The Best Of You

 皆さん、こんにちは。私の名前はリサ・ハイネル。皆さんはよく御存知だと思うんですけど、フランツ・ハイネルの妹です。
 今日は、私の自慢のお兄ちゃんと、お兄ちゃんととっっっても、・・・・ちょっと普通じゃないくらいに仲がいいお兄ちゃんより一つ学年が下のお友達、ジャッキー・グーデリアンさんについてお話したいと思います。

 私のお兄ちゃんは、今高校2年生。妹の私が言うのも何なんだけど、お兄ちゃんはとってもキレイなの。
 色も白いし、背は高いけどお兄ちゃんのお友達みたいに男っぽい体格じゃないから、小さい頃から細くてキレイなお兄ちゃんのことがとってもうらやましかったわ。小学生や中学生の時にはほとんどオンナの子みたいだったから、私といっしょにいる時は会う人会う人みんなに『かわいい姉妹ですね。お姉ちゃんなんか、お人形さんみたい』って言われてよく怒っていました。
 私なんか、かなり最近まで・・・・正確に言うと、お兄ちゃんがジャッキー・グーデリアンさんと知り合う前までは、大きくなったら絶対にお兄ちゃんをお嫁さんにしよう!と心に決めていたくらいなんです。お兄ちゃんはきっと白がとてもよく似合うだろうから、純白なウェディングドレスを着てもらって、私はカラフルでかわいい感じのドレスを着ようって夢に見ていたの。
 今はいろいろあって、とりあえずお兄ちゃんを自分のお嫁さんにするのはあきらめたんですけど。・・・・そう、『自分の』お嫁さんにするのは。

 そんなわけで、お兄ちゃんがすごくキレイな顔をしていて、そんじょそこらの女の子たちでは束になっても叶わないということがわかってもらえたでしょうか?多分、皆さんならもうとっくの昔にそんなこと御存知ですよね。
 でも、昔っからキレイだのかわいいだの言われ続けてきたせいなのかどうか、お兄ちゃんは見かけはとっても優美でキレイだけど、中身はけっこう手ごわいのです。頭がいい分悪口のヴェリエーションも豊富だし、強情な上にニブイし、すっごく照れ屋だし・・・。
 まあそんな所もお兄ちゃんのキュートなところですよね。グーデリアンさんもよくそう言ってるし。
 
 ・・・もっとも、グーデリアンさんの場合、『恋は盲目』的なところがないとは言えません。でも、それはお兄ちゃんも同じだからお互い様かな。






 さて、お兄ちゃんについて語るのはそれくらいにしておいて。
 皆さんにお話したいことはたくさんあるんですけど、今回は体育祭についてお話したいと思います。知ってる方もいると思いますけど、私たちの学園では体育祭と学園祭が二日間ずつ、計四日間をかけて盛大に行われます。
 二日目にあった学園祭で、お兄ちゃんとグーデリアンさんがこの学園の歴史に残るような盛大な愛のパフォーマンスを繰り広げてくれたことは有名ですが(その時の様子はビデオでバッチリ録画済みですから、御希望の方は言ってくださいね!)、その前日の体育祭だって口をつぐんでいるのはもったいですよね。
 そんなわけで、今日はちょっとだけその時の様子を皆さんにご報告いたします!





 体育祭二日目。


「キャー、ジャッキー、ステキ!!」
「グーデリアン先輩、カッコいい〜〜!」
「や〜〜ん、デートして欲しい!」

 グーデリアンさんがフィールドに登場するたびにそこかしこで黄色い悲鳴が上がります。学園祭や体育祭といった学園の一大イベントは中・高合同で行われるから、盛り上がり方も段違い。
 私の周りの女の子は、一人残らずと断言してもいいくらいにグーデリアンさんのファンです。ううん。私の周りだけじゃなくて、この学園の女の子全体が彼のとりこだと言ってもいいくらい。
 それに、彼のことを好きなのは女の子たちだけじゃありません。先生たちだって、上級生だって下級生だって、みんなグーデリアンさんのことが大好きなんです。
 グーデリアンさんの笑顔はとても不思議。背も高いし体の造りも顔の造りも男っぽいから、黙ってマジメな顔をしていれば精悍なイメージを与える人なのに、にっこり笑うだけでみるみるうちに人なつっこい、まるで少年そのものの表情になってしまうんですもの。
 そんな時は、くすんだ色をした濃い金色の髪も、そして空よりも真っ青に澄んだ瞳も太陽みたいにキラキラと輝いていて、思わず目が吸い込まれてしまいそうなくらい。お兄ちゃんも、グーデリアンさんの笑顔や青い目が大好きなんだと思います。絶対に本人に聞いたらうなづいてはくれないだろうけど。



