ぽろぽろ、砕ける







「なんで同じマシンなのに、あんたのほうが順位が下なんだろうねえ。わかった、ノーテクなんだ、あんた。」

言われた瞬間に、投げ飛ばしていた。後ろにテーブルがあるにも関わらず。
あっというまに人に囲まれて、引き離されるまでに数発見舞って、と
このパターンをもう10年近くも続けている。

そう、同じ時期に走り始めたレーサー同士に、ケンカ友達だの親友だの果ては恋人まで加わったのに
この意地の張り合いは変化がない。すべてにおいて。





ハイネルはいつも怒るけど、グーデリアンときたら、この怒ってる姿や、いちいち相手してくれるのが
ツボだというから始末が悪い。

それでも陰湿にならないのは、お互いが
「オレが(私が!)しつこく持ち越さないから」
と、言うだろうが、今夜はめずらしく、しつこい状態になっている。
しかも非常に、この二人らしく、くだらない理由で・・・。


最初はグーデリアンの今日の成績を、人前ではさすがにあからさまにお祝いを言う気にならなかったハイネルが
一応「おめでとう。」と口に出したことからだった。
「しかし、もう次を考えなくてはな・・・。って、おい。」
ハイネルの眉がひそめられた。
「貴様、人が話しかけているときに、何を食べてる・・・。」
「ん?リサちゃんが持ってきてくれた、クッキーとか。」
「次を考えろと言ってる端から、こんな時間に間食するな!太るぞ!」
「あんたねー、細かいこと多すぎ!その細かさが全部結果に反映してるわけじゃないだろ!」
「お前こそ、話が飛びすぎだ!」
「一事が万事!」

更に言い募ろうとしたハイネルの口に、何かが押し込まれ、とっさに彼は噛んでしまった。

がりっ
ぽろっ

「!!!?」

「リサちゃんの作ったマカロンだからなー、こぼすなよお。」

ココナッツと卵白でできた、甘さがとけて、喉をかするようにおりていった。
この独特のガサつく感じがハイネルはあんまり好きでないので、ちょっとだけ顔をしかめた。

「ほーら、やっぱりね。」
「何がだ。」
「口に何か入れられたらさあ、何かと思って、フツウ一回は見てみるだろ。それがすぐ噛んで飲み込むんだからさ。」

細やかなようで、大胆。気が付くようで雑。

「案外短気で、カッとなるよなー。」

ちらっと見ると、もう相当にムカついた顔をしている相方がいて、グーデリアンはにやにやする。

「貴様、マカロンなんてものは噛んで食べるのがフツウだろうが。」
「えー?じゃあ、噛まないで食ってみようぜ。」

グーデリアンは一つをハイネルに渡して、一つは自分の唇にはさんで、軽く歯をあててみせ、あごをしゃくった。
ハイネルも同じようにしたのを見て、
「Ready,Go!」

つまるところ、舌だけで舐めて溶かすわけだから、食べてるときの顔は相当に笑えるものがある。
これは相手の顔を見たら、吹き出して絶対負ける・・・。
そう思ったハイネルは極力下を向こうとするけど、そうすると溶けかかったマカロンが落ちそうで焦る。
同じところばかり舐めていると、溶けてぐらぐらし出すから
そうなると、唇で方向を変えて別のところにチャレンジしないといけない。

死闘、3分後。

「あ、やべ!」

うっかり、噛んでしまった、グーデリアンのマカロンがぽろっとカーペットに落ちた。

「私の勝ちだな。」

ざまあみろ、と肩をそびやかすので、ちぇっといいつつ
「はいはい、おめでとう。」

と、グーデリアンはハイネルに軽くキスしたのだけど・・・・・
その反応に驚いた。
まるで、ソファから飛び上がるようだったのだ。
目を丸くして、顔を赤らめて。信じられないと言うように、口元を押さえて。

「ハ、ハイネルぅ?」
「よ、寄るな!私だって何が何だか・・・・。」

にやっ

と、グーデリアンが笑いを浮かべた。

「わかった、わかった。でもさー ここじゃなんだし、場所変えて話さない?」
「う・・・・。」
「どーしたのかなあ、ハイネルさんは。」

「・・・・・・・・・立てないんだ!」

そりゃあもう悔しそうなハイネルの顔に、もう笑うしかないグーデリアンだった。

要するに、口の周りの筋肉と唇、それに舌まで、マカロンのおかげで充分準備運動済みだったということだ。
そこにやって来たものなら、バードキスだろうが何だろうがきっちり刺激は拾うというわけで。

「いやー、オレ、あんたがオレのバカらしいことに相手してくれただけで充分だったんだけど。」
「うるさい。」
「もうオレのこと投げられないねー、今夜は。」
で、どうする?場所変える?と、低めの声でささやきかけると、

彼の可愛い人は肯いたのだ。




ひょいと抱えられて、そのままドアが閉まって
テーブルの上には、残りのマカロンと、さめてしまったお茶が残った。







今日、ぽろぽろに崩れたもの。


マカロン一個分の意地っぱり  その他






 
 Bethieさんに(も)お話をいただきました!私ほど図々しいヒトは見たことがありませんワタクシ!(笑)でもいいんです幸せだから。

 私、とにかくBethieさんの文章が大好きなのでした。なんていうか、Bethieさんにしか書けない文章ですよね。独創的っていう大げさな表現ではしっくりこなくて、もっと自然な個性とかセンスっていう感じでしょうか。Bethieさんの文章はオシャレな感じがする・・・・っていう表現が既にオシャレじゃないのよ私!(笑)

 Bethieさんにもちょっと述べさせていただいたのですが、Bethieさんの描く二人って、個人的に「オトコノコ」のイメージが強いです。小さな男の子同士が互いをライバル視して張り合っていて、そのまんま大きくなったっていうイメージを勝手ながら抱いていて、それでいて大人の恋人の関係を保ち続けてるのがすごいなぁと思ったりするのでした。

 私はマカロンと聞いてイメージが浮かばなかったのですが、Bethieさんにいろいろ教えていただいたことですし、次にクッキーか何かを食べる時にはマカロンだけすごい顔して食べてしまいそうです。今から目に浮かんで怖い!(笑)

 グーに挑発されてすぐに乗ってしまうハイネルがキュートですよね!マカロンを溶かすのに夢中になってる二人の姿が目の裏に浮かびます。

 Bethieさん、ありがとうございました!いろいろな面で励まして下さって本当に感謝しています。
 ・・・のわりにしてることはゴクドーで申し訳ない・・・(笑)。


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