It's me, burn you forever (2)


大きく開けた窓の向こうには満天の星。
思わず見て、と声をかけようと振り向くと、

キーボードをうつ指を止めて、
パソコンの画面から視線をはずしたハイネルが。


静かに腕を組んで、小首をかしげるように宙を眺めていた。


そんな時のハイネルの瞳には何も映っていない。
なぜならば、彼の意識は彼の心に飛んでいるからだ。

そう。

彼は今、胸の奥に住む誰かと話をしている最中だ。


俺が目の前に立っても気づかない。

宝石に例えられる瞳は、
本当に美しく輝いているだけとなる。


手を伸ばせば触れられる近さに居るのに、
その煌きはまるで、あの空の星のように遠い。


ここに居るのに。
俺は。


俺はここに居るのに。

ここに居るンだよ、俺は。


「お前がここに居ることなどイチイチ言われなくても分かっている!早くその暑苦しい顔をどかせ!!計算結果が見えないだろうが!!!なんだその手は!!!!」
「え?」


聞きなれた怒鳴り声に我に返れば、
すっかり生気の甦ったハイネルの瞳が睨んでいて。

自分がいつのまにか手や声を出して訴えていたことや、
パソコンの画面を遮るようにハイネルの顔を覗き込んでいることを注意され、

早くどけと急かされた弾みに、行き場をなくした手が思わず。


「あ。」


キーボードの上へ。


「何をやっているか貴様ーーーーー!!!!!」
「大丈夫だってハイネル、キーは何も押してないから」


咄嗟に目一杯広げた手のひらと力を込めた小指と親指。

画面を見てホッとひと息ついたハイネルの手が、
キーボードの上の俺の手を追い払うように動く。

「まったくいつまでここに居るつもりだ」

一瞬重なったふたりの手の下に見えるのは、

GとHのキー。

グーデリアンのGと、ハイネルのH。


そんな小さな発見が、
大きな勇気をくれる。


「いつまでも」
「何?」


さっき感じた不安が、
嘘みたいに消える。


後押ししてくれたのは、

Gの隣の、F。
Hの隣の、J。

これはもう、
ただの偶然とも思えない。


「ホラ見て、ハイネル。フランツのF、グーデリアンのG、ハイネルのH、ジャッキーのJ。バラバラに並んでるアルファベットの中で、こんなに綺麗に並んでるンだぜ。俺たちが生まれる前からずっと。これはもう、一緒にいる運命なんだって」
「何を馬鹿なことを。だいたい、実際にはHとJの間にはIがあるだろうが」


呆れ果てたような顔でハイネルが指摘した「I」の存在は、

単なるアルファベットの順番と言うよりも。


ハイネルの声を借りて、
彼の胸の奥に住む誰かが、


そこにはまだ「自分(I)が」いるのだと主張したようにも聞えたのだけど。


でも。


それはハイネルと自分を隔てる壁でもなければ、
永遠に開かないドアでもない。


だから、


俺にとって「I」は。


「そこにIがあることはもちろん知ってるさハイネル、でもそれはふたりをつなぐ愛(love)なんだぜ」
「なんだそれはどういう理屈だ」



・・・・・・・。


えー。


Loveは日本語で愛(ai)だって。
言うだけ野暮ってモンだよなあ。




 稲荷さんが2006年のグーハーの日を記念してお話を送って下さいました。アップが遅くなってしまって申し訳ありません。
 横恋慕グーハー(というか横恋慕グー)のお話の続きです。稲荷さんがマウス画などで見せて下さるほのぼのしたグーハーもかわいくていいですけど、こういう大人なグーハーもまた格別ですよね。
 普段明るくて大らかなグーがわずかに(このわずかに、というところがまた!)影のあるところを見せてくれるとぐっときます。カッコいい、グー・・・。ハイネルがいつの日か、そう遠くない未来にグーデリアンが深くて大きくな感情で静かに自分を見つめていてくれているのだということに気がついてくれるといいな、と心から願っています。というかこのハイネルがうらやましい・・・(笑)。
 稲荷さん、素敵な作品を本当にありがとうございました!
 ちなみになんと!同じネタでまったくおもむきの違う別作品も最初にいただいていまして、せっかくなのでとお願いしてこちらも展示させていただくことにしました。興味がおありの方はこちらもどうぞ。 こちら

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