 運動神経バツグンで、誰からも好かれているグーデリアンさんは、当然この日は大活躍。100M走でも障害物競争でもパン食い競争でも400Mリレーでも、八面六臂の活躍をして私たちの体育祭を盛り上げてくれました。私の友達、グーデリアンさんに向かって声援をあげすぎていたせいで、2,3日はひどいしゃがれ声になってしまっていたくらいです。
 それくらい、グーデリアンさんはカッコよかったわ。もちろんお兄ちゃんも運動神経はいいから活躍したんだけど、生徒会に所属しているせいで、どちらかというと大会進行の方に忙しかったんです。
 でも、もちろんひそかにグーデリアンさんが出場する項目だけはチェックして応援してたみたい。グーデリアンさんの晴れ姿に、きっとお兄ちゃんも惚れなおしたことでしょうね。

 でも、そういったグーデリアンさんの大活躍は、全校生徒が知ってますから、私が改めてご報告するまでもないと思います。今日は、リサ・ハイネルならではの、他のみんなが知らないようなエピソードをご紹介しますね!加賀さんにはナイショよ。加賀さんたら、人気者のあの二人に関するウワサならお金になるからって言って、すぐに私のところに情報を探りにやってくるんですもの。
 私としても、私の目の届かないところをフォローしてもらっているから、文句を言うわけにはいかないんですけど。


 私しか知らない二人のヒミツ。事件は、グーデリアンさんが借り物競争に出場したところから始まりました。
 実は私、今だから言えるんですけど、いろいろと手を回して(ルートはヒミツよ)グーデリアンさんの回だけ、借り物のネタを指示しておいたんです。
 『この世で一番キレイだと思うもの』とか、『将来結婚したい相手』とか。
 もちろん、グーデリアンさんならお兄ちゃんを抱きあげてゴールしてくれるだろうって確信していたからなんです。しかもしかも、あらかじめお兄ちゃんに頼みこんで、この時フィールドの近くに立っていてくれるよう頼んでおきました。
 我ながら用意周到。きっとグーデリアンさんがお兄ちゃんを抱きかかえてゴールしたら、お兄ちゃんは真っ赤になりながらもすごい勢いでグーデリアンさんに文句をまくしたてることでしょう。いわく、何で私が借り出されたりしなきゃならないんだ!私は物じゃない!とかなんとか。
 でも、グーデリアンさんから借り物の内容を聞かされ、言葉に詰まってしまうの。別の意味で真っ赤になってしまっているお兄ちゃんの頬に、グーデリアンさんが優しくキス。

 ・・・・・これよ!と、私は高鳴る胸の鼓動を押さえることができませんでした。



 ・・・・・なのになのに!グーデリアンさんたら、何と、借り物の内容を目にするや否や、何も持たずにそのままゴールまで駆け込んできてしまったんです!
 当然ダントツの一位、・・・なんですけど、何も持っていなかったら話になりません。あぜんとしている全校生徒や先生たちを納得させるために、役員であるお兄ちゃんがグーデリアンさんに近寄っていって借り物の内容を聞いたら、何とそれは『自分の好きな人』というお題でした。


「だってオレ、自分のこと好きだもん」


 なんてあっさりグーデリアンさんは言ってのけたんです。どうしてそこでお兄ちゃんを連想しないのよ!と私がもどかしく思う間もなく、マイクを通してなされたその発言に、すさまじいまでの反発がおきました。
 いわく、『借り物競争なのに、何も借りてきてないんだからルール違反だ』と。
 するとグーデリアンさん、ウインク混じりににっこり笑ってこう言ったんです。


「オレの体はオレ一人のものじゃないからさ。オレ自身でさえオレの体は自由にできないんだぜ。そのムリを押してゴールまでひた走ったんだから、立派に借り物といえるんじゃない?」


