だぶる・ばーすでぃ
しんしんと雪が降り積もるのを、はいねる君は邸の中から窓に額をくっつけてかれこれ1時間ほど見つめていました。
邸の中には妹のりさちゃんと、父親と珍しく母親も一緒にいます。
母はたいてい本宅の方に住んでいるので、いつもはリサと父親しかこの邸には住んでいません。
ハイネル家というのは忙しいことが大好きなのか、皆が皆揃うということは何かにしらの行事がある時くらいなのです。
はいねる君は年の半分以上を『世界をまたにかけたCF』の世界で過ごしますし、父親はおっきな自動車会社を経営する社長さんなのです。
母親も事業をしているので本宅に行っても留守にしている事が多いのです。妹のりさちゃんはは学生ですがこれまた、母親同様に好奇心が強くて家にじっとしている娘ではありません。
なのに、何故今、家族全員が揃っているかといいますと……それにはワケがあります。
今日は12月20日。
世間はもうクリスマス休暇に入っている真っ只中。
しかし、はいねる君の家族が揃ったのは今日がやっとでした。
何故ならば、はいねる君の誕生日がもうすぐ、だからです。
12月23日。この日、はいねる君は生まれました。
その、はいねる君のお誕生日の為に父親も母親も仕事を無理矢理強引に終らせて、家に帰ってきたのです。
別々に暮らしているとはいえ、父親も母親も仲が悪いわけではありません。
反対に、とっても仲が良すぎてはいねる君とりさちゃんが困ってしまうくらいなのです。
そして、はいねる君もそんな両親と妹のりさちゃんのことをとっても大好きでした。
そう、いつもならば一番に大好きだと明言できたのですが…
窓からちらつく雪を見て、はいねる君は静かなためいきを一つ零しました。
今はいねる君がたっている所は、自室の中。
はいねる君は今とっても悩んでいるのです。
「はあ……」
零れる息が窓を白く曇らせます。
それを指先で触れて、ついつい『へのへのもへじ』と友達になった日本人ドライバー日吉から教えてもらった、日本の落書きというものをしてしまいました。
この時期、はいねる君の所属するSGMのCFチームもずーっとオフです。
マシンのテストもFICCYの禁止期間にひっかかるためにファクトリー自体が閉じます。まあSGMのおぢさんたちは、あちこちのラポに行ったり長期休暇を取ったりとしているのですが、はいねる君はこっそり自宅で『しゅてぃーる』というとっても可愛いましんの設計図を進められるはずでした。
しかし、思うようにはかどりません。
机の上には電源の落とされたPCの前に、エアチケットが置いてあります。
ちらり、と視線をそちらに寄越してはいねる君は窓の側からやっと離れました。
もう一つ溜息をついて机の引出しを開けると、綺麗にラッピングされたプレゼントとおぼしき包みが入っています。
「もうこんな日にちでは、間に合わないし…」
今日という日にちを思い返して、はいねる君は落ちこんだ声でつぶやきました。
送り先はアメリカなのです。
本当は自分で持って行こうと準備していたのですが、どうやら行けそうにないのです。今年は父親も母親もりさちゃんも、忙しそうにしていたのでよもや家に帰ってくるとは思っていなかったので飛行機で24日にアメリカに行って、その日のうちに戻ってこようと計画を立てていたのですが、家族が家に居るのならばダメです。
24日はクリスマス・イブ。
そう神様の誕生日の前夜祭。
家族で過ごすのが当たり前の日に、はいねる君はアメリカに行くことが出来ません。
手配していたチケットを哀しそうに見つめ、そっと引き出しの中にしまいました。
いまからプレゼントを郵送しても、間に合いません。
もともとアメリカに居るぐーでりあんには内緒の事ですから、後から何を言われるということもないのですが、はいねる君はプレゼントを手渡したかったのです。
