「that is a question」

無人島に何かひとつだけ持って行けるとしたら、あなたは何を持って行きますか?

笑顔でマイクを向けるインタビュアーに、本当にそんなことが知りたいのか逆に聞いてみたくなる。

大体、質問の設定がいい加減だ。人間が居ない島において電気・ガス・水道は使える状態なのか、自然環境はどうなのか、滞在期間はどのくらいか等が分からないことには、何を持って行くのが最善なのか判断のしようがない。

そもそも、この質問から得られる情報がマシーンやレースを語る上で何の参考になると言うのか。
レースへの意気込みについて聞きたいというから取材を受けたのに。

くだらない。

「ハイネルさん悩み過ぎですよぉ〜こーゆーのは直感勝負!」

甘えた声とウィンクで急かす表情は、レースのことなんてまるで興味が無い女の顔だ。

どこかで見たような、と思った瞬間、窓越しにスポンサー企業の看板が目に入った。

新商品の栄養ドリンクを片手にウィンクする女。

地元ケーブルテレビのレポーターにして、スポンサー企業の社長の娘。

ああ、そうか。
そういうことか。

マシーンやレースのことなんて本当は聞く気が無くて、この質問に答えて一言あの商品名を言って欲しかっただけなのだ。

空気読めよ、
カメラマンの唇が声に出せない内心の苛立ちを表すように動く。

そんなの知ったことか。

「申し訳ないが時間なので失礼する」

何も気づかない振りをして立ち上がろうとした、その時。

「ハーイお待たせハニー!」
「いやーんもーグーデリアンさぁ〜ん!ったらもう待・た・せ・す・ぎ!!」
「それは君の怒った顔が可愛いからさ」

ぶっ飛ばしてやろうかと思うくらいの陽気さで始まる頭悪い会話。

グーデリアンのウィンクを身を乗り出すようにして受けた女が投げキッスを返すのをカメラが追う。

「あのぉ、グーデリアンさん的にはー無人島に何かひとつだけ持って行けるとしたらぁ、何持って行きますゥ?」

期待に満ちた眼差しを裏切らない笑顔が、そこにある。

「そりゃあモチロン、」

そう言って大きく振りかぶった手に、隠し持った物も想像がつく。

勝手にやってくれ、

と、席を立とうとテーブルに置いた手の上に、

それが乗って。

「ねー♪」

グーデリアンと目が合った。

茶色の小瓶のラベルはカメラに向けられ、
ここで頷けば要求通りの絵づらが撮れる。

というのが分かっていても、素直に頷く気になれずにいたら、

間髪入れずに「ですよねー!」と横から女が割り込んできてカットになった。



「何が『ねー』だ。あんな小瓶ひとつ無人島に持って行って何になる」
「あれ?俺の答えはハイネルだったんだけど」
「何をバカなことを言ってるんだ!私が一緒では無人島という条件が成り立たなくなるだろうが!!」
「ええーそっちかよー」
「そっち?そっちって何だ!?他に何がある…??……!!貴様、私を物扱いしたな!!!」
「今度はそっちかよー」



情けない声をあげているグーデリアンを尻目にさっさと立ち去るハイネル。
さて、あなたなら何を持って行きますか?

-end-



 ずいぶん遅くなってしまいましたが、稲荷さんに素敵なショート・ショートをいただいたのでお裾分けです!

 もうグーハーのやりとりが可愛すぎる・・・!
 ハイネルのクールな(クールなんですけど、向こうのビジネス的要求を分かっていながら応じるもんか、というところが彼の場合なんとなくキュートでもあり・・・と思うのが私だけでしたらすみません!)感じと、グーのひょうひょうとした感じ。
 グーがまた上手いですよね!カッコよすぎる。
 
 こんな風に短い中で、グーハーの二人らしい洒落たお話を書けるなんていいなあ・・・。

 稲荷さん、本当に素敵なお話をありがとうございました。
 

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