 ・・・・と。そのセリフとにっこり笑った表情のまぶしさに女の子たちみんながノックアウトされて、とうとうそのままグーデリアンさんはまんまと一位の旗の下にたつことができたのでした。







 ・・・・でも。皆は知らないの。
 その後、お兄ちゃんが周りの人に知られないようにして誰もいない校舎裏に足を運んだことを。
 ・・・そして、そんなお兄ちゃんを、グーデリアンさんが追っていったことを。まぁ、付け加えるなら、私ももちろんついていったんですけど。


 お兄ちゃんは不機嫌そうな早足でダカダカと歩いていましたが、さらに大きなストライドで歩いていたグーデリアンさんに追いつかれ、肩に手をかけられました。それでも、『うるさい!』などと言ってその手を払ってしまいます。

 何度か同じようなことがなされた後、とうとう焦れたグーデリアンさんがお兄ちゃんの厚みのない肩をつかんで、強引に自分の方を向かせました。そんな仕草さえグーデリアンさんがすると男っぽくてステキです。

 お兄ちゃんは怒ったような目でグーデリアンさんを見ていました。でも、怒っている時のお兄ちゃんは、ただでさえキレイな緑の目がよけいにキラキラしていてとってもキレイ。思わず見入ってしまうような色を浮かべているんです。


「ハイネル」

「うるさい!私に構うな」

「ハイネル、何怒ってるんだよ」

「私は怒ってなんかいない!」


 明らかに怒っている口調でそういうお兄ちゃんに、グーデリアンさんは苦笑めいた表情を浮かべています。


「ハイネル、借り物競争でオレがしたことが気に入らないんだろ?」


 そのセリフに刺激され、お兄ちゃんはさらに怒ってしまいました。キレイな眉がキリキリとつりあがり、グーデリアンさんをすごい目でにらみつけています。


「・・・お前のすることなんか、私には関係ない!何で私がそんなことで怒らなきゃいけないんだ。第1、万一それで私が怒っていたとしたってお前には関係ないだろう?何しろお前は大の人気者で、自分の体さえ自分でままならないらしいからな!」


 ・・・・お兄ちゃんたら、自分がヤキモチ丸だしの発言をしたってわかってるのかしら?まったくかわいいんだから。案の定グーデリアンさんには全く効き目がありませんでした。
 それどころか、グーデリアンさんたら素直にうれしそうな顔をしてみせるものだから、ますますお兄ちゃんを怒らせる始末。
 でも、もちろんそこは天下のグーデリアンさん。お兄ちゃんを怒ったまんまになんてしておきません。


「オレの体がオレ一人のものじゃないって?そんなの当たり前だろ。だってオレはハイネルのものだもん」


 グーデリアンさんがそう言えば、見事な反応速度でお兄ちゃんの頬が赤くなりました。いいかげんグーデリアンさんのあま〜〜い囁きに慣れても良さそうなものなのに、毎回毎回律儀なくらいに真っ赤になっちゃうのがお兄ちゃんのかわいいところよね。

「何を、バカな・・・」

 そういう声も、どこか震えています。

「オレはハイネルのものだからさ。オレの体はオレだけのものじゃないだろ?オレ、間違ったこと言った?言ってないじゃないか」

 そう言いつつ、グーデリアンさんはゆっくりと両腕をお兄ちゃんの体の横につきました。
 校舎の壁に、お兄ちゃんの体が縫いとめられたような格好になっています。でも、グーデリアンさんのセリフにうっとりとなっているお兄ちゃんには、自分たちの体制がハタから見ればどんな風になっているのかなんて、まったくわかっていないみたいでした。

「・・・それに」

 甘い声が、お兄ちゃんの耳朶をくすぐるみたいにかけられ、お兄ちゃんの首筋がぴくりと反応します。

「・・・オレさ、あの時とっさに思ったんだ。『オレが一番好きな人はハイネルだけど、ハイネルは宝物としてとっておきたい』ってさ。でも、『好きな人』ってお題で、ハイネル以外に連れていきたい人なんていなかった。だからあんな行動に出ちまったんだ」