ばれんたいん・でぃにチョコを贈って、ぐーでりあんがほわいと・でぃにお返しをくれて…
と、思い出したところで急にはいねる君は、お顔を真っ赤にしました。
「い、いかん…私としたことが…」
首を左右にぷるぷると振り、火照った顔を元に戻そうとします。
ぐーでりあんからの『お返し』というものが何だったかを、思い出してはいねる君は急に恥ずかしくなったのでした。
それで仲良くなれたかというと、そうでもありません。
相変わらず喧嘩はしていましたし、何よりもこのオフ・シーズンに会う約束すらもしていないのです。
「やっぱり…やつにとっては冗談だったのだろうし…」
星の数ほど居ると言われるガールフレンドの方が、ぐーでりあんにとってはいねる君よりも楽しい相手なのだろうと思い当たると、はいねる君の気持ちが段々と下降していきます。
「きっと、ちょこれーとを貰った相手全員にああやってお礼をしているに違いない」
はいねる君はぐるぐると自分の思考に陥っていきます。
しかし、ぐーでりあんが聞いていたならばショックのあまり蒼いおめめからボタボタと大粒の涙を零していた事でしょう。
はいねる君がやっと振り向いてくれたと思ったのに、はいねる君はぐーでりあんを信じていないのですから。
それに、ぐーでりあんのもて具合をはいねる君は過小評価しているようです。
ちょこを貰った相手全員に、はいねる君にしたみたいな事をしていたら、キリがありません。
いつもありがたく貰っているちょこれーとは、あまりにも捌ききれないためにスタッフに分けているのだと、はいねる君は知りません。もちろん、今年食べたちょこれーとは、はいねる君から届いた分だけしか食べていないということも。
ぐーでりあんとしては、はいねる君に構い倒したいところなのですがはいねる君がシャイなのを十分理解しているので、我慢しているのです。
喧嘩をするのも、はいねる君とのコミュニケーションの一つ。
ただし、本気で喧嘩なんてしていません。それこそ、はいねる君に知られたら激怒して目も合わせてくれないでしょうから。
そんなぐーでりあんの事情など知らないはいねる君は、何度目かの溜息とともに部屋を出ました。
いつもなら、そんなはいねる君の姿に心を痛めてやきもきするSGMのおぢさん達もいない、ある日の出来事。
家族といるのは心安らぐ事なのに、はいねる君のお顔は憂いていくばかりです。
父親も母親も、そんなはいねる君を心配しておりましたが、はいねる君の『なんでもありません』と無理して作る笑顔の前では、深く追求することも出来ません。
そうして、とうとう明日はクリスマス・イブという日の夜に、はいねる君の誕生日を祝うパーティが家族だけで開かれました。
それぞれが、はいねる君を思い遣ってのプレゼントを準備しています。
一つずつ受け取り、はいねる君はお礼を言いました。
後はティータイムを寛ぐだけとなった頃、『ジリジリジリ』と誰かの訪問を教えるベルが鳴りました。
執事が玄関へと走っていくのを、はいねる君達家族は『誰がきたのだろうか?』と顔を見合わせています。
招いた客などいないのに、夜間の客とは?
しかも今はどこもクリスマス休暇。
よほどの事があった時にしか、会社も連絡して来ないはずです。
すると、執事がはいねる君の元に戻ってくるとそっと耳打ちしました。
「アメリカの、じゃっきー・ぐーでりあんと言われる御方なのですが…いかがなさいますか?」
執事のその一言で、はいねる君は勢い良く立ちあがると玄関へと走り出しました。
耳打ちされたと同時に輝いた、きれいな翠のおめめと生気が宿ったかのような頬の色。
父親と母親は、『これはもしや』と瞬時に感じました。
いくら離れて暮らしていても、親は親なのです。
