、だ。レイが見せられた、ケンスケ所蔵のポルノ映像たち。その出演者らがしていたのとは違い、彼女はまだ慎みがある方なのだ。
あのアダルト女優達、犠牲者としての先輩達は、聞くこちらの方がいたたまれなくなるほど正直に、具体的に、「証言」させられていた。
それに比べれば、ああやって暗幕に声を押し殺している彼女は、まだ物静かだとすら言える。
ここが感じるんですと。そこをされると嬉しいんですと。マイクに向かって延々大声で白状させられていたりはしない。

それでも、だった。
細腰をガクガク派手に揺すって、深々と埋もれさせたプラスチック・ペニスに、感涙だとばかり前門からのおびただしい淫蜜をまといつかせている狂乱ぶりは、千言費やすよりも尚勝る。
後輩となる運命のレイに向かっての、雄弁極まりないアピール、だった。

「ケツ穴、最高よ〜って、さ。こいつは全身で表現してるわけ。先輩として教えてくれてるんだよ、綾波に」
「……っ」

この期に及んでまだ、努めてポーカーフェイスを装おうとするレイ、であっても。かわいい耳たぶまで雪肌をカッと熱くさせていれば、分かり易いとしか言う他ない。
更には、きつい窄まりにとうとうねじ込まれた中指が悪戯な動きを見せるたび、

「ッあう!? ……ッッ」

と怯え、菊襞できゅんきゅんと締め付け返してくる反応だ。
実にいじましいと形容すべきか。

「はぁ……、ぁ、ああ……」

畳みかけるかの責め嬲りに、ルビーの双眸はほの暗く輝きを曇らされゆく。
そこへまだ、これでもかと、まさに目の前で演じられ続ける激しいアナルオナニー・ショウ。
こう間近では顔を背けようもなく、またそうしても意味もなく、恥知らずな光景は目から次々飛び込んでくる。
その全てを、どうしても少女の優秀すぎる頭脳は事細かに分析してしまう。蓄積してしまった知識と照合して、そして意識してしまうのだ。
自らの、今は未だまっさらな佇まいの筈の、それでいて彼女のごとく淫楽に興じる使い方もあるのだともう知った―― 肛孔に、奥へ奥へ収まってやろうと蠢動する、細長い形状を。
未経験のアヌスを陵辱する中指は既に、第二関節近くめり込んだ有様。
ゆるゆると蠢きながら更にを窺う動き。これをケンスケは、痴女じみた床の彼女が股間でさせている手付きと、意識して揃えていた。

「おー、お、激しい突っ込み方するねぇ〜、彼女。こんな感じかなぁ?」
「あっ、ああっ。アァッ……!」

似せているんだぜとレイにも伝わるように、いちいち声に出しながらで。
故に、綾波レイのかつてない程の動揺は時を追うごと深まり、薄く涙さえ浮かべて、

「躯は正直、ってやつだよな」

―― と、見透かした目付きに笑われるのである。
あらゆる内心を覆い隠し、ただのクラスメイトなどの前では外されることのなかったクールフェイス、冷然とした無表情は、既にそこには無かった。
ケンスケがこの部屋で裸にさせてきた多くの少女たちと、今や何も変わることはない。

「よく理解出来てきたみたいじゃん? 実例を見て、可能だなんだって知って。ほぉ〜ら、もう問題なしだろ? さっさと覚悟決めて捧げてくれよ、綾波のアナルバージンってやつをさ」
「っ、バ……!?」
「そ、綾波のもう一つの処女。ケツ穴のはじめてってやつ」
「……無理、無理だわ……」
「どうしてさ? ぶっちゃけちゃうと、こいつも綾波と歳ぜんぜん変わんないよ? 体付きも大して違わんないってのも、見てりゃ分かるだろ? ……ほら、よく見てなよって」
「……ああっ」

竦み上がった尻穴の中で、少女のほっそりとしたものとはあまりに違う指腹がくるり、くるりとねじ回される。
軽く曲げられた節くれが、捻りにそって菊襞の内側に強張った感触を与えていった。
その効果は、『ヒゥッ』と空気漏れのように漏らされるレイの悲鳴だ。
もし見ていたくないと瞼を閉じれば、顔を背けたりすれば、そうやって「仕置き」されるのだと悟ってより、レイはいよいよ、従順に見学し続ける他なくなった。