「・・・バカなことを」

 そう言いつつ、お兄ちゃんの口調はとても柔らかです。目元はほんのりと色付いたまま。


「ハイネル」


 グーデリアンさんが、お兄ちゃんの目を優しくのぞき込むようにしていました。たくましい腕が伸びて、お兄ちゃんの頬や首筋を柔らかな仕草でなでています。
 グーデリアンさんは誰に対しても明るくて親切で、本当にステキな人なんですけど、それでもお兄ちゃんの名前を呼ぶ時だけは、他の誰の名前を呼ぶ時とも声の響きが違っています。
 甘くて、優しくて・・・その声を聞かされただけで、私の友達なら感激で失神しそうなくらい。


「グーデリアン・・・?」


 自分をすぐ近くで見つめているグーデリアンさんの表情に何かを感じ取ったのか、お兄ちゃんが少し不安そうな、ちょっと震えてさえいるような声でグーデリアンさんの名前を呼びました。それでも、お兄ちゃんの目線はグーデリアンさんから外れません。まるで目をそらせなくなってしまったみたいに、あのキレイな緑の瞳でグーデリアンさんをじっと見つめています。
 ・・・・・お兄ちゃんたら!素晴らしいわ!我が兄ながら、あんなにかわいい反応を返せる人間はそうはいないんじゃないかしら。グーデリアンさんがめろめろになるのも分かるわ。
 私も、グーデリアンさんが現われさえしなければ、お兄ちゃんをお嫁さんにする夢を捨てたりしなかったのになぁ・・・。


 それはともかく!二人は息さえかかりそうな距離で、じっとお互いの目に見入っています。実は私、けっこう彼らの近くにいて、別に隠れたりしていないんです。ちょっと横を向けば気がつく場所にいるのに、お互いしか目に入ってない彼らは全然私に気づいてくれないの。かえって好都合だからいいんだけど。

 あの・・・学園中の女の子をとりこにしている、女の子の扱いには慣れきっていると皆に思われているグーデリアンさんが、少し緊張しているみたいです。
 もちろん、お兄ちゃんも。不安そうにじっとグーデリアンさんを見つめていましたが、やがてじっとしたまま動かないグーデリアンさんを不思議に思ったのか、小さく小さく声をかけました。


「グーデリアン・・・?」


 ・・・すると、まるでその言葉を待っていたかのように、グーデリアンさんの両腕がきつくきつくお兄ちゃんを抱きしめたのです!それはもう、息もできないような激しさで!
 待ってました!!・・・じゃなくて、その・・・えーと・・・私にとっては待望のシーンでした。←言ってる内容はいっしょ・・・。


 


 ああ、神様、そしてお父さんお母さん。私をお兄ちゃんの妹としてこの世に送り出してくれてありがとう!それから、お兄ちゃんをあんなにキレイに生んでくれてありがとう!
 それからそれから、ついでにグーデリアンさんをあんなにカッコよく生み育ててくれたグーデリアンさんのご両親にも感謝だわ!
 人を見た目で判断しちゃいけないのなんて分かってるけど、こういうことになると話は別。だって、これは一種の芸術なんですもの、アートですもの!人類普遍にして最大のテーマ、「愛」について表現した壮大なるアートなんだわ。だって、これを芸術と言わずして何を芸術とすればいいの?
 禁じられながらも求め合うことを止められない二人。禁じられれば禁じられるほどさらに燃え上がる二人の愛!

 さらに言うなら、これはのぞきではありません。芸術鑑賞なんです!(断言)
 同じ鑑賞するのなら、美しい方がいいに決まってます(さらに断言)。誰だって、三流絵描きの描きなぐった絵より、一流の画家が精魂こめて描きあげた絵を見たいですよね。それといっしょなんです(ひたすら断言)。



 

 グーデリアンさんは、しばらくの間ただ力をこめてお兄ちゃんを抱きしめていました。お兄ちゃんは真っ赤になっていましたが(残念ながら、表情はほとんど見えなかったんだけど、首筋まで真っ赤になってたんだもの)、

 二人の顔がそのまま近づいて、雰囲気が盛り上がるまま、気持ちが求め合うままにキス・・・・。

 ・・・・・・・・・・に、いきませんでした。グーデリアンさんたら、キスもまだなのに(なぜ知ってるのかはナイショ)いきなり手をお兄ちゃんの体操着の中にさしいれたんです!