誰がきたのかは、執事がはいねる君だけに告げたので父親も母親も知りませんでしたが、妹のりさちゃんだけは、隣りに座っていたので聞こえていました。
「一体、どなたが来たのだろうか?」
父親が呟くとりさちゃんが、元気に答えます。
「ぐーでりあんさんですわ。おにいちゃん、きっと、ぐーでりあんさんを待っていたのよ」
にっこり笑ってりさちゃんが答えると、父親は手にしていたティ・カップをもう少しで落とすところでした。
「あら…それは素敵な殿方ね」
母親は、にっこりと微笑み返してりさちゃんに『そうなの』と相槌を打ちました。
「………」
父親は口をぱくぱくと動かすだけです。
「あら、お父様。どうかなさいまして?」
りさちゃんが、様子のおかしくなった父親に心配して声をかけます。
「あら、大丈夫ですよ…りさ。お父様はふらんつに『素敵な人』が居るって知らなくて驚いただけですもの」
「そう…お母様は驚かないのね」
「驚いてはいますけど、可愛いふらんつの『素敵な人』なのでしょう?ならば、迎え入れてあけなければ…雑誌でしか拝見したことはありませんけど、かなり格好いいお人ですものね」
りさは知っていたの?と母親が尋ね返しました。
「ええ、勿論ですわ。ぜったい、ぐーでりあんさんならおにいちゃんにお似合いなんですもの」
はいねる君が聞いていたら、きっと卒倒したことでしょう。妹のりさちゃんが何を知っているのか怖くて聞けないでしょうが…
勿論まだ、正式に付き合っているなどとはいねる君は思ってもいないのですから、力いっぱい否定してくれるでしょうけど。
「しかし、彼はいつもふらんつに喧嘩をふっかけてきているではないか」
やっと落ちついたらしい父親がコホン、と一つ咳をして気になることを言葉にしました。どうやら父親はCF界のことを少しは耳に入れているようです。
「あら、好きなコいじめっていうのは幼稚園からのお決まりですわ」
即座にりさちゃんが笑って答えます。
「そうか…では、今日のところは二人をそっとしておいてあげよう。我々も部屋に戻ろうか」
かなり頭ではショックなのですが、父親の威厳というかりさちゃんに嫌われないお父さん像を目指す父親は、母親とりさちゃんを促して、はいねる君がぐーでりあんと言う青年とゆっくり話しが出来るよう、部屋に戻る提案をしました。
「それはいいですわね、あなた。明日はぐーでりあんさんも一緒にクリスマス・イブを迎えましょう」
「あら、賛成。お母様クリスマス・マーケットにもご一緒してもらいましょうよ。きっとおにいちゃんも一緒に行ってくれるわ」
ハイネル家の女性は既に家族の一員としてぐーでりあんを受け入れているようです。
父親は、ひきつる頬を隠しながら母親と連れ立って自室へと戻っていきました。
そんな家族の会話を知らないはいねる君は、玄関で『よっ!』と立って待っているぐーでりあんを目にすると、ついいつものような口調になってしまいました。
「何が『よっ』だ!アメリカ人という人種は礼儀を知らないのか!こんな夜分に訪問するとは、相手に対して失礼だと思わないのか」
本当は嬉しくて嬉しくて仕方ないのに、はいねる君の口は正反対の事を言ってしまいます。
でも、ぐーでりあんはケロリ、としたもの。
「うーん…それは悪いと思ったんだけど、飛行機が中々取れなくてやっと今着いたんだ。どうしても今日のうちに、はいねるに会いたかったから…」
へへへ、ぐーでりあんは蕩けるようなお日様の笑顔を浮かべます。
「う……」
近距離でその笑顔を目にしたはいねる君は、お顔を真っ赤にして俯きました。
「ふらんつ様…お客様もお寒うございましょう。お部屋へとお通しされませぬか?」
後ろに控えていた執事が、そっとフォローするようにはいねる君へと助言しました。
