アンパンマンとはらぺこカバ夫くん
今日もぽかぽかといい天気。町外れのパン工場ではリサ・ハイネル…じゃなかったジャムおじさんが朝からせっせとおいしいパンを焼いています。
「おはようリサ…じゃなかったジャムおじさん」
やってきたのはフランツ・ハイネル…じゃなかったアンパンマン。気はやさしくて力持ち、おまけに美形で頭もいい、パーフェクトな正義の味方です。胸元のスマイルマークが長身に映えています。
「おはようございます、お兄様。今朝はお早いですのね。お兄様用のあんぱんはもう用意できていますわ」
ニコニコとリサはバスケットを差し出しました。さすがにジャムおじさん特製とあって、ふっくらとしたあんぱんはとてもおいしそうです。
「毎日すまないな。朝早くからパンを焼くのは大変だろう」
「何をおっしゃいますの。お兄様こそ毎日パトロールご苦労様です」
にっこりと笑いあう美形兄妹は、さながら絵のようです。ハイネル…じゃなかったアンパンマンは、妹の作ったあんぱんをせっせと首もとのフードに詰め込みます。このあんぱんは、おなかが好いて困った人にあげる為のあんぱんなのです。なんて心やさしい兄妹達でしょう。あんぱんでつまったフードには、なぜか丸いほっぺに赤い鼻の顔が描いてあります。
「おいアンパンマン、大変だぜ!」
飛び込んできたのは、グリーンの髪が見事なブリード加賀…じゃなかったメロンパンナちゃんです。彼の必殺技「メロンパンナのめろめろパンチ!」にあうと、めろめろしている間にお財布が無くなるともっぱらの噂です。
「隣町の商店街で、バイキンマンが暴れてるってよ!」
「なに!」
それは大変です!アンパンマンは、このあたりの秩序を守る義務があるのです。バイキンマンが暴れてるとなれば、隣町まですぐに向かわなくてはなりません。
「それではリサ、いってくるよ」
「お兄様、お気をつけて」
アンパンマンは急いで駆け出していきました。マントが翻る様は、まるで騎士のようです。
ちなみに初期設定の関係上、アンパンマンは空を飛ぶことはできません。
さあ、アンパンマンは隣町を救うことができるでしょうか?
パン工場から隣町までは森の中の一本道を通らなければなりません。アンパンマンは急いでその道を駆け抜けていきました。
隣町が心配です。なんと言っても相手はバイキンマンです。改心したとは聞いていますが、また悪の道に戻ったのかもしれません。さあ、急がなくては!
「えーん、えーん」
そのとき、どこからか泣き声が聞こえてきました。
「なんだ?誰か困っているのだろうか」
アンパンマンは正義の味方なので、困っている人を見捨てるわけにはいきません。あたりをきょろきょろと見渡しました。
「あー、アンパンマン!助けてーーー」
「うわ!グーデリアン!…じゃなかったカバ夫!」
そうです、道端に座り込んで泣いていたのはジャッキー・グーデリアン…じゃなかったカバ夫君でした。カバ夫君は金髪碧眼の美丈夫ですが、食欲、性欲、睡眠欲の三大欲求のみで生きているとの噂です。しかも何かとアンパンマンにじゃれついてくるので、ハイネル…じゃなかったアンパンマンはほとほと困っているのです。
それでも困っている人を見過ごすわけにいかないのが正義の味方の宿命です。
「いったいどうしたんだ、こんなところで」
「うえーん。アンパンマン、おなかが空いて動けないよー」
「そんなもの知るか!お前の家はすぐそこだろうが」
「だって…おなかが空きすぎて一歩も動けないんだもの」
グーデリアンが、涙で潤んだ瞳で訴えかけてきます。普段はおちゃらけて元気なカバ夫君ですが、こういう風にしょんぼりとしていると、かまってあげたくさせる天賦の才能を持っているのです。
「しかたがない。お前にアンパンをやろう」
「わーい!ありがとう!!」
「じゃあこれを…うわ!おい、グーデリアン、どこを触っている!」
「え?アンパンマンを食べていいんでしょ?」
グーデリアンはアンパンマンを押し倒すと、手際よく服を脱がせにかかります。