「ウウウッ―― ッ、ッッ……。ッ〜ッッ、ウゥゥ……ッ! ングゥゥゥ〜!!」

バイブの抽送に酔い痴れる彼女は、遂に子宮の疼きに抗し切れなくなったのか、暗幕を押さえていたもう片手を放し、股間での行為に参加させていた。
グチュグチュと、薄紅の粘膜器官が汁まみれでくつろげられる割れ目にあって、盛んにぬかるみとその縁の肉芽とを刺激している。
幼女さながらに綺麗に剃り上げられた恥丘の様子が、貪欲に駆使される指の動きを分かりやすくさせていた。

「良かったじゃん。あれもう、こっちの声とか聞こえてないぜ? 綾波も安心して声出せば?」
「……ッッ」

『へへっ』とケンスケがあからさまに馬鹿にしてみせたのはレイか彼女か、その両方か。
その間も、素顔の知れぬ彼女は腰をうねらせ、胸を上下させる激しい悶えぶり。
見せ付ける役目からよりも寧ろ、ただ股間に両手を集めまさぐるためと化した貪欲な開脚ポーズ。M字の姿勢を保ち続けるその片膝が、すぐ傍のデスクにぶつかって側板でガタガタと音を立てる。

「フゥゥ〜ッ、フッ、フウウッ、ウグゥッ! ウィヒィィ……ッ、ヒィィィ〜ッ……!!」

下肢が宙を掻くたびにぶつかり、痛んでいるだろう膝のことも。ひぃひぃと背をのたうたせるには堅過ぎる床のことも。最早どうでも良いのか。

(どうして……)

眉間に皺寄せた苦悶の中にも物問いたげな、そんな切実なレイを顧みることもない。
ただただ浅ましくバイブを操って、ただただ秘唇にクリトリスをまさぐり啼いている。
そうしていれば当然、疎かになる部分もあるだろう。
留めるものが去っていった外套の合わせからは、汗をびっしりと浮かせた乳房やその先端の色づき、そして『アグゥゥゥ……!』と反り返る顎の、品良く尖った形がチラチラと覗く。時に危うく、喉元深くまでが垣間見えるのだった。

「ンウッ、フッ、フーッ!」

逆手に握られた淫具が、同い年だという少女の尻穴にずっぷりと飛沫を散らし、また深く突き立てられた。レイの目には信じられない位にだ。
そうやって深く抉る程、悦いらしい。
のたうちで表される悦がりぶりも尚派手に。
そうなればやはり、上半身を覆う暗幕も乱暴な身じろぎにずり落ちていく。
今は布地を銜え込んだ口元だけが唯一の留め金で、辛うじて頭部だけは覆い残せる頭巾状態にまで、役目を減じていた。
正体を隠そうという、その意識自体が二の次になっているのだ。

―― そんなに夢中になれるというの? 排泄のためにあるところを貫かれる、そんな行いには。
拠って立つ世界が、根こそぎにひっくり返されそうな危地に立つレイを他所に、

「……ッ、ムゥッ、ムゥゥゥフーッ! フッ、フゥゥ―― ッッ!!」

少年の完全な慰み者ぶりを演じ続ける少女は、いよいよの感極まった境地に昇りつつあるらしかった。
汗でてかる腹部がすっかり臍まで露わになって、痙攣じみて波打ち出しているのだ。
ばね仕掛けの玩具のように、濃い愛液でびしょ濡れの腰が前後に打ち揮われる。何度も、何度も。
右腹を下にして横たわる、見ようによっては犬の小水ポーズにも似た姿勢。これを保ち続ける片足が、盛んに宙を掻いていた。

イクのだと、レイにもはっきり分かった。
そして、そのことに対する一切の躊躇いを、彼女から見つけ出すことが出来なかった。

(……わからない。わからないわ……)