「仕方ない…此処で風邪ひかれてはかなわないからな…ぐーでりあん、早く入ってこい」
まだ敷居も跨いでいないと言う事に、はいねる君は気付くとぐーでりあんの冷たくなっていた手を取るとそのまま、自室へと連れだって行きました。
執事はその後ろ姿をにっこりと微笑んで見送ります。
ぐーでりあんが振りかえって手を振ると、お辞宜をしてお茶の準備をするために厨房へと足を向けいってしまいました。
さて、はいねる君と言えば…
きっとはいねる君は無意識にぐーでりあんの手を取ったのでしょう。
ひっぱって行かれる手を見つめ、ぐーでりあんは嬉しくて笑顔を作ったままはいねる君の後ろをついていきます。
はいねる君の手が冷たくなるだろうに、しっかりと握って離さないその手がとっても嬉しいのです。
「はいねる、突然来てごめんな」
「……」
そっと謝るぐーでりあんに、はいねる君は何も返しません。
ただぎゅっと強く握り締めただけです。
その仕草だけでしたが、ぐーでりあんははいねる君が拒んでいない事に気付きます。
二階にある奥の部屋の扉を開けて、はいねる君がやっと振り向きました。
「私の部屋だが、かまわないだろうか?」
本当ならば客間に通すのが当たり前でしたが、はいねる君はぐーでりあんを自分の部屋まで連れて来てしまったのです。
「うん。俺、はいねるの部屋に入れてもらえるだけで嬉しいもん」
ぐーでりあんの言葉に、はいねる君が安堵します。
その表情にぐーでりあんは我慢できず抱きつきました。
「うわぁっ」
びっくりしたはいねる君は、飛びあがりそうになりましたがぐーでりあんがおんぶオバケのように抱きついてきていたので、実際には一歩も動けませんでした。
ぴくん、と跳ねる身体を抱きしめてぐーでりあんは笑みを深くしました。
いつまでたっても抱きつく事にも、キスをすることにも慣れてくれないはいねる君でしたが、それがとっても『らしく』て初々しくて、好きなのです。
それから、はいねる君の耳元に囁きました。
「はいねる、はっぴーばーすでぃ。どーしても直に言いたくて来たんだ」
ゆっくりと囲いを外すと、後ろ手で扉を閉めてぐーでりあんは、はいねる君の前に廻りました。
「驚かせてゴメン」
お顔を真っ赤にして俯いているはいねる君が何も言ってくれないので、ぐーでりあんは慌てて謝ります。
それからポケットに入れていたプレゼントを取り出して、はいねる君に渡しました。
「お前、万年筆が使いやすいって言っていただろ…」
じゃあ…もう遅いから帰るな、と一声残してぐーでりあんは部屋から出ていこうとしました。
「今から帰るのか?」
てっきり、『泊めてくれ』と言うとばかり思っていたはいねる君は慌てて、ぐーでりあんの着ていた皮ジャンを握って引き留めました。
「ん?そりゃ、すぐアメリカってわけにはいかねぇけど、幾ら俺だって宿くらい取っているぜ?」
「…此処に泊まればいいじゃないか…」
蚊の泣くようなか細い声で、はいねる君が声に出して引き留めます。
はいねる君が行動を起こしてくれたのは、これが2回目です!
しかもいつも、ぐーでりあんがビックリする事をしてくれます。
前は、それこそぐーでりあんの誕生日プレゼントでした。
今日は、はいねる君のお誕生日だというのにはいねる君はぐーでりあんを喜ばします。
「はいねる、俺を喜ばせてどうすんだよ…」
もうこれは苦笑するしかありません。
しかも、はいねる君の実家なのです。
はいねる君が裏の意味をこめて引き留めているわけではないと判っていますが、ついついぐーでりあんは茶化してしまいました。
「嫌なら、引き留めないが…明日は帰るのだろう?」
ならば、せめて見送りぐらいしたい。
はいねる君の翠のおめめが、そう言ってます。