「ちがーう!お前にやるのはこのあんぱんだ!」
「いやだ。俺はお前が食べたいんだ」
そう言うと、グーデリアンはハイネルにキスをしました。グーデリアンの身体の下から逃れようともがくハイネルでしたが、押さえつけてくる馬鹿力と、とろけるようなやさしいキスに、次第に力が抜けていきます。
ハイネルから抵抗がなくなると、ようやくグーデリアンは唇を離しました。
かわいそうに、アンパンマンはすっかり上気した顔になっています。緑の美しい瞳は、熱で潤んでいます。
「ねえ。食べちゃっていい?」
カバ夫君はもう一度尋ねました。
アンパンマンは、小さく頷きます。
「ありがと、ハイネル」
グーデリアンは、首筋に唇を落としてゆきました。
ところ変わってパン工場です。ジャムおじさんとメロンパンナちゃんは、焼きたてのパンをつまみながらおしゃべりをしています。
「ねえ加賀さん、本当にブーツホルツさん…じゃなかったバイキンマンは隣町で暴れてますの?」
リサが首をかしげながら尋ねました。
「あ?ブーツホルツの旦那がそんなことするわけねえよ。グーデリアンに頼まれてさあ」
「やっぱり」
隣町のブーツホルツ…じゃなかったバイキンマンは、今頃くしゃみをしていることでしょう。すっかりだしにされた彼は、急に「ボルシチが食べたい」と言い出したわがままな修ちゃん…じゃなかったドキンちゃんのために、商店街で買い物をしているところなのです。
「お兄様ったら、何度同じ手に引っかかったら気が済むのかしら?」
二人は顔を見合わせて笑います。
「結局のところ、ハイネルもグーデリアンのことが好きなのさ」
「誰から見てもラブラブなのに、本人達だけわかってないんですもの」
「周りが助けてやらないとな」
共犯者な二人は、すっかり満足した気分でお茶を飲んでいます。
「まったく、お前は私を何だと思っているんだ!」
カバ夫君に食べられちゃったアンパンマンは力が出ません。代わりに元気100倍!になったカバ夫君が、アンパンマンをおんぶしてパン工場まで運んでいます。アンパンマンは身体が動けない代わりに口を忙しく動かして、カバ夫君を非難しています。アンパンマンを騙したカバ夫君は、殊勝におとなしくしているようです。
「この野獣が。おなかが減って動けないなんて嘘じゃないか」
アンパンマンは溜息をつきます。
「嘘じゃないよ」
グーデリアンはまじめな顔をして言います。
「ハイネルに会わないと、俺は何にもできないんだ。ハイネルを見て、ハイネルに触れて、それが俺のエネルギーになるんだ」
グーデリアンの言葉は、やさしく響きます。
「だからさ、ずっと俺のそばにいてよ。みんなのハイネルじゃなくて、俺だけのハイネルでいてくれよ」
グーデリアンの背中で、ハイネルは黙りこくってしまいました。きっと真っ赤になっているんだろうと、グーデリアンは推測します。
二人はパン工場にむけて歩いていきます。
今日も一日、平和に過ごせそうです。
おわり。
あんぱんまん、私もお腹が空いて動けないので、ぜひ私の所まで助けに来てください!!(笑)
・・・なんてアホなことを言っている場合ではありません。このお話はあいりさんが下さいました!あいりさん、本当にありがとうございます。
私、そのうちバチ当たって死んでしまうのではないでしょうか・・・・。でも、グーハーに生き、グーハーに死す!それもカッコいいかも、ちょこっとうっとりしてしまいます。(ホントにバカですね・・・)
私はアンパンマンて見たことないんですけど(キャラクターなんかは見たことありますが)、なんですか?かば夫くんてホントにかばなんですか!?(笑)それはスゴイ!帰国したら一回くらいチェックしてみなくては・・・。
にしてもあいりさん、素晴らしすぎです!アンパンマンまでグーハー変換なさるなんて・・・。文体がほのぼのしているのに、途中ドキドキする展開があって二度おいしいですよね!グーが・・・グーがかっこよくて悶えてしまいました。例えかば夫くんだったとしても!(笑)本当にありがとうございました!