ヒトであることを捨てたかの有様で、ひたすらに理性を虚ろに。肉欲への耽溺を全身で肯定して恥じようとしない、くぐもった嬌声。
菊座をぐちゃぐちゃと掻き回す、猛烈なバイブ・ピストン。
自涜の責めを見舞う手付きは加速するばかり。一目散に、クライマックスへ駆け上がろうとしている。
この解釈で間違いないと、ここまでくればレイにも理解出来ているが、であってもまさか、どうしての思いは募る。
相田ケンスケのような最低の少年に命じられたまま従順に、乙女として最大の恥を晒す。
本気で演じてみせるつもりなのだろう。レイに、アナルによる絶頂を。
それが信じられない。
自分という見ず知らずの―― 本当に見ず知らずだろうか―― 相手に、それも同性に、こんな間近で見られているというのに。
どうして出来てしまうのか。

(ああ……)

両の胸へ交互にもらう揉み捏ねによる、今やまだしも好ましいとすら感じる甘やかな疼痛が、じわじわと思考を蝕んでいく。
熱い、とレイは身悶えた。
怖い、と背筋に怖気を覚えた。
こうしていると、すり替わってしまいそうになるのだ。
身震いするばかりのおぞましさだとしか捉えていなかった、アヌス責め。それさえ、次第に鈍く回らなくなっていく思考の中、靄が掛かりゆく意識の果て、するりと苦痛ではないものに入れ替わりそうに、なってきているのだ。
もしも本当にそうなってしまったら、

(わたしも……、あの人のように……?)

揉み続けられる乳房。
くじられ続けるヒップの中心。

「あんあん言って悦がれるなら、ケツ使おうがどこでだろうがどうでも良いんだよ。あいつは、っつーか、女の子みんな、な。一皮剥いちまえばだけど」

『見れば分かるだろ? イッちまうくらい気持ち良いんだよ』と、盛んに吹き込もうとし続ける少年。
いちいち否定を返すのが、どんどんと億劫になっていく。

「ああ……、ああぁ……ぁ」

尻穴をいじられて、レイがだらしのない鼻声で泣いてしまっているのは事実なのだから。違う、いいえと、言い訳の理屈を見つけ出すのが難しくてならなくなっていたのだ。
思考のゆるゆるとした停滞を自覚する。
いけない、と思っても、瀬戸際に踏ん張ろうとする意志の力が保てない。

「……ム、ムフゥゥゥ、フ、フーッ。フフーッッッ! フゥゥゥーッ!」

足元の床からは、獣の唸り声にしか聞こえない悦がりの懊悩がいよいよ荒く響いて。火照りっ放しの耳朶からを、いたたまれなく乱打している。
ただ、とにかく、恐ろしかった。
そうしてとうとう、布地越しに叫び続けた少女が、しなやかな全身を弓なりに変えて迸らせる時が来て、

「ムゥゥッ、ッ、ッンォォォ……、ォ、ォオッ、ッンン!? ンン゛ッ! ン゛ォォッ、ォ、ォオ゛オ゛オ゛オ゛―― !!」

獣じみた、野太い絶頂の悲鳴が張り上げられた。
こんな薄汚い欲望の部屋に連れ込まれなければ、きっと中学生の少女らしくこの放課後を過ごせていただろうに。友人達と可憐に笑いさざめきあっていられただろうに。
その唇で、悦乱の涎が染みた暗幕に歯を立て。その喉で、女の子の声だとも思えない野太い牝吠えを張り上げさせられて。
彼女は―― もう暗幕が覆っているのは胸ぐらいまでの少女は、却って開脚しきった下半身が暗がりに白く浮かび上がる姿でもって、ガクガクと全身を震わせていた。
脳裏には、性器同様の開発を受けた排泄孔でのオーガズムに、火花が飛び散っているに違いない。
女の子として生まれ、与えられていた、「感じる」という機能を、最大限邪悪に目覚めさせられた結果の、惨めな絶頂の様だった。

「ふぁ、あ、ぁぁふ。ふぅぅんん……」

暫し、背骨を軋ませるような不自然なブリッジに痙攣し続けて。やがて糸が切れたかのごとく、床にトサリと。弱々しい息を漏らす。
余韻を匂わせる喘ぎに、どこまで本気なのか分からない顔のケンスケが、『ケツ穴でイキました、イッちゃいました〜って、さ』と自分の声をあてて茶化した。
それが少女自身の叫んだところとさして離れてはいまいと、どうしてかレイは納得出来てしまっていた。




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Original text:引き気味
From:エロ文投下用、思いつきネタスレ(7)