ぐーでりあんはその綺麗な目に惹きこまれそうになって、軽いキスをはいねる君の両目の上に落とします。
ちゅ、ちゅ。
それだけで又はいねる君は真っ赤になりました。
「はいねる、生まれてきてくれて有難う。俺と出会ってくれて有難う」
女のコとの恋愛は百戦錬磨だったのに、はいねる君が相手だとぐーでりあんは緊張してしまいます。
大事に大事に包んでいたいから。
いつだって傍に居てあげたいから。
本当は、23日になった時から一緒に居てあげたかったのに飛行機が取れなくてヤキモキした事など、はいねる君には内緒なのです。
オフ・シーズンになる前に、はいねる君と約束したかったのに監督の監視の下で、一言も声をかけることが出来なかったということも秘密。
はいねる君からチョコを貰ってから、ぐーでりあんは付き合っていた女のコ全員と別れました。
はいねる君はちっとも気付いてくれないけど、ぐーでりあんはずっとはいねる君を見ていたのです。
なんだか落ちこんでいる時も、ちょっぴり怒っている時も、微笑っている時も。
SGMのおぢさん達に邪魔をされても、やっと認めてもらってビットの前をうろつく許可をもぎ取っても、はいねる君はちっとも気付いてくれませんでしたが、ぐーでりあんは彼にして見れば珍しく忍耐強くはいねる君を見ていたのです。
お日様の笑顔をはいねる君が気に入っている事も、大分前から知ってます。
だから、はいねる君にも知ってほしいのです。
『じゃっきー・ぐーでりあん』は『ふらんつ・はいねる』に惚れぬいているって事を。
「はいねる、気持ちは嬉しいけど…」
ブレスの間では仲が悪いと思われているし、とぐーでりあんは困った顔をして言いました。
本当は泊まれるならば泊まりたいのですが、ぐーでりあんの理性が保ちそうにありません。
十分に、自分のけだものさ加減を判っているぐーでりあんは、理性を総動員してはいねる君の切なそうになる顔を見つめました。
「…ぷれぜんとなんか、要らない」
くすん、と小さく鼻をすするとはいねる君が持たされた包みを押し返しました。
「えっ?」
今にも泣きそうな顔をして、はいねる君がちょっぴり潤んだ翠のおめめでぐーでりあんを上目使いに、見つめます。
欲しいものじゃないから、いらない。
欲しいものが居なくなるんだったら、欲しくない。
今まで一番好きだった家族と一緒にいるよりも、たった少しでも一緒に居ることが出来たぐーでりあんが、居なくなるのが嫌だなんてはいねる君は言えません。
我侭なんか言ったことのないはいねる君の、初めてのわがまま。
ぐーでりあんは、困った顔をして『じーん』と感動していました。
その時、執事がコンコンと扉をノックしてきました。
『ふらんつ様、お茶をお持ちしました。お客さまのお泊まりになるお部屋の準備もお隣りにしてありますので』
扉越しにそう伝えてくる執事に、はいねる君は扉を開けてお礼を言いました。
「ありがとう…でも、ぐーでりあんは…」
「あ、執事の爺さん、ありがと。よろしく頼むね」
言い難そうにはいねる君が、ぐーでりあんは帰る、と言いかけたのをぐーでりあんが遮って、執事に礼を言いました。
「どういたしまして。明日はりさ様や奥さまが一緒に外出しましょう、とお伝えするよう言付かっております。どうぞ、ごゆるりとなさって下さい」
ぐーでりあんのくだけた物言いにも顔を顰めず、執事は微笑んで主人達からの言付けを伝えます。
「OK。いきなり来てしまったのに、サンキュ」
ぴらぴらと手を振って執事が退室するのを、ぐーでりあんは見送りました。
そして、翠のおめめを見開いて驚いているはいねる君へとウィンクを寄越します。
「って事で、今夜は泊めさせて貰うから、ヨロシク」
言った途端に、はいねる君がぎゅっと抱きついてきました。
だって、ぐーでりあんが泊まると言ってくれたのですから!