 グーデリアンさんたら、順番が違うじゃない!最初は甘く意識を溶かすような優しいキス。それから首筋に唇で触れて、手を入れていいのはその後なのに!


「やっ・・・」

 案の定、お兄ちゃんは弾かれたように体を離すと、真っ赤になってグーデリアンさんの胸を押し返しました。
 そんなに力が入っていたわけではないんですけど、お兄ちゃんに抵抗されたショックなのでしょうか。グーデリアンさんは素直にその動きに従って体を離してしまいました。
 そして・・・そして・・・その時私がとった行動は・・・。

 

「グーデリアンさん!私・・・私・・・許さないから!!」


 ・・・・気がつくと、私はグーデリアンさんに向かってそう叫んでいました。


「リ、リサ!?」

「リサちゃん!?」

 
 二人が同時に私の名を呼び、それと同時に私はその場を飛び出していました。
 視界の隅に、この世の終わりとばかりに青褪めて私の方を見ているお兄ちゃんの表情がちらついたけど、あの時はかまってなんかいられなかったの。とにかくグーデリアンさんに対する理不尽な怒りがこみあげてきて、その場を去らずにはいられなかったんです。

 だって・・・あんな・・・あんな・・・どうしてもどうしても許せなかったんだもの!
 自分でもどこをどう走っているのかよく分からなくなるような衝動にまかせて走りつづけながら、心の中はグーデリアンさんに対するやり場のない怒りでいっぱいでした。


「バカ!」


 グーデリアンさんのバカ!ホントにバカなんだから!!どうして・・・・。

 ・・・・どうしてあれくらいの抵抗で止めちゃうの?お兄ちゃんは照れ屋さんなんだから、もっともっと強気に出なきゃダメなのに!
 グーデリアンさんて、押しが強いわりにちょっとツメが甘いんだから!まぁそれも、お兄ちゃんにキラわれたくないっていう気持ちからきているんでしょうけど、それにしたって素直すぎるわ。あとちょっとだけ押してたらうまくいってたかもしれないのに!







 
「リサちゃん・・・」


 体育用具室の裏まで一気に駆けてきた私を追いかけてきたのは、当然グーデリアンさんでした。私は息を切らしてましたが、それでも精一杯鋭い視線でグーデリアンさんをにらみつけていました。
 いつもは明るい笑顔を浮かべているグーデリアンさんが、肩を落としてさびしそうな表情を浮かべています。

 もう。グーデリアンさんたらずるいわ。あんな表情をされてしまったら、怒りきれないじゃない!


「リサちゃん、びっくりさせたんだな。ごめん」


 心底すまなそうな顔をして謝ってくるグーデリアンさんに、私は肩の力を抜きました。だって、グーデリアンさんにあんな顔をしたらとてもじゃないけど怒りを持続させられないもの。

「・・・もういいの」

「さっきの、見てたんだろ?」

 グーデリアンさんの問いに、私はうなづきました。見てたも何も、私がすぐ横にいるのに気付かなかったのはグーデリアンさんとお兄ちゃんだもの。私は悪くないわ。
 グーデリアンさんは少しの間何かを言いよどんでいるみたいでしたけど、やがて決心したように私をまっすぐ見つめて口を開きました。決意に満ちた青い瞳は本当にキレイです。


「リサちゃん・・・ホントにビックリさせたんだな・・・」


 ええそうよ。驚いたわ。だって、百戦錬磨だと思っていたグーデリアンさんが、お兄ちゃんに対してはけっこう不器用なんですもの!それだけ本気だってことなんだろうけど、それにしても雰囲気だって盛り上がってたし、千載一遇のチャンスだったのに・・・。


「でもオレ、ハイネルのことが本気で好きなんだ。キミを驚かせちゃったかもしれないけど、それだけは知っててほしいんだ」


 あのキレイな青い目で、あまりにも真剣な口調で言うものだから、すっかり怒る気も失せていた私はグーデリアンさんに笑ってみせました。もともと、どう考えてもグーデリアンさんが思っているような理由で怒っていたわけではないんですもの。
 でも、私がどうして怒っていたかを説明してしまったら、きっとグーデリアンさんに警戒されてしまうから(お兄ちゃんはニブイから大丈夫だと思うんだけど・・・)その点については口をつぐんでおくわ。


