Birthday


 「何がそんなに気に入らないのだ、グーデリアン」

 今日はイヴの前日。つまり12月23日、ハイネルのバースデイ。
 「別にぃ〜」
 ここはドイツのハイネルの別荘。
 『仕事があるから』という理由で、家族の誘いも振りきってここに来たのは、目の前にいるこの大男のせいだ。

 『誕生日とイヴ、俺と過ごしてくんないと、実家まで押しかけてプロポーズするからね!』
 そう言ったのは、オフに入って間もなく。
 『こいつならやりかねない』そう判断したハイネルは、やはり正しかった。だが同時に、甘かったとも言えよう。
 オフのテスト禁止期間中、実家とオフィス、なぜか教えてないはずの隠れ家にまで電話してきた。
 ほぼ毎日。
 ついに折れたのは、ハイネル。とりあえず、胸の痛みを押さえて、バースデイ&クリスマスの不在を家族に告げたのだった。

 なのに…。

 「だ・か・ら!何が気に入らないかと聞いているのだ!折角休みを取ってやったというのに、何なんだその態度は!?」
 目の前の男は、なぜか膨れている。
 でかい図体して、子供みたいに拗ねている。

 ハイネルが呆れてため息ひとつ、コーヒーを淹れに立ち上がると、大きな音とともにグーデリアンが後ろから抱きついてきた。
 「どこ行くのハイネル?」
 不安を裏に潜めたような声できく。
 「…ただキッチンに行くだけだ」
 「オレも行く」
 歩いて数歩。コーヒーを淹れる時間を入れても、数分。
 何が悲しくて、こんな距離をわざわざ大の男二人が、一緒に行動しなければならないのか。
 呆れて身体の力が抜ける。

 「いいよね?今日はずーっと一緒にいたいんだ」

 何を言ってるんだか、この男は。
 今までの態度は何なんだ?
 確かにハイネルも正直、グーデリアンと一緒の空間にいるのは、嫌いじゃない。いや、好きなのだ。
 ただそれは『いつものグーデリアン』という条件付。今日のグーデリアンは、違う。

 「だったらその不機嫌そうな態度、どうにかしろ」

 「だってさぁ…」

 今朝から、こればっかり。同じ言葉の繰り返し。
 いい加減、その煮え切らない態度に腹が立ってきた。
 本当ならばリサや祖母、両親や旧友たちに囲まれて、バースデイを祝うはずだったのだ。
 穏やかなパーティは夜通し続いて、次のイヴを迎える。神聖なる夜を、新しい気持ちで迎える。主の誕生を祝い、今年一年が無事に過ぎたことに感謝する。

 そんなありきたりだが、最も落ちつく時間。
 それを、こんな不快な思いをするために割いたのではない。

 「グーデリアン!そんな態度なら、私は帰るぞ!?」

 「だってぇ…」

 「だから何なんだ!?」

 不安な目を向ける。
 大型犬のような身体を、いっぱい縮こまらせて。

 「…ハイネルのバースデイ、祝うのはいいんだけど…。ハイネルイッコ、年取っちゃうじゃん!」

 「は?」

 よほど間抜けな面だったのだろう。だが、それに気付かないほど、グーデリアンは必死だ。
 意味がわからずに、先の説明を促す。

 「だーかーらー。ハイネルがひとつ年をとると、…オレが年下になっちゃうの」

 顔をほのかに赤くして、そっぽを向いて、ぶっきらぼうに言葉を吐き出す。
 始めは何を言ってるのか、分からなかったが、時間とともに、理解できてくる。新鮮な驚き。しかしそれも納得できる。

 嫌なのだこの男は、自分が遅れをとることが。たった4ヶ月だとしても。

 自然とハイネルの顔にも、微笑が浮かぶ。
 「何がそんなに嫌なんだ?たった4ヶ月分ではないか?」

 「それがヤなんだよ!だってオレの知ることのできないハイネルが、4ヶ月分もいるんだぜ?…それにその分子供扱いするだろ。さっきのスマイルだって、オレのこと子供だと思ったからだろ?」

 変なところで鋭い。
 しかし分かっているなら、そんな行為はしなければいい。そこが憎めないところなのだけれど。

 「4ヶ月ぐらいなんだ。レース期間中は、ほとんど対等ではないか。それに知らないんだったら、これから知っていけばいい。ただそれだけのことではないか?そんなことで悩むなんて、バカだな…」

 腕を伸ばして、少し背伸びして、グーデリアンに優しいキスをする。
 ご褒美。
 ハイネルのバースデイに、ハイネルのことしか考えていなかった。
 すぐに離れたけど、普段を考えるととても積極的なハイネルに、ちょっと戸惑う。
 でもここはグーデリアン。
 全身で、嬉しさを表現する。彼のいる空間が、温かくなっていく。

 ―やはり、グーデリアンはこうでなくては。

 「そうだね。これからいっぱい知っていけばいいんだ。教えてね、ハイネル?」
 言葉とともに伸ばされた太い腕を、今日のハイネルは払わなかった。逆に身を預けてゆく。
 高めの体温は、気持ちがいい。
 こんなバースデイも、たまにはいいかもしれない。

 「ハイネル、今日はずっと一緒だよ?」
 「大丈夫。置いては行かないさ」
 「そうだね。4ヶ月ぐらい、オレならすぐに追いつくさ。なんたってオレはジャッキー・グーデリアン様なんだからな」
 「ったく…。だがレースでは簡単には抜かせないぞ?」
 「もちろん。オレが先行するんだから、ハイネルが頑張って抜こうとするんだぜ」
 「調子に乗るな!」


 「HAPPY BIRTHDAY. Heinel…」
 「Thanks. Jackie…」


END




 時事ネタ(?)が死ぬほど苦手な私に代わって、たちばなさんがお誕生日ネタを下さいましたーーっ。
 ありがとうございました、たちばなさん!
 私、大人っぽいグーハーも好きなんですけど、こういう少年ぽさを残したグーハーにもめちゃくちゃ弱いのです・・・。自分で思うのですが、私ってグーハーに関してはかなりストライクゾーン広いですよね・・・頭の先から爪の先までストライクなのでは・・・(笑)。
 グーが何か『飼い主にとってもなついてる犬』みたいですごくかわいいですよね!こんな風にグーになつかれたらもう・・・すごく幸せですよね。いいなぁハイネル・・・。
 私がこのお話のハイネルだったら、絶対誕生日とイブをグーと過ごさずに、実家まで押しかけてきたグーにプロポーズしてもらうんですけど・・・惜しい!(笑)
 お話の最後の方で、グーが不敵な面も垣間見せてくれるところがまたステキです・・・って、ハイネルの誕生日の話なのに、なんで私はグーについてばかり語ってしまっているのでしょうか・・・。でもでも、少年ぽさと男っぽさを同居させたこのグーがすごく魅力的なのです。
 子供っぽい独占欲を示すグーデリアンに振りまわされながらも、そんな彼を包み込んでいる感じの、いかにも「年上」の余裕を感じさせるハイネルももちろんステキです!四ヶ月と少しの間は、きっとすごく年上風を吹かせるんでしょうね(笑)。

 たちばなさん、かわいらしくてホッとするようなお話をどうもありがとうございました!ほのぼのした、とても暖かな気分にさせていただきました!


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