はいねる君が落ちつくまで、ぐーでりあんは『あー』だの『うー』だの唸りながら、不埒なことをしでかそうとする欲望の指と理性が闘っていました。それでも、はいねる君にちょっと離れて、なんて言葉は口にしません。ぐーでりあんが抱きつく事はあっても、はいねる君が抱きつくなんて事はこれまでありませんでしたし、これからもありそうにないからしっかりと浸っていたいのです。
でも、いつまでもそうしているわけにいかず、ぐーでりあんがやっとはいねる君に呼びかけました。
「な、はいねる…泊まるから、プレゼント要らないなんて言うなよ…」
言われたとき、ぐーでりあんはズキンと心臓が痛くなったのです。
せっかく選びに選んで、迷いに迷って手にしたプレゼントを好きな人から要らないなんて言われたら、哀しかったのです。
晴れ渡っていた空の色の蒼いおめめが、少しばかり灰色がかってはいねる君を見つめます。
「あ…」
自分がひどい事を言ったと気付いたはいねる君は、慌てました。
でも、なんて言えばいいのか判らず、はいねる君は怯えたようにグーデリアンを見ます。
「貰ってくれる?」
「ありがとう…その、…要らないんじゃなくて…」
ひっしで言い募りますが、言葉になりません。
「判っている…だから、もういいよ」
それから二人は、とりとめのない話やらCFの事についてなど色々と初めてゆっくり会話しました。時々じっと見つめては、にっこり微笑むはいねる君にキスをするぐーでりあんが居ましたが、それはそれで幸せなのですからいいでしょう。
夜もふけて隣りの部屋に行くぐーでりあんを送って、はいねる君はベッドへと横になりました。
さっそく、『しゅてぃーる』にぐーでりあんが来たことを報告します。いつだって『しゅてぃーる』には全てを話しているのです。
そして、ベッドの中で微睡み始めたころ、はいねる君はある事を思い出して小さく『あ!』と声をあげました。
ぐーでりあんに準備していたクリスマス・プレゼント。
渡すことが出来ないと、哀しくて雪を眺めていた日のことをです。
幸い、明日はクリスマス・イブ。
神様のお誕生日前夜。
ぐーでりあんは、目の前に居るのです。
これは神様からの誕生日お祝なのでしょうか?
ちっとも、はいねる君が哀しむことはないのだよ。と言ってくれているようです。
『神様、しゅてぃーる。有難う…』
はいねる君にとって、とっても嬉しい誕生日となったのは言うまでもありません。
はいねる君、お誕生日おめでとう。
えんど。
さてさて…余談となりますが…翌日、ぐーでりあんはとても機嫌の麗しいハイネル家の女性陣と、こめかみに何やら血管の浮かんでいそうな父親と会いましたが…
どうやら父親に認めてもらうまで、まだまだ先が長いようでした。
女性陣に連れまわされ、結局アメリカに戻る飛行機も年明けに変更してハイネル家に強引に引き留められました。
はいねる君に敵わないのに、その母親やりさちゃんに敵うわけがありません。
何故か気に入ってくれているらしい、母親とりさちゃんが父親を放り出してぐーでりあんに構い倒すのです。
はいねる君と二人でゆっくり市内見物くらいできるかな、などと甘い考えをしていたぐーでりあんでしたが、当のはいねる君は何やらましん設計に熱中しているらしく相手もしてもらえず、ハイネル家の女性陣に今日はそこ、明日はどこ、と引っ張りまわされアメリカに戻るまではいねる君とゆっくりする事はできませんでした。
これは母親とりさちゃんの陰謀なのでしょうか?それとも…
何はともあれ、それで少しばかり拗ねてしまった父親にチクリチクリと嫌味を言われながらも夜中に、はいねる君の父親とぐーでりあんは夜中に酒を酌み交わしていましたとさ。
頑張れ、ぐーでりあん!まずは家族を味方にするのだっ!
こんどこそ、えんど。
ものすごく、ものすごくお忙しいとおこさんから、ちびねるくんのお話をもぎとってしまいました。私もうホントに、絶対年越える前にバチ当たってしまいそうです・・・。
でも!あの超キュートなちびねるくんにこうして再会できて、本当に本当にうれしいです。このはいねるくん、かわいすぎです!
ただ、あんまりにもかわいすぎて、ぐーでりあんくんも手を出しにくいですよね!(笑)果たして無垢で純粋でかわいいこのはいねるくんに、無事ぐーでりあんくんは恋愛のイロハを教えてあげることができるのでしょうか?(笑)
私、はいねるくんに全てを打ち明けてもらっている『しゅてぃーる』がちょっと憎いです!(笑)
ぐーでりあんとはいねるくんの家族のやりとりもとってもコミカルでかわいくて、読んでいると顔がニコニコしてきてしまいます。はいねるくん、大切なお誕生日を大切なぐーでりあんと過ごせてよかったね!
とおこさんはいつもとってもカッコいいグーハーを手がけられるのに、こんなにかわいいお話まで書けるなんてすごいと思います・・・。
ものすごい多忙な中、こんなにかわいらしくて幸せなお話を下さって本当に本当にありがとうございました!すみませんでした・・・。