「・・・いつかお兄ちゃんのこと、誰よりも幸せにしてくれる?」


 そう聞けば、みるみるうちにグーデリアンさんの表情が明るくなっていきます。
 そうして、誰もが魅了される、あの太陽みたいな笑顔があらわれました。


 ・・・・でも、私は知ってるの。グーデリアンさんの笑顔がどんなにステキで最上のものに見えようと、彼の一番の笑顔は、いつもお兄ちゃんだけに向けられているんだってことを。


「もちろんさ、リサちゃん!」


 明るく、それでいて力強いグーデリアンさんの声。お兄ちゃんがたった一人求めている人の声。


「今までも、今も、これからも。オレは絶対に誰よりもハイネルを幸せにするからな!だって、ハイネルの存在がオレを誰よりも幸せにしてくれるから」


 ・・・・そうね。そうなのよね。
 そして・・・・お兄ちゃんやグーデリアンさんが幸せでいることで、私まで幸せになれるんですもの。こんなにステキなことってないですよね。

 私とグーデリアンさんは、まるで共犯者のようにいたずらっぽく笑い合うと、まだ驚愕したお兄ちゃんが硬直したまま立ちすくんでいるであろう、校舎裏へと足を運んだのでした。
 








 そんなわけで、リサのレポート、少しは皆さんに楽しんでいただけたでしょうか?
 私の夢は、『お兄ちゃんとグーデリアンさんの愛の観察日記』をずーーっっと続けて、お兄ちゃんとグーデリアンさんの結婚式の日にプレゼントすることなんです。もちろん、プレゼントするのはコピーしたもの。
 いくらお兄ちゃんとグーデリアンさん本人相手でも、大事な大事なこの観察日記は渡せませんから。

 リサのひそかな、そして多大な楽しみをこれからもずっと続かせるためにも、お兄ちゃんとグーデリアンさんの愛がいつまでもいつまでも幸せに続きますように!
 私が祈ったりしなくたって、どうせあの2人のことなんだから、この世が終わる日が来るまで二人の世界を築いてるんでしょうけど。

 お兄ちゃんとグーデリアンさんの愛の軌跡に関するあなたからのレポートもお待ちしています。情報は高く買い上げますけど、加賀さんを通すと信じられないくらい高額の仲介料を取られちゃうので気をつけてくださいね。
 それでは、リサ・ハイネルでした!







 んー・・・んー・・・たまには何かの間違いでステキなお話が書けてもよさそうなものなんですけど、そんな都合の良すぎる間違いはやっぱり私には訪れてくれないようです(笑)。どうしたものでしょうか・・・。

 リサちゃんの観察日記!!そんなんあったら私が真っ先に読ませていただきたいです(笑)。
 なんだか私、策略好きなリサちゃんばっかり書いてますけど、お兄ちゃん子でひたすら素直なリサちゃんも好きです。そんなリサちゃんも書きたいんですけど、なかなか機会がないのが残念です。・・・学園物以外ではリサちゃんの性格、けっこう普通のはずなんですけど(何を持って普通とするかは論議の分かれるところでしょうけど)、学園物のリサちゃんのインパクトが強いのでしょうか(笑)。
 リサちゃんいいですよね!何と言ってもあのハイネルの妹ですし。リサちゃん万歳!(笑)。
 でも私、一人称で話を書くのは激烈苦手なので、この話の続きは二度と書きたくないです・・・。


 リサちゃん談義はこの辺にしておいて。といきゃっとさんもけっこううちのキリ番踏んでくださってますよね・・・。なんかもうホントに申し訳ないです。うちキリ番の踏みがいないですよね・・・。←何を今更わかりきったことを(笑)。
 とろくさいことしかできませんけど、長い目で見てやっていただけるとうれしいです。といきゃっとさんも、次に踏まれた時には『これ以上は恥ずかし過ぎるので、代替案でカンベンしてください!』とか私に泣きつかれてしまうかもしれません(笑)。すみません・・・でもちょっと・・・恥ずかしさの許容量というものが・・・。

 とりあえず、書いている間はとても楽しかったです。ある意味新鮮でしたし、とても勉強になりました。といきゃっとさん、ありがとうございました!



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